タイム・バインド 働く母親のワークライフバランス 仕事・家庭・子どもをめぐる真実
- 明石書店 (2012年3月30日発売)


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本 ・本 (448ページ) / ISBN・EAN: 9784750335544
感想・レビュー・書評
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こちらも、良書。
アメリカの実際にある企業が著者に全面協力して、社員たちに長期取材をし、それをベースに書かれている。
ワークライフバランスちゃんと考えなきゃね★的なポジティブで甘い内容ではなく、読みながら、だんだん自分の現実とリンクしていき、仕事、家庭、子どもに対するこうありたいと思う理想と現実とのギャップを、「どう捉えていくか」「どう克服していきたいと思うか」そして「実際にどう行動するか」を、真剣に考えさせられる内容です。
分厚いし、限りなくノンフィクションなので、結末はなく、それぞれの取り上げられている家族たちの問題は解決もしないし、現在進行形でシビアな現実が続いていくので、ザ・ゴール的な、読み終わった後の爽快感はゼロ、かつ、自分が向き合うべき問題をはっきり提示されたような気分になります。
むむむ・・・と唸ったのは、キャリアを積んでる母親の多くが、口では子どもや家庭にもっと時間をといいつつ、実際には仕事の心地よさに逃げている(意訳)姿、そして、限られた時間の中で効率を求めいろいろなことを圧縮して行っている姿。客観的に見ると、なかなかキツイ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
気付き→仕事と家庭の逆転現象。家庭を配偶者に委ねて仕事に全力投球できる労働者を標準モデルとした労務管理。
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「働く母親のワークライフバランス」という副題にひかれて読みました。
日本語版発行は2012年、調べてみると、原著は1997年発行、内容は1990年代前半までのアメリカ、という古さ。
しかし、提示されている課題は、全く過去のものになっていない、どころか、原著発行から25年たった今でも、新しい課題として提示されても違和感がないレベル、と思いました。
著者がインタビューした働く親たちの誰もが、「もっと家庭生活のための時間がほしい」と言っているにも拘らず、現実には、生活の為、とかその他もっともらしい理由をつけて、今以上に時間を割かないのはなぜか?
(なお、本書では、未成年の子供がいる核家族が多く登場する。家庭生活では、未成年の子供のケアが必要になる。米国だからなのか、母親はもちろん、父親も多数登場する。働く母親の〜という副題は日本版としてつけられているようだ。)
フィールドワークの対象として手を挙げてくれた会社にはさまざまな両立支援制度があった。
自律的に働くためのフレックスタイム制度(働く時間をずらすだけで、総労働時間は変わらない)は喜んで利用されている一方で、時短勤務やワークシェアリングはほとんど利用されていなかった。
仕事は無慈悲な世界であり、家庭は避難港であるという伝統的な避難港モデルは、今は該当しないどころか、逆転しているのではないか?
役員クラスはもちろん、時給ワーカーですら、男女を問わず、職場の方が快適、または、職場で一時的にでも家庭の疲れを癒しているのではないか?
職場では、さまざまな課題解決に周りの助けを求めることができ、結果が出れば、賞賛をもらえる。
家庭のグチも聞いて慰めてくれる友人がいる。
職場環境の方は働く者の人間性を保つためのさまざまな工夫を重ねる一方で、家庭を仕事のように感じている人が実は多いのではないか?
また、かつては職場を支配していた効率性への狂信が、家庭に展開している。
家庭での「質の高い時間ークオリティタイム」を増やす手段であったはずの効率性が、今や目的そのものになっているのではないか?
働く親たちは、実際に、家庭に時間を割く代わりに、次の戦略で家庭に時間を割くことを回避している。
戦略には大きく3つのパターンがある。
1.ほんとうに必要なケアを見極め、それのみを行う
2.ケアをお金で買う
3.時間ができればあれもこれもしよう、と自分を慰める
本当に必要なケアを見極める際には、子供を自立した存在(ケアは不要)と考えようとする。例えば、子供1人で留守番可能と考えたり、親の置かれている状況や気持ちを汲むことをもとめたりする。
結果、子供の特に感情面のニーズを否定し、感情面の生活をダウンサイズさせることになりやすい。
また、ケアの外部化は「良い親」というアイデンティティを自分から切り離すことにもつながるが、家事その他親なら当たり前に行うとされていることをこなすことで疲れ不機嫌な自分でいるより、それらはお金で解決して、ニコニコ子供の話を聞ける自分の方が「良い親」だと再定義して乗り切ることになる。
そして、家庭の為に、今以上に時間ができるときは、永遠にこない。
そのしわ寄せは、結局、子供にきているのではないか?
↑と、書いてみると、なんてありきたりな結論なんだろう。
保守的な年長者に今までさんざん言われてきたことだ。
ここまで書いてきて、我ながらびっくり(@_@)!
でも、25年前にも日本の年長者たちが働きたいという女性へ口を極めて言っていたことと、その後の日本女性の働き方の激変を経ての後に、改めてこの本を読んでそうかもと共感する結論は、書いてみると同じようでも「行って、来るほど、違う」(現在の立ち位置は同じように見えても内実は全く違うという意味)と思う。
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東2法経図・6F開架:366.38A/H81t//K