ワンス・アホな・タイム

著者 :
  • 理論社
3.42
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本棚登録 : 272
感想 : 61
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  • Amazon.co.jp ・本 (171ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784652079836

作品紹介・あらすじ

むかしむかし…賢くて愚かな王子や姫たちがいましたとさ。口当たりが良いけど、後から苦味がズシンと効いてくる7つのお伽話集。

感想・レビュー・書評

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  • 安東みきえさんは、教科書のみに書かれている短篇が二作あるそうなのだが(「そこまでとべたら」と「星の花が降るころに」)、私の学生時代より、遥かに新しい年代だったので、知らなくて当然といえば当然。

    しかし、本書を読んだ後になると、それが読みたくてたまらなくなり・・要するに、こんなタイトルでも(失礼)、気軽に楽しめる事に加えて(ごく自然にクスッと笑える感じ)、何かを学び得られるような感覚と、心がぽっと温かくなる空気感もあって、そこに私は妙な新鮮味を感じられました。

    とは書きつつも、ざっくりした表現になると、物語の内容の殆どが、外国のおとぎ話のパロディを盛り込みながらも、オリジナリティはちゃんとあるが、タイトル通りの、「アホな昔話」ということになってしまうのだが(笑)、さっそく各話を紹介していきましょう。


    「おめざめですか、お姫さま」
    城の中の窮屈な暮らしにうんざりした、お姫さまが他の暮らしに憧れる、『隣の芝生は青い』を、具現化したようなおとぎ話だが、そう思っていたのは、自分だけではなかったことを、皮肉な形で思い知ることになる。

    「バカなんだか利口なんだか」
    ロバを亡くして悲しみにくれる若者の、ピュア過ぎる天然の行動が、結果良い方向に導かれていったという、生きたいように生きていればなんとかなると、言われているような気もするが、割とデンジャラスな目にも遭っており、笑った顔のまま沈んでいった、水の精の台詞、「きこりはもっと上手によけたわよ」の真の意味が怖過ぎる。

    「きみの助言」
    ベタな駄洒落も決して不愉快ではなく、寧ろ、微笑ましい展開になるのが素晴らしく、本来、怖いはずの亡霊の姿が想像してみると、思わず可愛すぎて、逆に笑える中、これまた、ピュアで素敵な双子の妹姫の、アドバイスを素直に受けた上での、姉姫へのぶっちゃけ発言には、とても痛快で、すっきりさせられるものがあった。

    「魔法のパンの実」
    言いたい事を隠しておくのが、如何に難しく辛いことを痛感させられる話で、それに対して、『水清ければ魚棲まず』を引用しているのも頷ける、教訓もの。皆さんも溜め込みすぎるのは、身体にも心にも毒ですよ。気をつけましょう。

    「ウミガメの平和」
    几帳面すぎる王子もアホだが、その両親はそれ以上にアホで、ある意味、彼らの中でのみ描かれている平和な世界が、却ってやるせなく感じられるが、まあ別にいいかと思えて(笑)、寧ろ、ドライな対応で我が道を進む、家来の将来を応援したい気持ちにさせられた。

    「呪われた王子たち」
    ナルシスト過ぎる兄王子と、自信のなさ過ぎる弟王子の、双子の将来を嘆く余り、昔、双子は魔女に呪いをかけられたことにして(自らの子育ての問題はおいといて)、妄想の世界で楽しむ王と王妃のアホっぷりも面白いが、物語はとても凝った構成で、謎解きも楽しみながら、『人目をひどく気にするのは、人の中に自分の姿を見ようとしている』といった、劣等感についても考えさせてくれた。

    「木霊の住む谷」
    実は、これだけ異色の内容で・・アホと書いといて、こういう展開はずるいと思ってしまうが、物語は素晴らしく、『木霊がわかってくれるんだ。気持ちをいっしょになって言ってくれるから』の言葉は思っていた以上に、とても深いものを感じさせられたが、その一方で、『虐げられてきたものは虐げる者を見つける』といった言葉はやるせない。
    しかし、それを慰めてくれるかのような、木霊たちの美しく温かい描写には、確かな未来への希望を感じさせられるとともに、本当のアホというのは、思い込みに縛られて、見えないものを見ようともしない輩の事を言うのだろうなとも、実感させられた。

