文化・メディアが生み出す排除と解放 (差別と排除の[いま]) (差別と排除のいま 第 3巻)

著者 :
  • 明石書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750334356

作品紹介・あらすじ

日本社会の伝統的な差別形態が見えにくくなっている中で、インターネットといった新しい伝達手段の普及もあって、新たな差別と排除が広がっている。本巻では、食、音楽、スポーツ、映画、マンガなどに表れる差別と排除の今日的形態をあぶり出す。

感想・レビュー・書評

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  • 現代に残る、差別と排除を、メディアがどう描いているのか、メディアを通して私たちはどう認識しているのかを知る一冊でした。
    具体的な事例が多く、自分で他の資料を参照することも出来て読みやすかったです。

    社会人になり、社会一般の構造・システムに組み込まれていくほど、見えない社会のことが気がかりになり、手に取りました。
    メディアで表現しようとするほど、物事が2項対立的に描かれて、中間的な存在にある人が排除されたり、あるステレオタイプの押し付けになったりする。障がい者表象については、何点か、ドキュメンタリー作品が多く紹介されていたので、必ず観てみようと思います。

    悪意はなくても、人の手によって加工されると、そこからもれる人、傷つく人が生まれてしまうことを、忘れてはいけないと思います。
    それをメディアは扱わないからこそ、こういうところから事実を得るしかない、というのも悲しいことですが。

  • メディアの排除と解放の両方に注目し、新しい排除と差別の多様さをあぶり出す

    「安易に『良い文化』と『悪い文化』に文化を色分けし、良い文化だけを増やせばいいというわけではない。単純に排除する文化を『排除』して、そうでないものにすればいいというわけではない」。

    文化やメディアの排他性の指摘はその歴史と共に存在する。しかし一方的にメディアの差別性や差別用語を批判するだけでは問題は解消されないだろう。本書はタイトルに「排除と解放」と銘打たれている通り、その排除と解放の両方の側面に注目し、その「今」を描きだす。
     例えば、第1章は「食とマイノリティ」、食と差別を扱っている。何を食べるか、そして何を食べないかで、仲間意識が創られたり、あるいは敵が創られたりする。大阪市内の沖縄出身者、在日朝鮮人、そして被差別部落のひとびとからの聞き取り調査は、食に関する差別を描き出す。そして食事を通じてひとびとの相互理解が形成されるエピソードも紹介されるが、これはまさに排除の対になる「解放」の側面だろう。

    本書が取り上げる話題は食の他に、歌謡曲、スポーツ、(差別を助長する)インターネット、映画やドラマにおける障がい者の表象、漫画と幅広い。

    伝統的な差別が見えにくくなっている中で……これは意図的隠蔽と「見ないこと」に由来するがひとまずここでは措く……、インターネットを初めとする新しいメディアに現れる新たな差別と排除がかくも多様な形態であることに驚く。しかし、メディアは私たちの日常生活に深くよりそっているものだとすれば、驚くことでもないのだろう。伝統的な差別や排除も新しいそれと同じように形成されたものも多いのではないかと思う。是非、若い読書に手にとって欲しい一冊である。

  • マイノリティへの差別に対する表現は難しい。
    在日、部落。
    何をどう伝えるか。何でもタブーにしてしまうからな。
    インターネットでますます多くの一般人が差別やらの表現を語りだした。もはやインターネットは誰にも止められない。

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著者プロフィール

関西学院大学社会学部教授
1957年生まれ。著・編著に『資本主義と他者』(関西学院大学出版会 1998年)、Fissures (Ed. de la Villette, 1998)、『文化遺産の社会学』(編:新曜社 2007年)、『零度の社会──詐欺と贈与の社会学』(世界思想社 2005年)、Scams and Sweeteners(Trans Pacific Press, 2007)、『開発空間の暴力』(新曜社 2012年)、Un Japonais en Haute-Marne (Ed.Chatelet-Voltaire, 2015)など。

「2017年 『中国雲南省少数民族から見える多元的世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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