オーストラリアを知るための58章【第3版】 (エリア・スタディーズ)

著者 :
  • 明石書店
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レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750331195

作品紹介・あらすじ

多民族・多文化が共生する、世界史上でもユニークな新世界国家オーストラリア。政治、経済、文化、民族、対アジア関係の分野をとおして掘り下げ、辺境開拓期からこの国の背景に流れる気質を読み解いていく。読み物としても楽しめる詳細なエピソードが満載。

感想・レビュー・書評

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  • ○この本を一言で表すと?
     文化方面に集中したあまり初心者向けでないオーストラリア解説本


    ○この本を読んで面白かった点
    ・これ一冊で「オーストラリアがわかる」とは言えない本ですが、オーストラリアがどういう国なのか、旅行に行った人や向こうに滞在した人の話とはかなり違った部分が見えてきました。国土が広く、場所によって気候や主な民族まで変わり、国土の割に人口が少ないために移民ですぐに人口構成が変わるところなども「これがオーストラリア」というのを掴みにくくする要因かなと思いました。

    ・政治の仕組みについて書かれた本でたまに出てくる「順位指定連記投票制」をオーストラリアが導入していることは初めて知りました。結果が出るまで数日かかる投票制度というのはなかなか導入が大変そうで、よほど「一票の重み」を重視しない限り導入は難しいのだろうなと思いました。(Ⅰ 政治)

    ・オーストラリアがイギリス王家を上に抱く国ということは別の本で知りましたが、何度もそれを変えようとし、挫折して今に至るということは初めて知りました。(Ⅰ 政治)

    第一次世界大戦で人口500万人のなかから41万6000人が兵役に志願したというのは地理的に自国にはあまり関係がないような戦争に対してすごい割合だなと思いました。(Ⅰ 政治)

    ・経済の部としつつも半分以上がルパート・マードックの話でしたが、「フェイスブック 若き天才の野望」など、いろんな本に登場する人物の背景がわかって面白かったです。マードックの子供時代の厳しい育てられ方は徳川慶喜を思い起こさせます。(Ⅱ 経済)

    ・採掘権の話で、アボリジニの権利を尊重して採掘権を行使できないというところは、インドネシアなどで地域住民の弾圧までして採掘をしていたことからすると、かなりの人権意識の高さだなと思いました。(Ⅱ 経済)

    ・後の部でも何度も出てくるジョーゼフ・グトニクが鉱山王として成長すると同時にユダヤ教ハシド派にハマるというのも面白い話だと思いました。(Ⅱ 経済)

    ・オーストラリアの奥地アウトバックの話はスケールが大きいなと思いました。人間だけでなく他の生物もまばらな地域の静寂は本当にすごそうです。その地で車が故障したときの著者の恐怖もよく分かる気がします。(Ⅲ ブッシュ・カルチャー)

    ・「ビーチ」「グレートバリアリーフ」というのは良く知らなくてもオーストラリアと言われると思い浮かびそうですが、そのイメージの裏で海難救助隊が発展してそれ自体もスポーツになったというのは、この本全体で出てくるオーストラリアのイメージらしいなと思いました。(Ⅳ ビーチ・カルチャー)

    ・クリケットがサッカーの次に世界で普及しているスポーツだということは知っていましたが、ルールがネットで調べても良く分からなかったことがありました。この本で何となくイメージが掴めたような気がします。(Ⅴ スポーツ・カルチャー)

    ・「オーストラリアやニュージーランドはとにかくラグビーが熱い!」とニュージーランドで働いている友人に聞いたことがありましたが、この本の記述でその熱さが伝わってきたような気がしました。(Ⅴ スポーツ・カルチャー)

    ・オーストラリアにはいろんな民族がいることは聞いたことがありましたが、その割合が最も多い民族でも4分の1しか占めていないというほど分散されていることは初めて知りました。(Ⅵ 民族のサラダボウル)

    ・アングロ・サクソン人とケルト人が「アングロ=ケルティクス」とまとめて表記されるのも初めて見ましたが、分散しすぎていてまだ共通している民族だからまとまろうというような状況が起きたのかなと思います。(Ⅵ 民族のサラダボウル)

