増補 放射線被曝の歴史―アメリカ原爆開発から福島原発事故まで―

著者 :
  • 明石書店
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本棚登録 : 46
レビュー : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750334820

作品紹介・あらすじ

放射線被曝防護の基準はどのようにつくられてきたのか――。米国で発掘した膨大な資料から、防護基準がつくりあげられてきた歴史をたどり、その真実と実態を明らかにした画期的な書。1991年に刊行された旧版に福島原発事故の評価を加え、復刊

感想・レビュー・書評

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  • 放射線被曝の歴史

     福島原発の事故が起こる前まで、大学で少々ならった、放射線防護に関してIEAEやICRPなど国際機関が発している、被曝量に関して、閾値にかんして基礎として学んだことがある。しかし、それらの根拠を疑うことはなかった。でも、事故が起きてみて、自分はチェルノブイリ事故頃に生まれたんだな~っと思い直し、3.11以降に低線量被曝に過敏に反応する話も見聞きし、少し違和感を覚えていた。また、実際に重大事故が起きた場合、三つの段階にわけて、平時より被曝許容量を一気にあげて、収束作業を進め段階的に下げていく方針にも指針なんだからっと有事なのだから仕方ないと思っているが、その根拠が本書に示すように人命を第一ではなく経済性(原子力産業)のために重きを置き、低線量での被曝障害の可能性、ABCCの長崎・広島での調査の過小評価の可能性から現在に至るまで、
     人あっての経済、人あっての産業なのに、一部人を切り捨てて邁進してきた原子力産業の一面を思い知らされた気分です。
     人類と原子力は共存できないのかもしれませんね。
     いまも、定説となっている100mSv以下では顕著な影響がない。出来る限り、被曝しないほうが、良いと改めて思います。

  • 「今日の放射線被曝防護の基準とは、核・原子力開発のためにヒバクを強制する側が、(中略)原子力開発の推進策を政治的に支える手段なのである。」「許容線量は、原子力推進側が国民に我慢を強制するものなのである。」という考え方・立場を明らかにしたうえで、原子力を推進してきた世界が、人類に対して強いてきた被曝の歴史について検証している。また、フクシマで何が起こったか、そして今後どうすべきかという考えを整理するためにも役立つ。原子力利用、被爆に感心がある方は一読することを進める。

  • 放射線の被ばくは、「被爆」と「被曝」があるね。これはどう違うんだろう?
    放射線は、人体にどれくらい浴びると危険なのか?それが国際的に随時変更されていった経過を振り返る書。
    許容量を低く設定したい勢力と、危険性を訴える勢力との駆け引きが、手に取るようにわかる。

  • 様々な原子力の専門書があるが、これは反原発派。統計データにしても、反原発派は甲状腺癌や白血病が増えたと主張し、原発推進派は喫煙者より低い確率であると主張。そもそもサンプル数が少ないのと原発推進派がデータを管理しているため公平とはいいがたいが、

  •  現在のICRP基準がいかにでたらめで、核先進国の都合により決められていたかがよくわかる。

    この本のp.158から
     第7に、ICRPのリスクの考えからは、リスクを「容認」するものにはどこまでもリスクが押しつけられる。この結果、とりわけ社会的に弱い立場にある人びとに放射線の被害が転嫁されることになる。原発で働く労働者の場合も、被害の告発が即解雇につながるような弱い立場にある下請けの労働者に被曝は集中し、被害もまた深刻なものとなる。ウラン鉱石が採掘されるアメリカやカナダのインディアン、オーストラリアの原住民、南アフリカの黒人なども同様である。原子力の施設が建てられるところは、大部分が経済的、社会的に差別れてきたちいきである。原子力産業は経済的な遅れにつけ込んで、札びらで頬をたたいて、、現地の住民に被曝のリスクを受忍せよと迫る。それらの人びとに被曝を強制した上に、被害が表れると、自分たちで過小評価しておいた放射線のリスク評価を用いて、「科学的」には因果関係が証明されないからその被害は原発の放射能が原因ではない、と被害を切り捨てる。

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著者プロフィール

1943年 奈良県に生まれる。
1961年 大阪大学工学部精密工学科に入学。工学博士。
1978年 大阪府科学教育センター研究員を経て,神戸大学教養部自然科学史教室に着任。
1988年 同大学教養部教授。科学技術史専攻。
1991年 5月10日病没。
著書に『子ども科学館』(日本ブリタニカ),訳書にレスリー・J・フリーマン著『核の目撃者たち──内部からの原子力批判』(筑摩書房)などがある。

「2011年 『〈増補〉放射線被曝の歴史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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