テュルクを知るための61章 (エリア・スタディーズ148)

著者 :
制作 : 小松 久男 
  • 明石書店
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本棚登録 : 66
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750343969

作品紹介・あらすじ

ユーラシア大陸を舞台に、歴史上活躍してきたテュルク(トルコ)民族。現在も広範な地域に分布して暮らす彼らを、その起源から、言語・文学、世界史上で果たした役割や日本とのかかわりを説明するとともに、包括的に紹介する初めての入門書。

感想・レビュー・書評

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    Truks、単語としては「トルコ」と同義だが、国としてのトルコではなく、西はトルコ・ウクライナから東は樺太まで、広いアジア大陸の文化・民族を表している。いわゆる遊牧民であり、地政学で言うランドパワーである。
    私たち日本人は、島国ゆえ国境がはっきりして、結果としてナショナリズムがハッキリと区別されるが、テュルクのような環境では、ある程度外見上の民族差はあれど、言葉も、文化も、国境も、曖昧であり、それゆえ私たちとは全く違う世界観が広がっている。
    そんな世界を知るための本。このシリーズの中でも非常に有意義と感じた。

  • 中央アジア、蒼き狼がシンボル

  • 私が駐在している国にも少なくない数のテュルク系のみなさまが住まうことも踏まえ、勉強のために購入。極東からハンガリーまで、縦横無尽に動き回った彼らの姿がサクッと理解できた。

    他方、「アゼルバイジャン人」を扱った章のうち、イランに住むみなさまをことを書いた部分は、正確ではないと思われる記載が散見される。例えばイランの国勢調査では民族名を記載する項目はない。それなのに「調査」の結果としてイランに住まうアゼルバイジャン人(アゼリー人)の数を(万人の単位ではあるが、)言い切っているのは誤解を招く。また、「アゼリー人はペルシア語を日常語で使い、ペルシア人との通婚も盛んなことから、ペルシア・イラン文化に同化し、そのアイデンティティーは流動的である」という件は、イランに住んでいればこれは正確性に欠けた記述であることがすぐに分かる。イラン北西の州(東西アーザルバーイジャーン州及びアルダビール州)に行けば、街中で使われている言語はアザリー語であることがすぐに分かる。西アーザルバージャーン州は、クルド系やアルメニア系の住民も少数ながら住んでいるが、彼らの中にもアザリー語を日常語として使える人は相当いるらしい。また、ペルシア人との通婚が盛んというが、ペルシア人の定義があいまいであることはさておくとしても、通婚にタブーはないものの、例えば東アーゼルバーイジャーン州の州都タブリーズは、ほぼ100%アザリー人が占めているといわれているように、アザリー人だけで完結する世界も確かに存在する。更に、「ペルシア・イラン文化に同化し、そのアイデンティティーは流動的である」という部分、私の友人でアーザリー系である人々と話をすると、「イラン人でもあり、アザリー人でもある」という、2つのアイデンティティーが両立しているなと感じられるケースに多々遭遇する。それを、果たして「流動的である」と呼んでいいものなのだろうか。思うに、教育を通じて「イラン人」というアイデンティティーが植え付けられ、それに触発される形で、「アザリー人」というアイデンティティーをより意識するようになっている、ということなのではなかろうか。

    この項目を記載した方の個人攻撃をする意図は全くない。他方、このシリーズは対象とされている範囲のことを短時間で広く知ることができるため、いつも楽しみに読ませてもらっている。限られた紙幅で最大公約数の内容を伝えることは非常に難しいことかと思うが、対象の分野をこの本で初めて知る人が誤解をするような記載がなきよう、慎重に編集をしていただきたいというのが私の願いである。

  • 2017-9-20

  • 所謂トルコ共和国のトルコではなく、さらに定義の広い、中央アジアからユーラシアを東西に席巻した「テュルク(テュルク語を話す人々)」に関する入門書。行動範囲があまり広く、また各地で同化している為、かえってテュルクには漠然としたイメージが付きまとうだけに、まずは写真が多用されている本書のようなまとめ本が入口として分かりやすいかもしれない。東は中国、西はヨーロッパ、またはインドという巨大な文明圏に影響を及ぼした存在感は人類史でも異色で、学ぶ意義が大きい反面、民族の伝播は当たり前の事でもあり、いたずらにテュルクを偉大と捉える罠にはおちないようにしたい。

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著者プロフィール

1951年生まれ。中央アジア近現代史。東京外国語大学特別教授、東京大学名誉教授。主な業績として『革命の中央アジア――あるジャディードの肖像』(東京大学出版会、1996年)、『中央ユーラシア史』(編著、山川出版社、2000年)、『イブラヒム、日本への旅――ロシア・オスマン帝国・日本』(刀水書房、2008年)、『激動の中のイスラーム――中央アジア近現代史』(山川出版社、2014年)、『テュルクを知るための61章』(編著、明石書店、2016年)、Kazakhstan, Kyrgyzstan, and Uzbekistan: Life and Politics during the Soviet Era(共編著、Palgrave Macmillan, 2017)。

「2017年 『テュルクの歴史 古代から近現代まで』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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