  • 「昔々あるところに・・・」から始まるタイトル通り「ワンスアホな・タイム」な短編集。
    ちょっとシュールな童話で、でも「人間こんなことをしたら、こうなってしまう」とか、ちゃんと壷は押さえていて、大人も子供も楽しめる作品でした。

    私が特に好きなお話は、一番最後の木霊が住む谷が短編なのにとても深いお話で、心にじーんとしちゃいました。
    このお話だけはタイトルとは違う内容でしたのでちょっと驚きました。

    • sorairokujiraさん
      この本も、面白そうですね~。
      題名からして、うう、そう来るか・・・みたいな期待感も大きいです。
      追いかけて読んでみますね。
      この本も、面白そうですね~。
      題名からして、うう、そう来るか・・・みたいな期待感も大きいです。
      追いかけて読んでみますね。
      2012/11/24
  • 「ウミガメの平和」
    王と妃のあまりにアホな会話が笑えた。

    6編脱力な話が並んで、最後の「木霊の住む谷」はズルい。

  • 子どもに読んでもらいたい。
    全く難しい知識もいらない面白い本。
    ゲラゲラ笑うってよりは、優しさある内容。
    よかった。

  • ひさびさに、いまいちの本にあたった

  • 題名に期待しすぎました!
    だから、超辛口ですが・・・
    題名の秀逸さを考えると、内容がちょっと物足りない・・・

    昔話をパロディ化していて、面白いのです。
    面白いんですが、題名の印象が強すぎて・・・

    • kuroayameさん
      レビューを拝見させていただき、「そうそう、私もタイトルが気になって手にした1人です」とうなずいてしまいました(^-^)。
      レビューを拝見させていただき、「そうそう、私もタイトルが気になって手にした1人です」とうなずいてしまいました(^-^)。
      2012/12/05
  • いろんな国のお姫様や王子様やその他もろもろがつまったおとぎ話の短編集。

    客観的な口調で淡々とおもしろおかしく語られる。
    ちょいちょい本物(?)のおとぎ話が挟まれるため、その出所を考えるのも楽しい。

    でてくる登場人物がどこかネジが足りなかったり。
    言い回しの巧妙さや言葉遊びが随所にみられる。

    最後の話だけはちょっといいお話。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「ワンス・アホな・タイム」
      笑っちゃうタイトルですねぇ~
      安東みきえは、文庫になった「頭のうちどころが悪かった熊の話」を読んで、ブラックな感...
      「ワンス・アホな・タイム」
      笑っちゃうタイトルですねぇ~
      安東みきえは、文庫になった「頭のうちどころが悪かった熊の話」を読んで、ブラックな感じが結構面白かったです。
      2012/11/07
  • 昔話・おとぎ話風味のショートショート。

    皮肉っぽいんだけど、どこかあたたかさがあって小気味よい。

  • 絵本にありそうなエピソードで優しかった

  • ヨーロッパの昔話風の物語だけど、特定の物語のパロディというわけではない。ストーリーはオリジナル。
    どれもそこそこ面白いし、ちょっとブラックな味わいもあるのだが、飛び抜けてすばらしいという作品もないような。
    読みやすけど味わい深いから、普通の物語に飽きた本好きの子どもにはいいと思う。
    ブラックはあくまでちょっとで、倉橋由美子みたいに凄くブラックというわけではないから安心して子どもに渡せる。

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著者プロフィール

山梨県甲府市生まれ。1994年に「ふゆのひだまり」で小さな童話大賞大賞、「いただきます」で同選者賞今江祥智賞、2001年に『天のシーソー』で椋鳩十児童文学賞、2018年に『満月の娘たち』で第56回野間児童文芸賞を受賞。主な作品に『頭のうちどころが悪かった熊の話』(新潮文庫)、『星につたえて』『ふゆのはなさいた』(アリス館)、『夜叉神川』(講談社)などがある。

「2021年 『メンドリと赤いてぶくろ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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