    ・マルタ系と言われてもどこの民族かわからないなと思いましたが、東西冷戦終結の「マルタ会談」の場所かと思い当たりました。てっきり都市の名前だと思っていましたが、国名だったことにもが驚きました。Wikipediaで調べるとマルタ共和国は人口40万人強の小国ですが、オーストラリアに15万人以上マルタ系の人たちがいるというのはすごいなと思いました。(Ⅵ 民族のサラダボウル)

    ・文化多元主義だからこその母国同士の争いを引き継いでいる面はあるだろうなと思いましたが、その割に大きく表面化していないのはすごいなと思いました。(Ⅵ 民族のサラダボウル)

    ・ギリシャ系、イタリア系の人たちが活躍し、ユダヤ系の人たちが社会主流化率を高め、インドシナ系の人たちが急激に流入して割合を高めていくなど、日本からすると考えられないような、主流派自体も動く民族分布の変遷はすごいなと思いました。(Ⅵ 民族のサラダボウル)

    ・特にインドシナ系の親が子供の為に将来を棄て、子供がそれに報いるというところは、後がない人たちの希望の地がオーストラリアだったのかなと思いました。(Ⅵ 民族のサラダボウル)

    ・地理的にアジア圏との共存が必要であること、片やアメリカとの関わりも重要であることなど、他の国にはないような地政学的情況にあって面白いなと思いました。「100年予測」という本では今後100年間でほとんど世界の覇権争いに関わってこない国として扱われていましたが、世界の主流でなく「ミドルパワー」としてそれなりの地位を今後も示していきそうな気がします。(Ⅶ アジアとの共存)

    ・改版前に書かれた章では有力だったイタリア系のピーター・コステロやギリシャ系のペトルー・ゲオルギューが失速して長期政権のジョン・ハワードの後をフランス系のケヴィン・ラッドが継いだというのは、改版前の内容では一切触れられていなかっただけに著者も意外だったのかなと思いました。ケヴィン・ラッドが中国についての研究をしてきた人で、「陸克文」という中国名まで持っていたというのは面白いなと思いました。そのラッドも急速に失速し、2010年に首相交代となったのは、大変な時期に政権を受け継いだせいでなかなか可哀そうだなと思いました。(Ⅷ 最新の動向)


    ○つっこみどころ
    ・「オーストラリアを知るための」という本の題名の割には、オーストラリア初心者にはついていきづらい本だったように思いました。初めて聞くような用語が解説されずにそのまま使われたり、知らない背景が前提に語られたり。

    ・農業についての話がほとんどなかったなと思いました。

    ・経済の話にもっと深く踏み込んでほしかったなと思いました。

    ・2001年に書かれた第1版からあまり手を加えられていない、古いなと思われる情報が多いなと思いました。

  • アボリジニだけでなく、現在オーストラリアで生活している多くの民族を紹介している。
    民族のサラダボウルとのこと。
    クリケットとテニスが盛んで、フットボールは、オーストラリアルールというのがあるとのこと

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プロフィール

1936年愛媛県生まれ。明治大学名誉教授。日本翻訳家協会評議員、日本ポップカルチャー学会顧問、日本ペンクラブ会員(元理事、元国際委員長)。著書に、『ワスプ(WASP)――アメリカン・エリートはどうつくられるか』(中公新書)、『ブッシュ家とケネディ家』(朝日選書)、『なぜアメリカ大統領は戦争をしたがるのか?』(アスキー新書)、『誰がオバマを大統領に選んだのか』(NTT出版)、『オバマ・ショック』(町山智浩との共著、集英社新書)、『アメリカ合衆国の異端児たち』『大英帝国の異端児たち』(共に日経プレミアシリーズ)、『ジョージ・ソロス伝』(李白社、発売元ビジネス社)、『大統領選からアメリカを知るための57章』『ニューヨークからアメリカを知るための76章』『カリフォルニアからアメリカを知るための54章』『オバマ 「黒人大統領」を救世主と仰いだアメリカ』『アメリカを動かすスコッチ=アイリッシュ――21人の大統領と「茶会派」を生みだした民族集団』(いずれも明石書店)ほか。訳書に、『ヴィジュアル・ヒストリー アメリカ――植民地時代から覇権国家の未来まで』(アレン・ワインスタインほか著、東洋書林)、『白人の歴史』(ネル・アーヴィン・ペインター著、東洋書林)『リンカーン――うつ病を糧に偉大さを鍛え上げた大統領』(ジョシュア・ウルフ・シェンク著、明石書店)ほか。

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