二番がいちばん: ロレンス ショ-トセレクション (世界ショートセレクション 2)

  • 理論社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784652201756

感想・レビュー・書評

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  •  イギリスの田舎の自然描写が美しい。生き物の生々しさ、荒々しさ、土の匂い、泥の匂い、血の匂い、その他色々危ない匂いとか、引っくるめた、猛々しく、柔らかい自然の中に威勢よく、繊細に、弱々しく、残酷に生きる普通の登場人物の等身大の姿が心地良い。
     モグラを簡単に殺してしまう農家の娘、池に入水自殺を図っていた所を助けてくれた医者のことを勘違いして愛が芽生えてしまった娘、プレイボーイの男に遊ばれた電車の車掌(女の子ばかり)たちがその男を袋叩きにするという残酷だか小気味良いシーン、ドSの姑に嫌味を言われ続ける労働者、彼にそっとお茶を出す嫁、母親の反対を押し切って飼った野生のウサギが暴れまくり、最後は母親とウサギがお互いに“許さない”と言う目つきでにらみ合うシーン。
     どれも、普段頭をかすめては無視する妄想とか、心の襞に見え隠れする残虐さとか、生命の生々しさとか…ああ、それを書いちゃうんだと思うようなことばかり。読んでいて少し気持ち悪いが気持ちいい。
     ヨシタケシンスケさんの絵が描いてあるから、小学生の娘が読みたがったけど、一応「チャタレイ夫人の恋人」の人だから、カバーかけて読んだよ。
     

  • 〇愛がテーマ。色っぽいシーンやギャー!モグラちゃん!というシーンがあり、テーマが難しいので、高校生くらいからかな。
    愛だな。

    「二番がいちばん」
    都会で恋に破れた娘が田舎に帰ってくる。トムは1人の女性と付き合っていきたきなあと思ってた
    ←…モグラちゃん!!や、時代とか場所柄が違うから。

    「馬商の娘」
    破産で一家がバラバラになる。兄弟たちは旅立つが娘は母の思い出に殉じようと考えた。
    ←戸惑いが愛に変わる

    「乗車券を拝見します」
    テッドはプレイボーイ。職場の女の子に片っ端から声をかけていた。アニーは距離をとっていたが…。
    ←ざまあのようで、ざまあじゃない。恋心のコントロールって出来ないのね。

    「ほほ笑み」
    妻を見送る
    ←3回読み直したけど、わからなかった…;

    「木馬のお告げ」
    運が無い(金銭的に)と何もかも諦めている母親の息子。自分は運がいいはず!と“木馬”に運の在処を尋ねる。
    ←母の運の無さに巻き込まれてしまった。母が息子の愛に気付いていたらなあ。。

    「ストライキ手当て」
    貧しい男が受け取ったストライキ手当てを無くして妻と義母の待つ家に帰る。
    ←母VS 娘。静かな反抗。

    「ウサギのアドルフ」
    父さんが持ち帰ったノウサギはボクたちのペットに!そして母さんの平和な日常は消え去る。
    ←ウサギの誇り。

  • 理性と狂気の狭間をどう描くか?・・・・

    初めの「二番がいちばん」というこの本の題名にもなっている割に、余りピンと、来ない作品に感じた。

    私が、その時の時代背景や社会の流れを理解出来てないからかもしれないのだが・・・

    一番面白かったのは、「木馬のお告げ」である。
    さてさて、子供が、競馬の予想を当てて、母親の口癖になっている「お金が足りない・・」という言葉を無くすために、全身全霊で、予想をする男の子に、最後はどうなるの?と、読んでしまった。

    子どもへの短編集本であるのだが、大人さえ理解出来ない内容のものが多かったように思われる。

  • 出てくる女がもれなく怖い

  • 訳者あとがき曰く、「何かのきっかけで一線を越えてしまった人間の、理性と狂気のすれすれのようなものが見えてきます。」
    中年のおじさんなので恋だ愛だいう話はまったくピンとくるものがなく、最初の方の作品はどうも「見えて」こなかった。
    とは言え、「馬商の娘」は、よく分からなかったにも関わらず、なんとも言えない不気味さのせいで、とても印象に残っている。
    もう読むのをやめようと思ったが、「木馬のお告げ」は先の展開が気になりお話として面白く読めた。

  • タイトルが気になって手に取る。
    ロレンスは名前しか知らなかった。
    表題作はまあまあだったけど、リアルな近代の人間を書くのがうまいとわかる。
    よくある環境、不思議な現象、シュールな終わり。
    ❮じわじわくる❯作家だ。

    印象に残ったのは
    馬商の娘
    乗車券を拝見します(集団ヒステリーこわい)
    木馬のお告げ(すごい話だ。私もアーサー王好きとして、馬にランスロットと名付けたい人生だった)

    短編だから楽しめた。

  • 微妙すぎる人間の心のひだをとても淡々とシニカルに冷徹にみつめるロレンスの眼。
    どれも怖いけど「乗車券を拝見します」の女ったらしの男をとっちめようとして自分の中の女に負けてしまう女子たちとか、「木馬のお告げ」の親のために必死に木馬を駆り立てて狂気におちていく少年とか、震える。

