プラテーロとわたし

  • 理論社
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  • Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784652079812

感想・レビュー・書評

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  • 「プラテーロ」はロバ、ふんわりとした綿毛のロバ。
    瞳は漆黒。オレンジやブドウ、イチジクが大好き。
    スペイン語で銀はプラータという。
    プラテーロはお月さまの銀の色をしたロバなのだ。

    「わたし」は詩人。
    小さくてふわふわした綿毛のプラテーロを愛している。
    プラテーロとはいつも一緒。
    詩人は都会で心を病み、故郷の小さな町、モゲールに帰ってきた。
    プラテーロとの暮らしは病んだ心を徐々に癒してくれた。

    小さな灰色のロバに乗って山野を行く詩人を、町の子供たちは「きちがい」と呼んだという。

    詩人の目は、優しく穏やかに、そして哀しく、故郷の街に注がれる。
    数ページの短い断章、百数十篇に、故郷の風景が綴られる。
    病んだ心にはとりわけ深く響いたのだろうか、見つめられる先にいるのは、弱いもの、虐げられたもの、悲しいものが多い。
    ダニに取り憑かれた哀れな犬。
    熱っぽく、病み衰えた肺病やみの娘。
    プラテーロとよく遊んでくれたのに死んでしまった女の子。
    子供たちにかわいがられていたカナリヤ。
    はかなく寄る辺ないものたち。

    とはいえ、アンダルシアの美しい暮らしも印象的である。
    キリスト聖体の祝日の祭。
    晴れやかなブドウのとり入れ風景。
    美しくみずみずしいザクロの実。
    女の子たちとの競争に勝って、パセリの冠をもらったプラテーロ。
    美しい、夢のような日々だ。

    詩人はロバに語り掛け、ロバはじっとそれを聞いている。
    忠実な、無垢なる瞳。
    これ以上の聞き手があろうか。
    年老いて、命尽きるまで、ロバは詩人のよき友だったのだろう。

    後年、詩人はスペイン内乱のため、長く、故国を離れざるを得なくなる。
    しかしおそらく、心はロバの眠る故郷を離れることはなかっただろう。
    プエルトリコで他界した詩人は、故郷モゲールの墓地に運ばれ、その地で眠っているという。
    天国のヒメネスとプラテーロは、暖かい日差しの中で、一緒に穏やかにお散歩しているだろうか。
    そうであるとといい。

  • プラテーロというのはロバの名前。
    1956年にノーベル文学賞を受賞したスペインの詩人、ヒメネスの若き日の作品であり、代表作です。
    いくつかの出版社から邦訳が出ていますが、この本は理論社版の復刊本。
    生まれ故郷モゲールの町を、黒い服を着てロバにまたがりさまよう若き詩人を、故郷の人々は好奇の目で見ていたことでしょう。作者を子供たちは「きちがい」とあざけります。
    自分のロバに優しく語りかけ、その愛情に満ちた視線で世界を見つめるヒメネスの文章は、そのリズムといい言い回しといい、何でもない日常の中にある大切な「何か」を読んでいる者の心に呼び覚まします。
    ドラマらしいドラマのない散文が続くので、最初は退屈に思うかも知れませんが、何ともいえない感情を刺激する、心の奥底に響く文章です。
    長新太さんの挿絵もイイ!
    読書の秋、夜中にひっそりと読むのにピッタリの本です。

  • おそらくは初版を中学の図書室で見つけて以来、愛読しています。存在そのものがいとおしい大好きな本。

  • ”私”が療養のため生まれ故郷のモゲール村で過ごす日々。ロバのプラテーロがいつも一緒。

    まるで、読んでいる自分も一緒にモゲール村を歩きまわり、空を見上げ、水を飲み、悪童に嘲笑をあび、幼子の墓を眺め、花の香りをかいでいる気分に。

    あんまり長い間一緒にいたので、最後から3つ目、プラテーロが死ぬ詩では涙が流れました。

  • 月のような銀色の綿毛と黒い瞳を持つロバ、プラテーロと著者との日常を愛情深い言葉でつづった散文詩。スペインの詩人でノーベル文学賞受賞の著者がおりなす、自然描写の独特な美しさや愛情の細やかさが感動的。本書は2冊出版されているが、訳者が違っている。訳者の違いによる楽しみ方もあり、原文の幅の豊かさも凄いと感じる。

  • プラテーロ!プラテーロ!プラテーロ!

  • 高校時代詩にはまっていたころの懐かしい思い出の本。新装版を書店で発見し、即買い。どのページを開いても、色彩の描写の鮮やかさ(とちょっと毒々しさ)に心を奪われる。一度アンダルシアに聖地巡礼したい

  • 良質な詩作だが,病的なものも感じる~わたしは生まれ故郷のモゲールにいて毎日半分灰色で半分白いロバのプラテーロと過ごしている。ある子ども達はわたしをバカにし,ある子ども達はプラテーロと遊びたがる。祭に出掛けたり,留守番をしたり,山で本を読むわたしの側で花を食べたり,ぶどうの絞り汁を運ぶロバを見たり,犬が撃ち殺されるのを見たり,花火に怯えたり,墓に詣でたり,捨てられたロバに石を投げるこどもの様子も見た~1881年スペインのアンダルシア地方に生まれた作者が17歳で詩作の才能を認められたものの,精神を病み,故郷で静養していた20台の前半に書いた詩の数々。常にロバのプラテーロに語りかける。静かにゆっくり味わって読む人に詩は向いているのだろう・・・という訳で今の私には向いていない

  • まず表紙が長新太さんだったことで心をつかまれ、
    ”ロバのプラテーロ”、という響きにやられ
    思わず手に取ってしまいました。

    ちょうど我が家で飼っていたハムスターが亡くなり
    心が弱っていたせいもあったかもしれません。

    とにかくおだやかな、やさしい空気感が漂っていて
    読んでいて癒されました。
    日記、というか、エッセイというか、
    短い文章の中にぐっとくる言葉がつまっていて、
    とてもよかったです。
    眠りに就く前に少しずつ読みました。

  • ずっと持っていたい本。一生忘れたくない、美しい物語。様々な人や動物や生物が、それぞれの命を生きている。悲しくて尊い生命を見守る詩人の優しさ。そして、切なさ。

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