僕は、そして僕たちはどう生きるか

著者 :
  • 理論社
4.06
  • (187)
  • (180)
  • (98)
  • (18)
  • (8)
本棚登録 : 1470
レビュー : 274
  • Amazon.co.jp ・本 (275ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784652079799

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 梨木さんのファンタジーの凛とした強さが大好きなのだけれど。これはなんと言うのだろう…一応はフィクションの形をとっているけど。

    14歳のコペルくん、訳あって一人暮らし。叔父のノボちゃん(染色家)と材料採集のため、登校拒否中の友達 ユージンの家の庭に入らせてもらうことになり…

    草木染め、野草摘み、カニムシなど微小な生き物たちなど、梨木さんらしい要素がふんだんに盛り込まれている。
    スベリヒユのベーコン炒め、ウコギご飯、ヨモギ団子のところなんかわくわくしてしまう。

    でもこの本のテーマはもっと重たくて、集団の心理だったり、自分の意見を言えなくなる恐ろしさだったりする。
    ユージン宅の敷地内に隠れ住むインジャ、彼女にその場所を提供したショウコ。大人の巧妙な罠にかかり、追い詰められたインジャや、教師にのせられてしまう生徒の群れ、ペットとして可愛がってきたコッコちゃんを犠牲にしなければいけなかったユージン。

    面白かった、とか感動した、という感想はないのだけれど読んで良かった。
    それはおかしいと思ったとき、誰かが傷つけられそうになっているとき、私は集団心理に飲み込まれずにいられるだろうか。自分を持っていたい。

  • 学校へ行かなくなった子にはきちんと理由があって、
    でもその理由を言ったところでどうにもならないから
    「行かない」ということを続ける。
    それは一見あきらめとも見えるけれど本当は別のものもあるんじゃないかと
    思いながら読み進めた。

    それはとても繊細なことで、でもそれがわからない担任が・・・。

    言いたいけれど言えない、という状況は誰にでもある。
    言えないような状況を作ってくる人もいる。

    **
    一歩外にでれば大変なことがたくさんあって
    もし足を踏んでくる人がいれば「痛い」といえばいい。
    踏んでる方は気がついていないかもしれない。
    知ってて踏んでいてもちゃんと痛いと叫ぶ。
    それでも踏むなら怒る。
    それでも踏むならもう相手の抱えている問題で、こっちに非はない。
    **

    非はないとわかっていても、じゃあその踏まれている足はどうすればいいのだ。
    逃げたとして、逃げられたとしてもすっきりしないだろう。

    そんなことを考えた。
    とても深くて、いい一冊だった。

  • 個人的メモ。他の人に向けたレビューではない。

    そういえば、映画化された「西の魔女が死んだ」にもそういう部分はあったんだった、と読み終わって思い出した。

    最近のエッセイで、
    『ここのところ世間全般にどうもきな臭い。
    世の中が全体主義的になって、一人反対することが出来ない空気になるのは嫌だ』 というような話が何回か書かれていた。

    それを、14才の少年を主人公に、その年代に対して書いたものらしい。
    2007-2009に連載されていたもの。

    普段なら「梨木香歩の新刊!」と飛びついて、文庫も待たず単行本で買う勢いなんだけど、これはアマゾンのレビューを見て、読むかどうか迷った作品。

    でも図書館で見かけて読んで、これは買おう、と思った。
    これから、というか今、必要なことが書いてある。

    とはいえ、見た目には梨木さんのいつもの雰囲気(植物いっぱい、犬アリ、そして染色家あり)なんだけど、これがまたナイーブなテーマをナイーブな世代に向けて書く緊張から、なじみのものを沢山引き寄せて味方にして頑張った!という感じがして痛々しくも見える。

    西の魔女も同じように「群れ VS 個」というテーマが入ってたと思うけど、今回のは、作者が今の時代に「群れの暴力に個がつぶされそう」という大きな危機感を持って、今、まさに危急の時の為に書いた、というストレートさがある。

    だから登場人物たちに起こる事件が現実的で生臭くて、いつものちょっと白昼夢みたいなファンタジックな感じと全然違うなぁ…と思ったけど。
    必要に駆られて、こういうのも入れたんだなぁ、と。
    結果、いつもの梨木的世界に現実の問題ががっぷり組み込まれてて、重くて面白くて、やっぱり考えさせられた。
    こういう、何度も読み返して自分の血肉にしたい、と思う作家さんは今はこの人だけ。

    参考文献がなぁ。まぁ、なるほどなんだけども。
    「ある徴兵拒否者の歩み」
    「心のノート」を考える
    「土壌動物の世界」
    「ナチュラリスト志願」
    「ボーイスカウトが目指すもの」
    「良心的兵役拒否の潮流」

    あと、作中のポルノ被害にあった女の子と、その事件のきっかけになったと思しき本は、10代向けのシリーズ「よりみちパン!セ」
    バクシーシ山下の『ひとはみな、ハダカになる。』のよう。
    もちろん参考文献には挙がってない。

    きっと「よりみちパン!セ」だなぁ、と思ったんだけど、ほんとにそんな本があったことにびっくりした。
    しかし本当にあった本への怒りが、執筆のきっかけの一部になるなんて、
    「現代社会の問題」をダイレクトに扱う人だとは思っていなかったので、なんだか意外な気がした。

