僕は、そして僕たちはどう生きるか

著者 :
  • 理論社
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  • Amazon.co.jp ・本 (275ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784652079799

感想・レビュー・書評

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  • 男子目線って梨木香歩にとって初めてではないだろうか。植物、動物への造詣はいつも通りだったが、なにか新鮮なものを感じた。権力とは同調圧力を巧みに使う。なにより重要なのは良心の問題とその守り方、発揮の仕方。色々な時事問題はほぼ分かる形だったが、こういう扱い方としては珍しく空振りしていなかったと思う。

  • 14歳の少年による、ある休日の記録。

    自然や植物の豊かな描写の中で、
    「僕は、僕たちはどう生きるか」について考えられている。


    梨木さんの書く少女も女性も青年もすてきですが、
    中性的で落ち着いた表現だから、少年の主人公をいつか読んでみたいとおもっていたんです・・・

    そして、自分の存在意義とか哲学的なこと考えるならやっぱり、少年でなければと、おもうし、
    理想や正しさをいやらしさなく語れるのは、少年の特権な気がする。

    そんな象徴的少年に、コペルとユージンはぴったりでした。

    たくさんの問題提起があって、
    梨木さんから『あなたはどう考えますか』と言われている気分。

    流されて、その他大勢で生きることは楽だしとても安全で、
    でもそれに甘んじていると、なにも考えなくなる。

    考えなくなることは、一番、怖い。


    わたしがいま、この作品から受け取ったメッセージは、
    「考え続けなさい」ということ。

    読む時々によって、いろんな読み方ができそう。

  • 梨木さんのエッセイを読み、彼女の思想が少しわかったところだったので、読んでいて梨木さんらしさが伝わってきた。
    子どもに対して真面目に考えられる人だな。

    「群れ」って確かにいいように働くときもあれば悪い方向へいく場合もある。
    自分が大切なものを見失わないように生きていかなければと再認識した。

    この本は中学生高校生の時に読んでいたい本。
    本当にいいたいことを伝えるためにほかの内容はすごくシンプルに書いてあったような気がする。(内容自体は重いものもあったが。)

    人間の基本的な性質みたいなものを書いてあり、時折読んでは気持ちをまっすぐに正していきたいと感じた。

  • 人間は社会性のある動物で、群れを構成して生きることを本能としている…んだけど、その群れの中で複雑なコミュニケーションを要する上に、複雑な感情を有するからややこしい。

    全体主義とは、個人主義とはどういうものか。

    登場人物たちは、自分たちや家族や知り合いの経験を通じてその部分を深く掘り下げて考えていく。その過程を読むことで俺自身もいろいろと深く考えさせられた。

    群れの中でどう生きていくべきか、群れとどういう風にかかわっていくべきか、群れの中の各個人とどう関わるべきか、群れと違う考え方をする人をどう受け止めるか、自分が群れと違う考え方になったときどう受け止めるか、群れが自分を裏切った時どう対処するか…

    考えるべきことはとても深くて多い。そんな課題を突き付けてくれる良書だと思う。

  • 作者がどうしてこの本を書こうと思ったのかが知りたくなる作品だ。
    作家によってはあとがきがあって、「なぜ、今これなのか」が分かりやすい場合もある。でも梨木さんはあとがきを書かない人だから、そこも読者の受け取り方によって違ってくるという遊びがある作家のように思う。

    タイトルの通り、「僕は、そして僕たちはどう生きるか」がテーマだ。

    人は時として、AじゃなくBが本当は正解だとしても、それを集団がAでよしとすればそれがあたかも正しいかのように主張する。
    それをBだと主張する人間ははじかれるし、おかしいと判断されてしまう。
    出る杭はうたれる。

    それを、周りに流されずに自分が感じたアンサーを答え続けられる人が先駆者になったり、一握りの特別な人になっていくんだろう。

    本にも書かれていたが、人は1人では生きていけない。
    それは正しい思う。ただ、生まれてくる時も死ぬ時も人は1人だとも思う。
    今の私にとっては、群れのなかでしか人が生きられないということは残酷な真実のように感じた。

    追記:児童文学だけど大人向けの本だと思う!

  •  14歳の少年コペルと、その友人ユージン、そしてひとつ上のショウコとその先輩のインジャ。子供たちが少し大人になるために必要だったいちにちを描いた作品。

     子供たちが、子供たちなりの考えで前に進もうとしているのがとても清々しい。

  • 答えが簡単に出ないことってたくさんある。生きるってそういうことの連続、積み重ね。だけど、答えを急かされる。「本当は違うんだけど」と思いつつ、大勢の意見に流される恐ろしさ。そのうちもともとの自分の考えが麻痺してわからなくなってしまう。
    ときに唇を噛みしめ、涙を流してごつごつぶつかりながらも一瞬一瞬を一生懸命生きようと寄り添ってくれる(応援してくれる、とは少し違うように思う)本。

  • 森のある日本家屋に中学生の男子ふたりの友情と、傷ついた女の子と勇敢な女の子との友情、庭の風景も綺麗

  • 梨木香歩は大好きな作家の一人です。
    中学生を読書対象の中心に創られた久しぶりの物語。

    今の中学生は大変なのだ。もちろん、小学生や高校生もそうだろう。
    「普通」でいなければ、学校では生きづらいのである。
    そして自分の意志とは関係なく「普通」という「群れ」からはみ出され、「個」として生きていかざるを得なくなる場合もあるのだ。

    この「群れ」と「個」の間には絆がない。また「個」として生きていくのは子どもたちにとって辛すぎ、危険も多い。

    この「群れ」と「個」とを自由に行き来できれば良いのだが、現状は、一度はみ出され「個」が「群れ」に戻るのは難しい。

    しかしそれでも、作者は、「個」であることも「群れ」であることも大切なことと考え、「群れ」から離れた「個」のために、「群れ」の中に「個」の場所を用意し、互いに行き来できるようにしようと考えている。

    「個」だけでは生きていけないのだ。「個」に寄り添い、ともに生きていく誰かが必要なのだ。大人は、その絆をつくる手助けをしなければならないと思う。

    梨木香歩の自然への傾倒は、初期の作品と変わらず、この物語のなかでも、植物や生物、自然環境について詳しい描写があり、その一つ一つに引きつけられずにはおれない。この物語を自然のなかで語ることで、厳しい現実に対峙できたのではないだろうか。

    大人にもお薦めの一冊。

  • 13.5.17 一日で読んだ。思うことが多すぎて…ここには書かずに図式化することにする。ひとついえるのは、『雪と珊瑚と』は『僕は、そして僕たちはどう生きるか』の後に書かれた作品だということ。『雪と珊瑚と』を書くことは、梨木香歩自身にとっても、梨木香歩作品を継続して読んでいる読者にとっても、食べることや生きることについて肯定的な見方が少しでもあると示すのに、必要なことだったと思う。「肯定的」とか、安易には言いたくないが…。村瀬学先生の『「食べる」思想』を思い出す /11.09.18 図書館で予約

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著者プロフィール

1959年生まれ。小説作品に『西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集』『丹生都比売 梨木香歩作品集』『裏庭』『沼地のある森を抜けて』『家守綺譚』『冬虫夏草』『ピスタチオ』『海うそ』『f植物園の巣穴』『椿宿の辺りに』など。エッセイに『春になったら莓を摘みに』『水辺にて』『エストニア紀行』『鳥と雲と薬草袋』『やがて満ちてくる光の』など。他に『岸辺のヤービ』『ヤービの深い秋』がある。

「2020年 『風と双眼鏡、膝掛け毛布』 で使われていた紹介文から引用しています。」

梨木香歩の作品

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