戸籍と国籍の近現代史――民族・血統・日本人

著者 :
  • 明石書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750338958

作品紹介・あらすじ

日本国家は歴史的に「国籍」のみならず「民族」「血統」といった概念を、戸籍という装置を用いて操作してきた。戸籍は近代日本においていかにして誕生し、国籍と結びついて「日本人」を支配してきたのか。日本独自と言われる制度の存在意義を問う画期的試み。

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  • 近代以降の日本の戸籍と国籍について丁寧にまとめた本。法律の話が必然的に多くやや難しかったが、建前としての四民平等など、戸籍制度が残した差別の部分は勉強になった。

  • 【内容紹介】
     日本国家は歴史的に「国籍」のみならず「民族」「血統」といった概念を、戸籍という装置を用いて操作してきた。戸籍は近代日本においていかにして誕生し、国籍と結びついて「日本人」を支配してきたのか。日本独自と言われる制度の存在意義を問う画期的試み。
    http://www.akashi.co.jp/book/b128347.html


    【メモ】
    ・戸籍制度が現状にあわず、問題が現れてきている点を述べた第六章がとても参考になった。


    【目次】
    はじめに [007-026]

    第1章 戸籍とは何か――「日本人」の身分証明 
     1 戸籍が証明するもの 027
     2 監視する戸籍――個人情報の掌握 040
     3 戸籍の「氏」が示すもの――「家名」に一元化された個人の名 048
     4 国籍証明としての戸籍――戸籍に載れば「日本人」? 058
     5 戸籍は世界無二の制度――欧米、中国の身分登録との違い 065
    第2章 国籍という「国民」の資格――日本国籍と戸籍の密接性 
     1 近代国家における国籍――忠誠義務から個人の権利へ 075
     2 日本の国籍法の誕生――血統主義の採用 085
     3 「家」に従属する国籍――家族に求められる「血」の同一性 095
     4 戦後における国籍法の改正――民主化と「日本人」の範囲 103
    第3章 近代日本と戸籍――「日本人」を律する家 
     1 近代以前の戸籍の変遷――封建社会の人民台帳 107
     2 明治国家形成における戸籍の意義――「元祖日本人」の画定 112
     3 戸籍とは「家」なり――家族と「国体」をつなぐ戸籍 132
     4 戸籍の純血主義と家族主義――退けられた個人主義 141
     5 領土画定と「日本人」の拡大――戸籍による蝦夷地・琉球の「日本化」 149
    第4章 植民地と「日本人」――戸籍がつかさどる「民族」「国籍」「血統」 
     1 植民地における「日本国籍」――国籍に表れた強者の論理 161
     2 帝国における戸籍のモザイク――「日本人」のなかの「外地人」 171
     3 「民族」を左右する戸籍――「血統」を食い破る家の原理 186
     4 越境する「帝国臣民」と戸籍――「日本人」を創出する戸籍の諸相 199
     5 満洲国の「国民」とは?――在満「日本人」の国籍と戸籍 215
     6 皇民化政策の急所であった戸籍問題――守るべきは内地戸籍 224
    第5章 戦後「日本人」の再編――「帝国」解体と「帝国臣民」の戸籍と国籍 
     1 旧植民地出身者の「外国人」化――内地戸籍が「日本人」の証 231
     2 戦後「日本人」の回収――引揚者と戸籍 255
     3 戦後沖縄と戸籍――「日本人」への復帰と戸籍の再製 262
    第6章 戸籍と現実のねじれ――開かれた制度となるには 
     1 戸籍の差別主義のゆくえ――外国人と婚外子に対する壁 275
     2 「国民」の資格をめぐる境界線――問われる日本の国籍政策 281
     3 東アジアにおける戸籍の帰趨――韓国・台湾における身分登録制度の変革 290
    おわりに――「民族」「血統」「国籍」というフィクション 297



    【詳細目次】
    目次 [003-005]
    凡例 [006]

    はじめに [007-026]
    「日本人」の証明とは?――国籍か、戸籍か?/戸籍による国民登録――権力装置としての戸籍/「世界に冠たる」戸籍?/戸籍に生きる「家」の思想/なぜ戸籍に「外国人」は載らないのか?/「血統」とは何なのか?/本書の課題と構成

