ヘイトスピーチ 表現の自由はどこまで認められるか

  • 明石書店
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750339504

作品紹介・あらすじ

いまも公然と活動を続けるKKK、厳しく規制されるホロコースト否定…豊富な事例からヘイトスピーチとその対応策の世界的課題を掴み、自由と規制のあるべきバランスを探る。在日コリアンなどへの人種差別が公然化する日本にあって、いま必読の包括的入門書。

感想・レビュー・書評

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  •  ヘイトスピーチに欧米はどう向き合ってきたかをまとめた一冊。

     ヘイトスピーチはただ規制すればいいというものではない。規制は一歩間違えば表現の自由を奪う危険を持っている。さらに表現、結社、行為によってどう対処すべきかは違ってくる。ヨーロッパ諸国とアメリカで対称的な展開をしているのが面白い。
     ホロコースト否定を禁止する法律などは以前はなぜこんなものがと思っていたが、この本を読んですごく納得した。
     巻末には日本のヘイトスピーチについても加筆してある。日本だけの感覚でこの問題を考えてはいけないことを痛感した。
     
     欧米はかくも長い間、試行錯誤を重ねてヘイトスピーチと向き合ってきたのである。
     全日本人必読の一冊。

  • アメリカと欧州の対比がとても面白かった。
    それぞれの、「自由」と「差別に対する措置」のバランスの模索。まだ模索途中。おそらく今後も完結することはない問題。

    アメリカは言論の自由は大きい。絶対に罰せられないということはない。弱い立場のものも言論の自由を持つ。
    それに対して、行為であるヘイトクライムに対する刑法の施行は欧州より早かった。
    雇用に関しての人種等による差別も禁止されている。

    欧州はアメリカよりもヘイトスピーチに対する制限が制定されている。それは極端な実刑が出ることはあまりないが、社会がヘイトスピーチを認めないものとして注視している感。
    ヘイトクライムの規制はアメリカより遅く、可決されても施行されてない国も。

  • ヨーロッパ諸国ではナチの人種差別的プロパガンダの影響を受けて、戦争終結までに先導的言論を全面的に規制する律法を行ったが、これはごく当然と思われるかもしれないが、実際は必ずしもそうではない。ほとんどの西欧諸国は、その後数十年間何もしなかったのである。ただしドイツとオーストリアではナチのレトリックや象徴を禁止るする反ナチ法が作られている。しかし法律が他のヘイトスピーチにまで対象を広げるようになったのは1960年代になってからのことである。ここでも先頭に立ったのはドイツだった。1960年には、憎悪を扇動したり、特定の人々を秩序を乱すようなやり方で侮辱したりすることを違法とすることが、全会一致で可決された。こうした規定はヘイトスピーチだけに商店をあてたものではなかったが、その意図と拝啓にはユダヤ教の集会や墓地に対する冒とくが続いたことや、国境を超えるユダヤ民族の活動を非難するパンフレットを配布したハンブルグの実業家を裁判所が罰することができなかったことなどがあった。また1970年代初めには、人種的、宗教的な集団を直接攻撃する出版物を金するという規定が刑法に追加された。

  • 原題:The Freedom to Be Racist? : How the United States and Europe Struggle to Preserve Freedom and Combat Racism(2011)
    著者:Erik Bleich
    訳者: 明戸隆浩, 池田和弘, 河村賢, 小宮友根, 鶴見太郎, 山本武秀

    【目次】
    序文と謝辞 007

      イントロダクション
    1 自由と反レイシズムを両立させるために――本書の見取り図 014

      I 表現の自由
    2 ヨーロッパにおけるヘイトスピーチ規制の多様性 034
     1920年代から90年代のヨーロッパ ――規制に向けたゆっくりとした歩み 
     1990年以降の展開――ヘイトスピーチを規制する立法とその執行 
      イギリスの2006年宗教的憎悪法
      フランスの法規制
      デンマークの風刺画とヘイトスピーチ規制の限界
     結論――ヨーロッパにおける規制の限界 

    3 ホロコースト否定とその極限 080
     ホロコーストにまつわるレイシズム――類型と潮流
     ホロコースト否定を禁止する法律の制定時期とその種類
     施行されるホロコースト否定禁止――高まっていく圧力
     かくも遠くまで来てしまった――これからどこへ向かうべきか

    4 アメリカは例外なのか? 115
     「言論の自由」の原則が生まれるまで――19世紀から1930年代 
     言論規制の時代――1940年代から50年代 
     ヘイトスピーチの保護へ――1960年代から70年代 
     アメリカにおけるヘイトスピーチの制限――90年代の状況 
     ヨーロッパとの比較 

      II 結社の自由と人種差別
    5 結社の自由と人種差別団体規制のジレンマ 150
     人種差別団体規制の課題
     アメリカ ――人種差別団体が自由を謳歌する国
     ベルギー ――極右政党封じ込め その可能性と限界
     ドイツ――ネオナチと闘う民主主義
     各国の事例から学べること

    6 人種差別とヘイトクライムを罰する 185
     レイシストの犯罪を違法化する
     アメリカにおける差別禁止法の歴史
     アメリカにおけるヘイトクライム法
     ヨーロッパにおける差別禁止法とヘイトクライム法
     結論

      結論 
    7 どの程度の自由をレイシストに与えるべきなのか 230
     自由とレイシズムをめぐる歴史の教訓
     どの程度の自由をレイシストに与えるべきなのか
      政策の文脈を理解する
      法律の影響を評価する
      原則を構築する
     レイシストでいる自由をめぐる政治哲学

    訳者解説 274
     はじめに
     訳語と構成
      訳語について
      本書の構成
     本書の内容
      各国の法制度のまとめ
      補足的な論点
     日本という文脈
      日本のレイシズムの現状
      ヘイトスピーチとしての「在日特権」
      政府の対応
      法学者の立場
      反レイシズム運動の登場
     おわりに――本書翻訳の経緯について

    注 [302-332]
    参考文献 [333-344]
    索引 [345-349]

  • 316.8||Bl

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。通常の配架場所は、3階開架 請求記号:316.8//B56

  • エリック・ブライシュ『ヘイトスピーチ 表現の自由はどこまで認められるか』明石書店読了。「我々は自由を愛し、レイシズムを憎む。しかし、そうした価値が衝突したとき、我々はどうすればよいのだろうか」。本書は欧米における表現の自由それへの規制を幅広く渉猟し、「人種差別主義者になる自由?」(原題)の問題を明らかにする。

    規制の代表はイギリスに見られるように厳格に望む立場。自由の代表はアメリカだが州によって対応が異なる。規制と自由の軌跡、そして市民運動の現在を報告する本書を読むと、どの立場をとろうとも、日本に置ける対応の遅れは明らかになる。自由の擁護と差別の是正は固定的立場で捉えることは難しい。その緊張関係に対して実践的に対応する必要があるのではないだろうか。「人種差別主義者になる自由?」そんなものは存在しない。

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著者プロフィール

ミドルベリー大学政治学部教授。国際政治経済学コースの主任も務める。専門はヨーロッパ政治における人種とエスニシティの問題。本書以外のおもな著作に Race Politics in Britain and France: Ideas and Policymaking since the 1960s (Cambridge University Press, 2003)、編著に Muslims and the State in the Post-9/11 West (Routledge, 2010)。

「2014年 『ヘイトスピーチ 表現の自由はどこまで認められるか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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