僕は、そして僕たちはどう生きるか

著者 :
  • 理論社
4.06
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本棚登録 : 1469
レビュー : 274
  • Amazon.co.jp ・本 (275ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784652079799

感想・レビュー・書評

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  • 私にもし子供がいたら読ませたい本だなあとしみじみと思った。うすぼんやりと思っていることをかたちにするのが本当に上手な作家さんです。
    タイトルの印象とは裏腹にコペル君やノボちゃんなどのキャラクターが鮮やかだったので、牧歌的な内容なんだなと思いかけたらそんなわけはなかった(笑) タイトル通りに考えさせられる内容です。14歳のユージン、コペル、ショウコ、インジャが直面する現実が本当につらい。親だけではない素敵な大人が周囲にいることが救いかなあ。

  • この本の題名を知って、先ず思ったことは二つ。吉野源三郎の名作「君たちはどう生きるか」をちゃんとリスペクトしているか。もししていたならば、現代の課題に応えているか。

    結果は二つともマルだった。主人公はおじさんがつけたあだなの14歳のコペルくんである。それでもう一番目の答は十分。二番目については以下に述べる。

    梨木さんらしく、ガーデニングの薀蓄はたっぷり出てくるし、登場人物はちょっと14歳にしては大人びすぎているが、後半辺りからそんなことはどうでもよくなる。

    僕は軍隊でも生きていけるだろう。それは「鈍い」からでも「健康的」だからでもない。自分の意識すら誤魔化すほど、ずる賢いからだ。

    「いじめ」の問題から、「全体主義」の問題まで通じるような「問いかけ」が、このコペル君の痛切の呟きの中に含まれている。

    この小さな本の中に、性の商品化も、命の価値も、自然保護の問題も、良心的懲役拒否の問題も、言葉の両義性の問題も、ジェンダーの問題も、忍び寄る軍靴の響きの問題も、大きく小さく「問いかけ」られている。
    「……泣いたら、だめだ。考え続けられなくなるから」コペル君は決意する。

    戦時中に、徴兵拒否で洞穴に隠れて暮らしていた人がいた。その人が当時を振り返って言うのである。

    ずっと考えていた。
    「僕は、そして僕たちはどう生きるか」
    「戦時中だったからね、自分の生き方を考えるということは、戦争のことを考える、ってことと切り離せなかったんだね。でも人間って弱いものだから、集団の中にいるとつい、皆と同じ行動をとったり、同じように考えがちになる。あそこで、たった一人きりになって、初めて純粋に、僕はどう考えるのか、これからどう生きるのか、って考えられるようになった。そしたら、次ぎに、じゃあ、僕たちは、って考えられたんだ」

    平成の時代に相応しい中学生、高校生向け「問いかけ」本が生まれた。今年の四月に刊行されたばかり。これからじわりと読まれていくだろう。もちろん大人にも。

  • 梨木香歩、素晴らしいです。この現実ではまどろっこしい人間のやりとりを的確に、明晰に描き出すその力。そして考え抜かれ、選ばれただろうと思わせるテーマたち。読み進めながら、「残りのページ数でこれだけの素材が消化出来るのか!」と思いましたが、心の底から満足な読書体験でした。

  • 今読むべき本だと思う。子どもたちに薦めたい。

  • いろんなことを考えさせられる作品。


    14歳が語っているから、難しくもない。


    私は、そして私たちはどう生きるか。


    どう生きていけばいいのか。


    中学生に読んで欲しいと思った。

  • 2011年31冊目。
    275頁。

    書店で購入。






    ≪本文引用≫
    p.8
     「世界って、そもそも物に名前を付けようとしたことから始まるんじゃないか・・・・・・でもその前からも、名前なんて関係なしに世界はあったはずだよなあ」

    p.21
     「自分が本当に怖がっているものが何なのか、きちんとそれを把握する。そしたらもうその恐怖からは半分以上解放されている」

    p.32
     不思議な感じだ。自分の生まれる前にも世界はあって、それぞれ「譲れぬ一線」を抱えた人たちが皆それぞれの「前線」で闘い、その言わば「夢の跡」が、今、僕らの生きる世界なんだ。考えてみれば当たり前のことなわけだけれど。