    第1章 戸籍とは何か――「日本人」の身分証明 
    1.1 戸籍が証明するもの 027
    戸籍に記載される「真実」とは/戸籍の索引的機能/「続柄」の特異性/本籍の意味するもの/届出の強制力――戸籍が承認する個人の存在
    1.2 監視する戸籍――個人情報の掌握 040
    戸籍による個人情報の渉猟/戸籍による身許調査/戸籍公開原則の問題性
    1.3 戸籍の「氏」が示すもの――「家名」に一元化された個人の名 048
    氏とはだれの名称か?/苗字から氏へ――個人名から家名へ/明治国家が創り出した「夫婦同氏」/「家破れて氏あり」――戦後民主化からとり残された氏
    1.4 国籍証明としての戸籍――戸籍に載れば「日本人」? 058
    「帰化」という思想と戸籍/なぜ戸籍が「日本人」の証明なのか/無戸籍と就籍
    1.5 戸籍は世界無二の制度――欧米、中国の身分登録との違い 065
    個人単位の国民登録/「本籍」は日本独特のもの/中国の戸口登記制度――日本の戸籍との違い/戦後民主化と生き残った戸籍――精神革命としての「個人方式」化

    第2章 国籍という「国民」の資格――日本国籍と戸籍の密接性 
    2.1 近代国家における国籍――忠誠義務から個人の権利へ 075
    近代国家の勃興と国籍――「臣民」から「国民」へ/個人の権利としての国籍/出生地主義と血統主義/国籍決定における個人の自由――人は国家の従属物ではない
    2.2 日本の国籍法の誕生――血統主義の採用 085
    国籍法による「国民」画定の必要/日本が血統主義を採用した理由とは/明治国家における国籍法の成立/帰化は権利にあらず
    2.3 「家」に従属する国籍――家族に求められる「血」の同一性 095
    夫婦・家族国籍同一主義という思想/国籍に対する家制度の制約――家族国籍同一主義/個人の国籍を左右する「家」
    2.4 戦後における国籍法の改正――民主化と「日本人」の範囲 103
    血統主義を維持する日本/国籍法における男女平等――父母両系主義へ

    第3章 近代日本と戸籍――「日本人」を律する家 
    3.1 近代以前の戸籍の変遷――封建社会の人民台帳 107
    古代日本と戸籍/幕藩体制と戸籍――宗門人別帳
    3.2 明治国家形成における戸籍の意義――「元祖日本人」の画定 112
    明治維新と脱籍者/維新における戸籍の理念――「臣民簿」としての戸籍/壬申戸籍の成立――「元祖日本人」は「臣民」として始まる/壬申戸籍のゆきづまり/壬申戸籍改正の要請――兵役をめぐる家と国家の対立/明治民法と戸籍法の成立
    3.3 戸籍とは「家」なり――家族と「国体」をつなぐ戸籍 132
    「家」とはなんであったか/祖先崇拝と家/君臨する戸主――家の玄関番/戸籍は「国体」とどう結びついたか
    3.4 戸籍の純血主義と家族主義――退けられた個人主義 141
    守るべき家の“純血”――戸籍法に明記された「排外主義」/身分登記簿の挫折――個人主義と家族主義の衝突
    3.5 領土画定と「日本人」の拡大――戸籍による蝦夷地・琉球の「日本化」 149
    蝦夷地の「日本」編入――北海道への戸籍法実施/アイヌの戸籍編入――「臣民」のなかの「旧土人」/「琉球処分」と戸籍/琉球人の「創氏」

