差別と向き合うマンガたち (ビジュアル文化シリーズ)

著者 :
  • 臨川書店
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784653040132

感想・レビュー・書評

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  • こうの史代「古い女」て「わしズム」に掲載されたものだったのか。すごい。

    内容は、「もっと考えたいあなたのために」コラムが付いている。啓蒙系。

    手塚初期作品に登場する「豚藻負児」「敷島健一」という名前の考察については、もう少し考えたい。

    ・「ビジュアルメディアの発達はむしろ出来事を外化し、体験するのでなく眺めるもことして人びとのもとに届けているだけなのではないかとソンタグは指摘する」
    ※ソンタグ→スーザン・ソンタグ(「他者の苦痛へのまなざし」著者)

  • 表紙からして取っ掛かりはいい。思わず読んでみたくなる。漫画の中の差別表現について考察した珍しい本。冒頭では銀河鉄道999の聡明な美女メーテルと冴えない哲郎を引き合いにし、それぞれ逆の容姿でキャラ設定は可能なのかと問いかける。その他もいちいちもっともな指摘なのだが、それを言い始めると漫画は成立しないじゃないかと言いたくなる。が、そう思ってしまったら著者の思う壷なのだろう。要は、われわれ日本人は漫画という文化に長い年月に渡って親しみ、知らず知らずのうちにその中の差別的な表現も受け入れてしまったのだと。そうかもしれないし、屁理屈のような気もする。一番残念なのが、3人の著者によって書かれているせいなのか、どうも文章が頭にスッと入ってこない。読者に理解させようというより、これは漫画を利用した研究論文なのだ。漫画は時として作者の意図から外れ「誤解」される場合があるが、それは誤解ではなく受け手側の解釈の違いとの指摘には納得だ。差別は絶対悪なのか、表現の自由なのか難しい。あとがきでは手塚治虫の漫画に出て来る典型的なアフリカ人についても触れている。差別意識は時代と共に変化するが、手塚治虫の全盛期にアレを観て差別と感じた日本人がどの程度いたのかは気になる。

  • 差別と漫画がどう表現してきたかという趣旨でのタイトルなのだが、差別というよりもっとひろく表現方法についての考察になっている。
    マンガで描かれている価値観や感性を改めて問うと、私たちが日ごろ何気なく見ている表現方法をステレオタイプで見ていることに気づかされ、とても興味深かった。

  • マンガの作品が、差別表現だと非難されることがあるが、なぜそのように受け取られるのかということを書いた本なのかと思ったが、第三章の「マンガと現代思想」の論旨がわかりにくく、読者がマンガをどう受け取るのかといったあたりはぼやけた感じだった。

    第一章のマンガの文法解説で、マンガのデフォルメが見た目と性格を結びつけるというような部分は、改めて言われると、なるほどと思った。

    第二章のマンガにおける歴史叙述は、研究の進捗により変わり、受け取られ方も時代によって変わっていくというのは、そりゃそうだという感じだった。

    全体的には、統一感がなく、マンガ表現に内在する差別の危険性や、読み手の感じ方で受け取られ方が変わるというあたりに十分に迫っているようには読めなかった。

  • タイトルの印象とは違って、読みやすい内容だった。
    とても面白い。

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著者プロフィール

吉村 和真(よしむら・かずま)
1971年福岡県生まれ。立命館大学大学院文学研究科単位取得退学。専攻は思想史・マンガ研究。現在、京都精華大学マンガ学部教授。同大学国際マンガ研究センター長、日本マンガ学会事務局長などを歴任。編著・共編著に『「はだしのゲン」がいた風景―マンガ・戦争・記憶』(梓出版社)、『マンガの教科書―マンガの歴史がわかる60話』(臨川書店)、『障害のある人たちに向けたLLマンガへの招待―はたして「マンガはわかりやすい」のか』(樹村房)など。

「2020年 『マンガ・スタディーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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