香港の歴史――東洋と西洋の間に立つ人々 (世界歴史叢書)

  • 明石書店
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本棚登録 : 53
レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750350172

作品紹介・あらすじ

本書は、分かりやすく、しかも学問的水準の高い、香港の通史である。雨傘運動から「国家安全法」提案に至る、昨今の香港危機にあたって、香港に関心をもつ読者の座右に置き、その歴史の特性を抑えることで、変動するニュースの深い理解の一助となろう。

感想・レビュー・書評

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  • とりあえずさっと一通り読んだ。ペストのところ、香港の英語水準は返還前から低かったこと、その理由は面白かった。長い歴史の中で香港をとらえると違った見方ができるようになると思う。

  • ふむ

  • 19世紀以降の大陸の大混乱の中、香港は、華人の受け皿だったり、意見の代弁者だったり、モノと文明の窓口だったり、金の成る木だったり、モデルケースでもあった。その特殊性は、人類が偶々生み出したミュータントのよう。前世紀、香港返還を前にして、司法・行政の独立性、表現の自由が保たれないと拒絶反応が示された有様には、中国のプレゼンスが強まっている2020年の今日において、既視感を感じた。植民地化された自由貿易港として誕生して以来、香港と中国は摩擦と摺り合わせの200年があり、世界における中国の位置が飛躍的に向上した今、その関係性の変化も不可避と言える。ただ基本的に、香港を変える事によって中国が損する愚を、中国は犯しておらず、1997年の返還以後も20年、案に相違して香港は香港であり続けてきた。とはいえ今後20年を占うには、香港の歴史を知ることは必須で、著者が西側という点考慮しつつも、本書は良い材料になるだろう。香港人としてのアイデンティティが、中共の統一後に確立し始めたという指摘は興味深く、それは大陸から移り住んだ華人のバックグランドが、民国以前の中国にあったからだという(一方、清朝期には反清運動の拠点ともなっている)。広い意味で香港は当然中国であり、だからこそ香港ならではのアイデンティティを大切にすることは、広い国土を運営する中国の試金石にもなるだろう。

  • 東2法経図・6F開架:222.3A/C22h//K

  •  「雨傘運動」以降、「国家安全法」問題で緊張の高まる香港だが、香港の歴史について断片しか知らないことを改めて自覚していたところ、タイミングよく本書が刊行されたので読んだ。著者は香港育ちの米国人で、植民地近代化論に近い視座と、どうも細かい誤りが多い(訳者による訂正注記がかなりある)のが気になるが、これまで日本語の香港通史がない以上、唯一無二の著作であるのは確かである。前近代から、アヘン戦争による植民地化、英国統治時代(一時期の日本占領期も)を経て、「一国二制度」の現在に至る筋道が切れ目なく叙述される。中国本部(特に広東)からの女児人身取引慣行をめぐる問題など社会史にも目配りされている。

     注意するべきは、植民地主義と新自由主義がまさにそのまま直結していることで(本国のような福祉国家の経験がない)、極端な自由放任経済と「小さな政府」、それに伴う貧富の著しい格差と、階級と人種が結合した差別的多民族社会という特徴が一貫して露呈している。新自由主義を福祉国家に反抗するレッセ・フェールへの回帰と捉える視点、あるいは従属地域における規制緩和実験に起点を置く視点が一般的だが、香港やシンガポールのような都市型の植民地における支配様式を直接の「源流」と捉えるべきなのではないかと考えさせられる(例えばD・ハーヴェイは新自由主義を資本家が仕掛けた階級戦と捉えるが、全世界に対する「植民地化」「再植民地化」という見方の方が実態を反映しているのではないか)。

  •  19世紀半ば以降の香港の通史。訳書は2020年出版だが、原書は07年であり、時期は2000年代初頭までで終わっている。
     後書きで訳者は、香港史には英植民地の一部、中国史の一部、香港史志向という3つの視角があり、政治的立場ともリンクされると指摘する。その中で本書は3つの視角によく配慮し、多角的に描くことに比較的成功しているとのことである。
     一時期は日本も当事者だった。日本軍の占領期の数々の暴虐な事件と、行政網の建設や公共衛生、華人の政治関与。香港人の側からの様々な協力と反抗。対日協力者への戦後の制裁は限定的。そして、戦後は占領期に指摘された人種差別や合法アヘン取引といった問題点が認識されたという。
     香港人アイデンティティ。富裕層には19世紀末からこの意識が出現していたが、60-70年代には経済発展、大衆文化、大陸との差異の認識などにより、それ以外の階級も香港への帰属感を持つようになった、とのことである。中国と西洋の文化が融合した混血的な状態を誇りに思うようになった、ともある。本書の副題は「東洋と西洋の間に立つ人々」であり、本書の中には「中華世界と西洋の双方の周縁」との言葉も出てくるが、これ自体が香港人アイデンティティということだろう。
     一方、英語話者と中国語話者の社会は併存してきたが大部分で別々だった、中国との統合に反対してきた「コスモポリタン」は上層・中流階級の政治難民家庭出身、との記述。階層によるアイデンティティの違いもあるのだろう。
     返還については、97年初頭には香港人の香港の前途に対する信頼感は劇的に上昇した、また返還後に香港の民主主義の発展を制限するいくつかの措置が採られてはいるも、社会の変化は少ないという記述だ。2020年時点での評価は異なるのかもしれない。しかし訳者は後書きで、ピンチに次々と直面しつつも鮮やかに切り抜けてきたのが香港の歴史、と述べる。香港は終わりだ、と一言では言えないのかもしれない。

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著者プロフィール

香港大学文学部歴史学科教授。専門は香港史、イギリス帝国史、博物館史。幼少期から高校卒業まで香港で育つ。ハーバード大学にてPh.D取得。セントルイス大学准教授などを経て現職。著書にEdge of Empires: Chinese Elites and British Colonials in Hong Kong (ハーバード大学出版会、2005年)など。

「2020年 『香港の歴史 東洋と西洋の間に立つ人々』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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