    第4章 植民地と「日本人」――戸籍がつかさどる「民族」「国籍」「血統」 
    4.1 植民地における「日本国籍」――国籍に表れた強者の論理 161
    植民地住民の「日本人」への編入――強者の思い描く「国籍」/「日本人」として緊縛される朝鮮人――朝鮮への国籍法施行問題
    4.2 帝国における戸籍のモザイク――「日本人」のなかの「外地人」 171
    「外地」としての植民地/朝鮮戸籍と「朝鮮人」/樺太における戸籍――「原住民」のなかの差異/台湾における戸籍制度の紆余曲折/「台湾戸籍」としての完成
    4.3 「民族」を左右する戸籍――「血統」を食い破る家の原理 186
    「民族籍」の成立――「外地人」の発生/本籍転属禁止の原則――家はあくまで不動/「外地人」の兵役と参政権/「血統」を食い破る「家」の原理
    4.4 越境する「帝国臣民」と戸籍――「日本人」を創出する戸籍の諸相 199
    「台湾籍民」という存在――名義上の「日本人」/戸籍の活用による「台湾籍民」の創出――「日本人」としての利用価値/「朝鮮人」の証明なき人々――無戸籍の朝鮮人/満州国における無戸籍朝鮮人対策――「戸籍啓蒙運動」としての就籍奨励
    4.5 満洲国の「国民」とは?――在満「日本人」の国籍と戸籍 215
    「満洲国国籍」は存在したのか?/満洲国における「日本臣民」の戸籍/満洲国の民籍――未完に終わった「国民証明」
    4.6 皇民化政策の急所であった戸籍問題――守るべきは内地戸籍 224
    「創氏改名」と植民戸籍/許されざる「民族の混淆」――内地転籍自由化を禁じた意味

    第5章 戦後「日本人」の再編――「帝国」解体と「帝国臣民」の戸籍と国籍 
    5.1 旧植民地出身者の「外国人」化――内地戸籍が「日本人」の証 231
    「解放民族」は引き続き「日本国籍」のまま/外国人登録の出立――名目化された「日本国籍」/朝鮮・台湾における「国民」の回収/「帝国」解体後も生み出された「外地人」/旧植民地出身者の日本国籍“喪失”/1961年最高裁判決による“決着”
    5.2 戦後「日本人」の回収――引揚者と戸籍 255
    樺太引揚者の戸籍と国籍/満洲国引揚者の戸籍と国籍
    5.3 戦後沖縄と戸籍――「日本人」への復帰と戸籍の再製 262
    異法領域としての戦後沖縄/沖縄住民の日本国籍と「臨時戸籍」/「琉球籍」としての沖縄戸籍/「本土復帰運動」としての沖縄戸籍の再製

    第6章 戸籍と現実のねじれ――開かれた制度となるには 
    6.1 戸籍の差別主義のゆくえ――外国人と婚外子に対する壁 275
    新たな外国人管理制度/変わる家族関係と変わらない戸籍――性別変更と出生届の問題
    6.2 「国民」の資格をめぐる境界線――問われる日本の国籍政策 281
    求められる重国籍への寛容性――国籍選択制度のもつ意味/重国籍者を監視する戸籍/「日本人」の資格は開かれたのか――「血統」に固執する日本
    6.3 東アジアにおける戸籍の帰趨――韓国・台湾における身分登録制度の変革 290
    韓国における戸籍制度の廃止/変容する台湾戸籍法――「生活者」単位の精度へ

    おわりに――「民族」「血統」「国籍」というフィクション [297-306]
    戸籍の創り出す「日本人」――「純血」という家の原理と擬制/帝国日本における戸籍の役割――政治権力における「戸籍原理主義」/デモクラシーと対峙する戸籍制度――戸籍という権力装置を乗り越えるには


    注 [307-332]
    あとがき(2013年8月 漆黒の闇に飛び交う蛍を思い浮かべながら 遠藤正敬) [333-337]
    索引 [338-342]

  • 戸籍についての議論諸々、たとえば婚外子差別や夫婦別姓、外国人の問題が、いかに思い込みと感情論によってなされているかがよく分かる。出生、婚姻、死亡など届け出はライフイベントの度に必要なことであるにも関わらず、なぜわれわれは戸籍についてこんな無知だったんだろう?と恐ろしいことに気づかされた。

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著者プロフィール

1972年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了。博士(政治学)。専門は政治学、日本政治史。現在、早稲田大学台湾研究所非常勤次席研究員。宇都宮大学、埼玉県立大学、東邦大学等で非常勤講師。著書に、第39回サントリー学芸賞を受賞した『戸籍と無戸籍――「日本人」の輪郭』(人文書院)のほか、『近代日本の植民地統治における国籍と戸籍――満洲・朝鮮・台湾』(明石書店)、『天皇と戸籍――「日本」を映す鏡』(筑摩書房)、『犬神家の戸籍――「血」と「家」の近代日本』(青土社)などがある。

「2024年 『戸籍と国籍の近現代史【第3版】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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