スラムの惑星―都市貧困のグローバル化―

  • 明石書店
3.25
  • (1)
  • (6)
  • (6)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 98
感想 : 5
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750331904

作品紹介・あらすじ

ネオリベラリズムが主導するグローバリゼーションの下、世界各国で「スラム化」が進行、10億を超えるスラム居住者が生まれている。都市問題の論客デイヴィスがその現状と構造を鋭く抉り、貧困の世界的な同時進行にどう立ち向かうべきかを考察する。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • スラムこそが都市の本質的な姿を表しているというメッセージであるように感じた。

    都市は、その社会の構造や経済の実態を如実に表し、特にスラムは、その社会の抱える課題を非常に赤裸々な形で表出する。

    この本では世界中のスラムの姿を事細かに描くと同時に、海外からの開発支援や政府の貧困対策、経済対策が、そのような現実に対して実際には全く対処できていないことを指摘している。

    また、大規模再開発はもちろんのこと、インフィル型の開発や地域の再生といった取り組みによっても新しく疎外される層が生まれ、それが新たなスラムの生成に繋がっているということを、メカニズムとして解き明かしている。

    スラムを通じて、社会の分断や不安定さを生む要因となるこれらの構造を認識させてくれた本であった。

  • 現在、多くの発展途上国で急速に都市化が進行しており、世界の都市人口は農村人口を上回った。
    しかし、途上国では都市の成長よりも急速にスラムが進行しており、いくつかの国では都市人口の大部分がスラムに住むほどである。従来の開発分野では都市と農村の経済格差ばかりが注目される傾向にあったが、都市の中での中産階級とスラムの住人達との格差も凄まじいものがある。世界で最も平均寿命が短く、乳幼児死亡率の高い場所。それは農村ではなく、「都市」の「スラム」である。スラムの住人は望んで豊かな都市に出てきているのではない。農村で職がなくなり押し出され、しかし都市は雇用を提供してくれない。彼らは都市と農村の両方に属すことが出来ないまま、誰も住めないような土地を占拠して、なんとか生きながらえているのだ。

    本書は途上国における都市化とスラムの激増を告発し、豊富なデータを基にその問題を曝してくれる。ただし、あまりに告発のトーンが強すぎる為、いささか信頼感を損ねてしまっている点と、解決策といえるものは提示されず、著者の社会主義的なスタンスから、最後は「革命」や「暴力」すらチラつく暗い終り方をしている点が残念。

    本書は2部作の1作目らしいので、2作目に期待か。

  • 読了:2010/07/30 図書館

  • 各国の例が羅列されていて読みづらいし頭に入りにくいが、著者による絶望的な未来予測は魅力的。

全5件中 1 - 5件を表示

著者プロフィール

1946年カリフォルニア州フォンタナ生まれ。精肉工場の工員やトラック運転手、SDSの活動家といった経歴の持ち主。リード大学で歴史学を学んだあとUCLAに進むが学位をとっていなかったために教職につかない時代を長く過ごした。南カリフォルニア大学建築学部とカリフォルニア大学アーヴァイン校歴史学部を経て現在はカリフォルニア大学リバーサイド校クリエイティブ・ライティング学部の名誉教授。『ニューレフト・リビュー』誌の編集委員でもある。日本語に訳されている著作としては『要塞都市LA』(青土社、2001年、増補新版2008年)、『感染爆発』(紀伊国屋書店、2006年)、『自動車爆弾の歴史』(河出書房新社、2007年)、『スラムの惑星』(明石書店、2010年)がある。最近になってもニューオーリンズの災害や金融危機、コロナウィルスといった時事的なトピックについてのエッセイを精力的に発表するなど、アカデミズムの枠にとらわれることのない斬新なスタイルを依然として堅持している。

「2020年 『マルクス 古き神々と新しき謎』 で使われていた紹介文から引用しています。」

マイク・デイヴィスの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×