食糧テロリズム

  • 明石書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750324548

作品紹介・あらすじ

多くの国に飢餓状態の人びとがいる一方で,倉庫では大量の穀物が腐っていく。現代の食糧問題の元凶は,経済のグローバリゼーションと巨大アグリビジネス企業による資本の暴力にほかならない。成長・開発神話の隠れた実態を暴き,来るべき食糧民主主義を説く。

感想・レビュー・書評

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  • これ読んでからスーパー行ったら、肉が買えなかった。笑
    代わりに豆腐とおからを買いました

  • インドの学者、ヴァンダナ・シヴァ氏の、企業による遺伝子操作、種の特許権取得、農業の分野における自由化を批判した一冊です。

    種子や遺伝子が企業の特許として認められることにより、農家はその種を購入しなければ栽培ができなくなり、また既存の作物と異なる種の植え付けによって元の生態系の破壊にも繋がる、農薬使用の推進にも加担している、という企業の戦略とそのむごたらしさがよくわかる内容です。
    伝統的に受け継がれてきた農業には一次元的には測れない合理性が存在し、企業や国際金融機関が推し進めようとする新たなシステムでは守れないものがある、という指摘はとても興味深く、かつ決して非科学的な論理でないところに、説得力があると感じました。
    何が経済倫理を打ち負かせるのかはわかりませんが、自然に敬意を持たない企業に依存してはいけないですね。

    TPPの問題など、国としての農業の在り方が問われる今の時代にこそ一読する価値がある、と思います。

  • すごいショッキングなタイトル。
    本題はStolen Harvest -The Hijacking of the Global Food Supply-
    シヴァさんの単著は初めて読みました。

    農業における緑の革命、漁業における青の革命、畜産業における白の革命。
    効率化の名の元に進められたこれらの革命がどれだけの人々から職を奪ったか。
    それなのにメディアでは「○人分の雇用を創出した」というんでしょう。
    何にせよ工業化を進めたら労働集約率は落ちるに決まってる。失業者は増えるに決まってる。何のための効率化なんや。

    それに、これらの効率化っていうのは中長期的に見れば全くもって非効率。持続不可能。

    TRIPs協定が結ばれてからというもの、農民たちは種を選んだり自由に交換したり交配したりという自由が奪われてる。でないと、特許を持っている会社から犯罪者にされてしまう。伝統的に農民は自由に交換したり交配したりして新しい種を作りだしてきたのに。そうやって、彼らは会社の種を買わざるを得んくなる。
    遺伝子組み換えによって農薬に対する耐性ができた種は、増産できるようになったわけでもなく農民に農薬を買わせて企業が儲けることにしかつながらんかった。組みかえられた遺伝子は害虫や雑草の中に入り込んでスーパー害虫、スーパー雑草を生み出す脅威を作り出した。

    遺伝子組み換え商品の健康被害は有名。
    でも、遺伝子組み換えのものとそうでないものが完全に分けられてるっていうのは疑った方がいいみたい…

    工業的な水産養殖は、漁獲量の2倍をfish mealとして用い、同時に大量の“イラナイ”魚たちを殺して海に捨てている。ウミガメなども含まれる。1トンのエビに対して最大15トンもの魚類が廃棄されるというようなエビ漁もあるらしい。

    エビ漁によるマングローブ林の破壊は有名やけど、それによる被害は暴風雨の被害を防げなくなる、土壌流出、魚類の生息地の損失、周辺の農地への影響…

    インドでは神聖な生き物だった牛は、伝統的に人間の農業を手伝ったり、燃料や肥料となる牛糞を提供し、完全に共存していた。今では食べたくないものを食べさせられ肥えさせられ食べられてしまう。生産量の数倍もの量の穀物を牛たちは食べさせられる。その穀物を必要としている人間はインドの中にもたくさんいるのに。



    こないだ、友人が昔贅沢品やった寿司が100円とかで食べれるようになってたことを憂いてたのを思い出した。
    希少なものを無理矢理作って安くで売る…
    寿司も肉も、贅沢品にすべきや。
    今行われてる畜産、漁業…こんな非効率なことはない。完全に持続不可能やし、金持ちの流行に依存してる産業は定職にはならん。



