倒立する塔の殺人 (ミステリーYA!)

著者 :
  • 理論社
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感想 : 136
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  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784652086155

感想・レビュー・書評

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  • ラノベ感覚で読みはじめたら、なんか全然違って読みにくくて戸惑ってしまった。
    耽美で古典的な文調と、戦中のモンペ姿で軍需工場に駆り出され空襲で家族を失う彼女たちの現実が相まって、なんともいえない雰囲気でした。

    「倒立する塔の殺人」という回し書きの小説とそれに付随する手記で語られている部分と、日常を描いているところとだんだん混ざってきてすごい独特な空気感になってます。
    女子高っていう閉塞的な乙女空間は、いつの時代も美しくも残酷で、刹那的で強かだなぁ。

  • 正確に書くと星3.7。
    怖いわ!というのが読み終わって1番大きな感想だった。
    theミステリーという感じで、戦時中の少女たちがある小説を書いていくのと同時に、現実でも事件が……。構成はあまりない感じで面白かった。
    これはかなりの人が犯人を当てられないと思う。
    YAなのであんまり怖くないかと思って寝る前に読んだのは失敗だった。
    絶対YAじゃなくて普通の文芸にするべきだと思う。
    内容でも結構怖いが、とどめに最後の絵画。
    夜だったから余計に不気味だった。

  • 女子学院で起こるミステリーと人間模様の移り変わりが美しい。
    女子校特有の雰囲気、憧れとドロドロな感情が不快になることなく描写されていて気持ちいいです。
    ミステリーとしても秀逸。
    過去と現在を行き来しながら真実に近づいていく過程もドキドキしながら読めました!

  • 戦時中のミッションスクール。図書館の本の中にまぎれて、ひっそり置かれた美しいノート。蔓薔薇模様の囲みの中には、タイトルだけが記されている。『倒立する塔の殺人』。少女たちの間では、小説の回し書きが流行していた。ノートに出会った者は続きを書き継ぐ。手から手へと、物語はめぐり、想いもめぐる。やがてひとりの少女の不思議な死をきっかけに、物語は驚くべき結末を迎える…。物語が物語を生み、秘められた思惑が絡み合う。万華鏡のように美しい幻想的な物語。

  • 戦時下の女学校を舞台にした幻想ミステリー。女学生が回し書きした小説「倒立する塔の殺人」。劇中劇の体裁をとっており、現実と虚構が交錯する。百合要素も多分にあり。作者紹介にあるとおり、甘美な毒を含む幻想的な物語世界を紡ぎだしている。

  • 戦中から終戦後へかけての女学校を舞台としたミステリ。
    空襲で家族を失った女学校の生徒・阿部欣子は、級友の三輪小枝からあるノートを渡される。
    そのノートは表紙に「倒立する塔の殺人」と書かれ、数人の女学生の間で書き継がれた物語だった。
    小枝にノートを託した先輩・上月葎子が空爆によって死んでしまい、未完となった物語を欣子の視点から解読して欲しい、と小枝は言う。
    「倒立」とはいったい何なのか、上月葎子はなぜ死んだのか・・・。

    作中小説と現実とが絶妙に絡み合う入れ子構造のミステリ。

    入れ子構造というだけでも複雑なつくりになっているのに、語り手の欣子は手記を順番通りに読まないので、読者は頭がこんがらがってきます。
    ノートに書かれた作中小説の「倒立する塔の殺人」があり、その小説を書いた少女たちの手記があり、さらにその外側にノートを読む欣子がいて…という入れ子の入れ子となっており、しかもそれぞれ謎が散りばめられています。
    事実と虚構が絶妙に同居してて面白いのですが、情報を整理しキーとなる伏線を拾っていくだけで精一杯でした。

    また、著者が実際に経験したのであろう戦禍の描写が生々しく、リアルでした。
    空襲で家族や友人を次々と失い、死が日常となったことに麻痺してしまう少女たちが虚無感をつのらせていくさまは胸にこたえました。
    閉塞的な状況の中、彼女たちは絵画や文学に耽溺したり、ワルツを踊ったり歌ったりといった密やかな楽しみを共有します。
    制限されているからこそ、美に触れることで現実からの逃避をはかったり精神の均衡を保っているのかもしれない。
    そんな彼女たちが哀れでしたが、人間の渇望に力を与える芸術の大きな力も感じました。
    友人の死という物語を必死に紐解こうとする彼女たちには未来への希望も感じることができます。

    ミステリの謎解きはよくわからなかったのですが、それだけに終わらない大きな物語世界を堪能できました。

  • じだらっくちょっと気の毒

  • 前から気になっていた皆川博子さん。
    初めてなので読みやすそうなYA向けレーベルのものを選んでみました。

    書かれていることはとても現実的なのに、どこか幻想的に感じるのは、作中作の舞台がミッションスクールだからか。作中に出てくる人物と作中作に出てくる人物が同一人物で、境界が曖昧だからかもしれない。
    “倒立”のトリックはよくわからなかった…。出来たら図が欲しかったなぁ。
    もし、初めからノートが杏子に渡っていたらどうなっていたんだろう?

  • この作家さんの作品は初めて。
    戦時中のミッションスクール。
    仲良しグループで回しながら小説を書く。
    少女たちのミステリー。

  • 戦争末期、勤労動員で工場で働く女子高生たち。私立のミッションスクールに校舎が焼けてしまった都立の女学校が同居する。
    ミッションスクールの図書館にあった書かれていない本。続きを書いてもらいたい?
    ミッションスクールで過去にあったらしい殺人、真相は?
    面白い発想、楽しく(?)読めます。

著者プロフィール

皆川博子(みながわ・ひろこ)
1930年旧朝鮮京城市生まれ。東京女子大学英文科中退。73年に「アルカディアの夏」で小説現代新人賞を受賞し、その後は、ミステリ、幻想小説、歴史小説、時代小説を主に創作を続ける。『壁 旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞を、『恋紅』で第95回直木賞を、『薔薇忌』で第3回柴田錬三郎賞を、『死の泉』で第32回吉川英治文学賞を、『開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―』で第12回本格ミステリ大賞を受賞。2013年にはその功績を認められ、第16回日本ミステリー文学大賞に輝き、2015年には文化功労者に選出されるなど、第一線で活躍し続けている。

「2023年 『天涯図書館』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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