  • 恥ずかしながらロレンスを読んだことがなく、とりあえず子ども向けに訳された短編を読んでみた。
    あまりに素晴らしくすごい作品ばかりなので、驚いた。
    行動と言葉で、言葉を弄さずに登場人物の狂おしい心情を描き、独特の苦みのある余韻を残す。
    いやー、これは大人向けに訳された、もっとたくさん入った短編集をすぐさま買わなきゃ!と思ったが、今岩波のも新潮のも新刊書店では売っていないのね。がっかり。
    こういう子供向けの訳でもロレンスのすごさは伝わるが、子どもには、表題作や「馬商の娘」「乗車券を拝見します」など、わかるまい。わかっても困る。それくらい人間の深層心理(特に「恋愛」という罠にかかる人間の心理)を巧みに描いている。「木馬のお告げ」は子どもでも面白く感じるかもしれない。でも、やっぱり本当のところは読み取れないだろう。
    訳文はとにかくひらがなが多く、ただ「読む」だけなら小学校中学年でも大丈夫だろうと思う。しかし、感動できるのはかなりませた(知的に成熟した)中学生以上、読み取りができるのはやっぱり大人だと思う。
     ヨシタケシンスケの絵は全く合わない。本の内容に合わせてイラストレーターを選んでほしい。このシリーズはジャック・ロンドンやチェーホフなどもでているが、ヨシタケシンスケの絵が許せるのはトウェインくらいだと思う。ジャック・ロンドンのハードボイルドな世界がヨシタケシンスケって、許せない。
    ヨシタケシンスケを貶めて言っているのではない、合わないのだ。もう少し軽く、ユーモアとウィットのあるような作家だったら彼の絵でも良かったんだけど。
    この絵に惹かれて読んだら、イメージと全然違うので、小中学生はがっかりすると思う。著作権が切れた名作を訳と装丁を子供向けにして売ろうという出版社の魂胆が丸見え。
    ロレンスの作品自体は文句なく★5つ。本の作り手の姿勢がマイナス一つ。

  • デーヴィッド・ハーバート・リチャーズ・ローレンス
    1885年生
    イギリス、ノッティンガムシャー出身の小説家・詩人。

    一作目を読んで、庭の野草の細やかな描写や娘たちの描写が女性的に思え作者のことを検索したら、男性だったので驚いた
    一作目、二作目は、恋のかけひきや恋に落ちる瞬間、不安などの気持ちが細かく描かれていて、
    代表作『チャタレイ夫人の恋人』を読みたくなった。
    三作目は、浮気男をやっつける、背景がダーク色を感じる作品
    四作目は、よくわからなかった…
    五作目は、お金に囚われた両親を持つ子どもの気が狂ってしまう、悲しいお話し…


    二番がいちばん
    馬商の娘
    乗車券を拝見します
    ほほ笑み
    木馬のお告げ
    ストライキ手当て
    ウサギのアドルフ


    世界ショートコレクション
    ボチボチ読んで、世界のいろんな作家に触れてみようと思う

  • 第一巻が怪盗ルパンのルブランで、二巻目がD.H.ロレンス~「二番がいちばん」失恋して実家に帰ってきた姉は幼馴染みに惹かれていく。「馬商の娘」父が遺した馬商も倒産が決まり、兄弟は身の振り方を考えるが、27歳のメイベルは池に身を沈めようとして、地域医療に献身している医師のジャックに救われ、着衣を脱がされたと知って愛を迫る。「乗車券を拝見します」世界一危険な路面列車の車掌のアニー・ストーンは検査係主任のジョン・トマス・レイナーに捨てられ、捨てられた車掌仲間を誘ってとっちめるが。「ほほえみ」……。「木馬のお告げ」ポールは家中から金が足りないという声が聞こえてきて、母親に聞くが、父親に運がないからダメだという。競馬好きの庭師と協力して競馬で儲けているが、それは子どもが乗る木馬のお告げだった。母親のためにダービーで儲けようとして、名前が告げられるが、数万ポンドを稼いでポールは息を引き取る。「ストライキ手当て」炭鉱夫のイフレム・ウォーンビーはストライキ手当てを組合から貰ったが、9マイル歩いてサッカーの試合を観に出掛け、夜の7時に帰宅して嫌みを垂れる義母を追い出した。「ウサギのアドルフ」父が仕事明けの朝に拾ってきた茶色の仔ウサギはアドルフと名付けられ、家に住み着いたが、レースのカーテンを引き裂いて野に戻される~「ほほえみ」が意味不明・まったく解らないが、読み返す気にもならない

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著者プロフィール

D.H.Lawrence.
1885 ~ 1930 年。イギリス出身の作家。
大胆な性表現や文明社会と未開社会の葛藤などを主なテーマに据えた。
イギリスからイタリア、オーストラリア、ニューメキシコ、メキシコと遍歴。
この間に、『アーロンの杖』『カンガルー』『翼ある蛇』などの問題作を
次々と執筆。ローロッパへ戻ってものした『チャタレイ夫人の恋人』が
発禁処分となるなど、文壇の無理解もあり長編の筆を折る。
その他の代表作に『息子と恋人』『虹』『アメリカ古典文学研究』
『アポカリプス論』など多数。

「2015年 『ユーカリ林の少年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

D.H.ロレンスの作品

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