    p.143
     人は、人を「実験」してはいけないんだ。

    p.187
     人生って、そういうことなのか。
     いくらいろいろ計画したって待ったなしなんだ。いつまでもあるもんじゃないんだ。
     僕はそんな当たり前のことが、なんかこのときものすごくリアルに感じられた。

    p.191
     「でも、それって安定した生活には結びつかないんじゃないかなあ」
     「好きなことをやってるんだから、それは覚悟の上さ。精神が安定していることの方が、いいんだ」

    p.223
     僕は軍隊でも生きていけるだろう。それは、「鈍い」からでも「健康的」だからでもない。自分の意識すら誤魔化すほど、ずる賢いからだ。

    p.226
     あのとき、僕らが「つぶした」のは、単なるニワトリ一羽だけじゃない。ユージンの「心」もいっしょに「つぶした」-これは、ショウコのお母さんが言っていた、「魂の殺人」とほとんど同じじゃないのか。

  • 梨木さんにガツンとやられました。

    読み終えるまでに少し時間がかかったのは、本を閉じて考える時間が必要だったから。
    読んでいる最中に、今までの自分の振る舞いを振り返ること、しばしばでした。
    まさにタイトル通りの問いを読者に投げかけてくる1冊です。

    14歳の少年・コぺル君。
    彼が綴った「僕の人生に重大な影響を与えたと確信している出来事」を、読者は読み進めることになります。
    分かりやすい文章だからこそ、メッセージが直に伝わってきて、頭に胸にぐわぁんと響くのです。

    一対多。個と群れ。「自分を保つ」とは?

    ヤングアダルト向けの本ですが、大人の方にも読んでもらいたい本です。
    あくせくした時代の流れの中で、立ち止まって考えてみてください。
    「僕は、そして僕たちはどう生きるか」

  • 伝えたい部分のわかりやすさは、十代の少年・少女にも十分伝わる丁寧な書き込み。自分の頭で考えて判断・選択することの意味がどれだけ重要なことかを伝えるため、小説というツールを使って教材用に書かれたよう。一方で、日常、無難・追従という枠に収まることで自己肯定しているいっぱしの大人達への警鐘でもある。

  • 今、この時期にたくさんの方に読んでいただきたいと思います。
    自分の思考をあいまいにせず。出会う出来事に対してどう対応していくか。自分がマイノリティな立場になってしまった時も、信念を持って生きていく強さを持つ事の大切さ等。登場人物のエピソードを通じて10代の頃の自分を思い出しながら読みました。西の魔女~もとても良い本ですが、もう一歩進んで世界を捉えていこうとする10代の方たちに手にとってもらえたらいいなあ。私もその頃に読んでみたかった。全員ではないだろうけど、少し大きく呼吸が出来る様になる人もいるはずです。

  • 14歳のコペル君はと友達のユージン、ユージンの親戚のショウコ、その友達のインジャ。不登校のユージンの家の庭で再会したショウコ。そして、そこに密かに住んでいたインジャ。この生きにくい現代を、確かな自分を持って生き抜く中学生たち。そして、ちょっと浮世離れしたおじさんのノボちゃん。今を生きる若い世代へのメッセージ。

     コペル君とおじさんと友人たちとくれば、当然「君たちはどう生きるか」(吉野源三郎)が下敷き。私にとって吉野さんの本は座右の書。なので、当然この本は読みます。そして、感動!!
     うれしくて、なんだか紹介文になってませんが、現代の「君たちはどう生きるか」になっていると思いました。

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著者プロフィール

梨木 香歩(なしき かほ)
1959年、鹿児島県生まれの小説家、児童文学作家、絵本作家。
『西の魔女が死んだ』で日本児童文学者協会新人賞を受賞。映画化もされたこの受賞作が最も著名な代表作となる。
ほかに新美南吉児童文学賞、小学館文学賞を、『裏庭』で児童文学ファンタジー大賞、『渡りの足跡』で読売文学賞随筆・紀行部門をそれぞれ受賞。
受賞作以外の代表作として、『家守綺譚』、『沼地のある森を抜けて』、『ぐるりのこと』などがある。

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