    世銀のエコノミストが書いた内部メモに、
    「ここだけの話だけど、汚染産業を低開発国にもっと移転するように世界銀行は奨励すべきじゃないか。…毒性廃棄物を賃金が最低の国にまとめて捨てる行為を支える経済学的論理は完ぺきだし、われわれは事態を正面から見据える必要がある…。アフリカの人口過疎国には広大な非汚染地域が残っている。大気の質はロスアンジェルスやメキシコシティーと比べて圧倒的にとんでもなく汚染度が低い。…前立腺癌の確立を100万分の1変化させるような作用因に対する関心は、5歳児以下の死亡率が1000人中200人の国よりも、前立腺癌を発症するまで国民が生き延びる国の方で、ずっと強くなるのは明らかだ。」
    と書かれていたらしい。
    信じられない。でも、こんな人間がたくさんいるんやろうな。
    シヴァは、「ジェノサイドの経済学」と呼んだ。



    「商取引が倫理上、生態学上、健康上の義務に拘束されない経済では、商業主義に仕える『科学』は組織的に市民を欺くだろう」









    モンサント社のような企業に怒りを覚えた。
    いや、今の時代きっと名前を知ってるくらいの大きい企業はどこでもこんなことやってるに違いない。その中で働く人の何割がその事実を知っているのかもわからんけど。

    私の生活はそれを基礎に成り立っている。
    その事実が悔しい。
    どうやって変えればいいんや。

    私には知識も覚悟も努力も足りない!!!!!!



    この悔しさをモチベーションに勉強しよう。











    シヴァさんには去年のアジア連帯経済フォーラムでお目にかかれる予定やったけど、事情でこれなくなってすごく残念だった。
    いつかお目にかかれますように。

  • 悪名高いモンサント社なんかの話も載っています。ウィキで検索したら著者さんは「エコ・フェミニズム」という(所謂胡散臭い単語を2個も重ねた)ジャンルに属する主張なのだそうだけど、標準化し流通を可能にし市場の原理を活用し、利潤を上げようとすることでどのような危険がどのような人に襲い掛かり、一企業のために国や生態系が滅ぶ可能性があるということを改めて知ることができました。

  • 資本主義の弊害が様々なところで言われている。原油・食糧の高騰もその一つだろう。
    そんな時代の中、この本では資本主義・市場原理を盾に多国籍企業がいかに後進国を食い荒らしているかを描いている。

    利益第一主義で、継続的な生産を考えない大規模単品種栽培
    自社製品を売り込むための特許取得と遺伝子組み換え作物の育成(遺伝子汚染問題)
    先進国での主要作物大規模生産により、後進国での商品作物栽培が増加し自給率の低下に繫がっている

    特にこの本では遺伝子工学の批判が目立った。
    安全性は本当に保障されているのか?
    収量は本当にあがるのか?
    他の作物の遺伝子汚染を起こさないか?
    新しい耐性、性質をもつ病害虫を生み出さないか?

    今までの伝統的な農業だけで世界の人口を養っていけるかという疑問も残る。
    比較優位を全否定するわけではないが、輸入・資本主義に翻弄されない「自給」を考えた政策をとってもらいたい。
    日本にも、世界にも。

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著者プロフィール

 1952年、インドのウッタラーンチャル州生まれ。カナダのウェスタン・オンタリオ大学で物理学および科学哲学の博士号取得。1980年代から、農業問題、環境問題、社会問題の研究と実践活動に関わる。研究と連動した社会運動の基地として1982年に「科学・技術・エコロジー研究財団」を設立。これまでに300本を超える専門的論文を発表し、20冊に及ぶ本を著者・共著者として出版。主な邦訳書に、『緑の革命とその暴力』(浜谷喜美子訳、日本経済評論社、1997)、『生物多様性の危機——精神のモノカルチャー』(戸田清・鶴田由紀訳、明石書店、2003)、『生物多様性の保護か、生命の収奪か——グローバリズムと知的財産権』(奥田暁子訳、明石書店、2005)、『食糧テロリズム——多国籍企業はいかにして第三世界を飢えさせているか』(浦本昌紀監訳、明石書店、2006)などがある。1993年、もうひとつのノーベル賞と呼ばれる「ライト・ライブリフッド(正しい生活)賞」、国連環境計画の「グローバル500賞」、「アースデイ国際賞」を受賞。

「2007年 『アース・デモクラシー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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