  • 僕は、そして僕たちはどう生きるか。

    私は、そして私たちはどう生きるか。読みながら何度も自分の心に問いかけた。
    今の自分はコペルのように(肝心要の自分自身が信用できない、僕にはもう自信がなかった)という状態。
    少年たちのある一日の様子を通して、なんて重大なことを伝えているのか。大勢に飲み込まれることなく、無難なほうへと流されることなく、幾度も心に問いかけながら、それでも群れとともに自分の道を歩いていきたい。
    強くなりたい。

    ※参考「君たちはどう生きるか」吉野源三郎 岩波書店

    そして作中インジャがインジャになった原因AV監督の書いた本のモデルと思われるのが、同じ理論社から2007年に出版されています。

    • kuroayameさん
      凄く気になり、読んでみたい本に登録していたので、レビューを拝見させていただき、とても嬉しかったです♪。
      ありがとうございました★。
      凄く気になり、読んでみたい本に登録していたので、レビューを拝見させていただき、とても嬉しかったです♪。
      ありがとうございました★。
      2012/11/26
  • 2015.5/7 梨木さんのエッセイを何冊か読んでいると、私たちを取り巻く世界や日本の政治、経済、環境などあらゆる現状にゆっくり咀嚼した言葉で警鐘を鳴らしている。本作品はその物語版か。エッセイだと直接的になり拒絶する人もいるかもしれないので、物語になり少年の思いや語りでより多くの人の胸に沁みてくれたらと願う。なにしろ先日のわが市議会議員選挙の20代の投票率が20%、全体でも40%ちょっとなんていう危機的状況ですから...

  • 植物と、それを食べることへの視線が真摯で優しい作品が多いけれど、今回もそれが遺憾なく発揮された作品。山菜が美味しそう。
    大勢に流されることの安易さと残酷さ、その中で自分の意志を貫くことの難しさと尊さを描いていて、身につまされる部分が大きい。
    ただ、これからのことを考える作品だから仕方ないのだろうけど、なんとなく尻切れとんぼ感があるのが残念。

  • 梨木香歩さんは西の魔女が死んだが1番有名なのかな。

    この作品は14歳の少年が主人公なのですが、こんな中学生いたらやだ!!

    と思うほど博識で、その友人も博識。言葉も大人。

    自然豊かな、森林の中の湿度のある朝靄の中を散歩している様な気持ちになった。

    私が育った所も目の前が山だったので、その山を歩きまわった夏を思い返した。

    家庭環境や不登校、開発への抗い等テーマも勿論重たくはあるのだけれど

    それが14歳のこの子達にとってどれ位精神を大人にせざるを得なかったのかな?

    と思ってスーッと100ページ位読んでいると、話が違う坂を転がりだす。

    14歳の転機、17歳の転機と良く言われ題材にされる事も多いけれど

    思春期のヒリヒリした感じでは無くて、丁寧に丁寧に描かれている。

    14歳の夏の1日で、色んな悩みを持ち、また言葉に出来なかった言葉を見つけ、

    少し大人になる。

    優しさを知り、自分の欠落した穴を知り、それを処理出来るほど大人ではない

    彼らが涙を流す。

    物語の中でずーと優しい温もりを感じるのは自分が大人になったからなのかな?

    ここが君の席だよ。そして1つの椅子。こんな仕掛けがあるのが本ですね。

  • 色々考えさせられた。
    自分は漠然と「善人」の側の人間だと思っていたけれど、本当はそうではないのかもしれない。主人公はそれを十四歳で気づいたけれど、私は最近まで疑いもしなかった。
    コッコちゃんの話は痛すぎて、ユージンの気持ちを想像するとつらかった。
    「いのちの授業」について私がもやもやと思っていたことをお母さんがきっぱりと言葉にしてくれていてすっきりした。

  • 始めは、とらえどころがないというか、ちょっと不思議な感じだった。しかし、中盤からグイグイ引き込まれた。今の自分、日本、生き方…。色々な事が頭をよぎり、深く考えさせられた。

  • 十四歳のコペルは叔父のノボちゃんとよヨモギ探すために学校に来なくなった友人の古い屋敷をたずねる、そこで起こった一日の出来事の物語。
    ユージンの家の屋根裏で古い本をいっぱい読んだこと、ユージンのいとこのショウコとヨモギ団子を作ったこと、インジャの身の上に起こったこと、兵役を拒否して洞穴に隠れてた男のこと。そして友達だったユージンが学校にこなくなった本当の理由とは?
    人は群れから離れて生きていけるのか?コペルはいろんなことを考える。
    ゆるやかな群れの必要性を感じながら考え続けて生きていく。
    「やあ。よかったら、ここにおいでよ」
    青少年向きと言ってもいいような内容ながらすごく哲学的でいろんな問題を提起させていく。まったく関連性はないんだけど川上美映子さんの「ヘヴン」を読んだときのような衝撃感があった。
    読み終わったあと、いろんなことを考えさせられ深いものが心の奥にずっしりと残る、そんな作品でした。

著者プロフィール

梨木 香歩(なしき かほ)
1959年、鹿児島県生まれの小説家、児童文学作家、絵本作家。
『西の魔女が死んだ』で日本児童文学者協会新人賞を受賞。映画化もされたこの受賞作が最も著名な代表作となる。
ほかに新美南吉児童文学賞、小学館文学賞を、『裏庭』で児童文学ファンタジー大賞、『渡りの足跡』で読売文学賞随筆・紀行部門をそれぞれ受賞。
受賞作以外の代表作として、『家守綺譚』、『沼地のある森を抜けて』、『ぐるりのこと』などがある。

僕は、そして僕たちはどう生きるかのその他の作品

梨木香歩の作品

ツイートする