- Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
- / ISBN・EAN: 9784750352091
作品紹介・あらすじ
ミレニアル世代のヘレン・ケラー、ハーベン・ギルマの驚くべき物語。サハラ砂漠の灼熱の太陽の下での学校建設から氷山を登る体験、ホワイトハウスでのオバマ大統領との会見まで、障害を革新のチャンスと捉え、すべての人のアクセシビリティ向上をめざす弁護士として活躍する盲ろう女性・ハーベンのぞくぞくする体験をユーモアあふれる表現で綴った回想録。
感想・レビュー・書評
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https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/757362 -
社会がインクルーシブであろうと選択することで初めて、障害者が成功することができるのだ。
障害者向けアクセシビリティを向上させるためのヒント
私たちの体は、時間が経つにつれて変化していく。そして私たちの誰もが、人生のどの段階においても、尊厳を保ちつつ、アクセシビリティを得る権利がある。ほとんどの人は人生のいずれかの段階において、自分自身のため、もしくは家族や同僚のために、アクセシビリティのソリューションを求めるときが来る。障害を持つことは、全ての人間の体験の一部だと言える。この世界におけるアクセシビリティを全ての人に提供するために、私たち全員が努力を惜しんではならない。インクルーシブという目標が、一つの選択肢として目前にあることを忘れてはならない。
なぜ組織はアクセシビリティに投資すべきなのか?
・アクセシビリティは組織の成長を促進させる。
障害者はマイノリティの中でも最大のグループといえる。アメリカには障害を持つ人が5700万人以上いるとされる。世界全体では、その数は13億以上にのぼる。この大規模のグループと向き合う組織は成長し、社会貢献度を上げることができる。
・障害者は革新を後押しする。
野菜のピーラー(皮むき機)や電子メールなど、よく活用される技術の中には、障害者によって生み出された例が多々ある。 障害者の才能を活用し、アクセシビリティを受け入る組織は、そこに生まれる利益を享受できる。
・法的な要件を満たすことができる。
訴訟には多額の費用と時間が要求される。予めサービスを障害者向けに利用できるようにすることで、長期的には組織の持つ資金の節約につながる。
アクセシビリティを向上させるために組織ができること
・物理的、社会的およびデジタル分野におけるバリアを特定するための調査を行う。また、こうしたバリアを取り除くために尽力する。
・初期段階からアクセシビリティを計画に入れる。新しいサービスや製品へのアクセシビリティを念頭に置いて作った方が、できてしまってからつじつまを合わせるよりも簡単である。
・障害を持つ人の採用を増やす。雇用対象となりうる障害者たちは大勢いるのに対し、社会はまだその存在に気づいていない。
・インクルーシブな社会的環境を作るために、定期的に障害者権利擁護のワークショップを開催する。
・肯定的な障害者の物語をメディアが報じる。
障害者の体験を肯定的に発信していくこと
障害があるがゆえの体験を、メディアがどう報じるかで、障害者コミュニティは大きく左右される。報道いかんによっては、有利になったり不利に働くこともある。肯定的に報道すれば、それを受けて社会がインクルーシブなものへとなる力が生まれ、教育面や雇用面、また社会全体で障害者が自然にとけこんでいく機会が増えてゆく。過去を変えることはできないが、メッセージを発信することで未来を変えていくことはできる。
発信していきたい肯定的なメッセージ
・障害のない指導者に対するのと同様、障害のある指導者を慕い敬う。
・目標を達成し、仕事をこなすための替わりの技術は必ず見つけられる。こうした工夫に満ちたソリューションは、大多数の人によく使われているやり方と等しく価値を持っている。
・私たちは持ちつ持たれつの関係にいるのだから、お互いを助け合うことで多くを達成することができる。
発信してはならない否定的なメッセージ
・障害のない人たちは、自分に障害がないことに感謝すべきである、と発信すること。このような考え方は「私たちと、それ以外の人たち」という考えに基づくヒエラルキーを永続させ、障害を持つ人たちがいつまで経ってものけもののままという結果を生んでしょう。 成功を収めた障害者が自分は障害を乗り越えた、と発信すること。
・成功を収める上でまず問題なのが障害である、とメディア表現すると、社会それ自体は変わらなくてもよいと思い 込み、変革への動きを止めてしまう。最大のバリアは人の中にあるのではなく、物理的、社会約、およびデジタル上の環境の中に存在している。デジタル上物理的に存在するバリア、また人々の態度の中にあるバリアを取り除こうとコミュニティが動いてこそ、障害を持つ人々やそのコミュニティが成功できる。
・障害を持つ人々は一律にみな同じような存在であり、それ以上の何者でもない、単調な描き方をすること。人物の特性を説明しようとするときに、その人の持つだけに注目して描いてしまうと、職探しでも学校受験の場合でも、リクルーターや教育機関の教員、その他のコミュニティの人々も、その人物を単に「障害を持つ人」としてしか認識してくれなくなる。
・被害者意識を想起させる言葉遣い。病気の症状や障害があるがゆえの体験などを説明するときは、被害者意識を想起させる言葉遣いは、できるだけ避ける。 例えば「あの女性には視覚障害がある」はニュートラルな表現だが、「あの女性は目が見えないために苦しんでいる」という言い方だと同情を誘うことになる。
・「障害」やその関連の言葉を避けようと苦心すること。「特別支援ニーズ」や「異なる心身能力を持つ」など、わざとらしい表現を使うと、障害があることは恥である、という認識はなくならない。考えてみれば、他の人間的な特徴はありのままに話している。 例えば「あの人の性別は特別です」ではなく、「あの人は女性です」と書く。それと同様に、障害について話すときも、率直な表現を使うべきである。彼我の違いがあるとき、薄氷を踏むかのようにその違いをどう取り扱うかと苦心するのは、あまりにも気まずい。例えば「彼は車椅子に乗っている」の代わりに「彼は車椅子の利用者です」と書いてしまうのだ。難しく考えず、「障害」は「障害」と言い、その他の関連する言葉もそのまま使っていこう。
障害について話すときに気をつけること
・障害者自身の声に注目すること。 障害についての話をするとき、障害のない親や教師、友人 などの声を優先するあまり、障害者の声がかき消されてしまうというケースが往々にして 見られる。話を語る際に注目すべきは、障害者からの視点であって、障害のない人物からの視点ではないと肝に銘じるべし。
・思い込みをなくすこと。障害に関する神話はあまりにも文化に深く根づいているので、それを事実だと捉えてしまいがちだ。視覚障害者について話すとき、全盲(blind)、見えにくい(partially sighted)、弱視(low vision)、視覚障害(hard of sight)、法律上の全盲(legally blind)、 どれを使えばいいのか迷ったときは、思い込みに従うのではなく本人に直接聞いてみよう。「触発される」という言葉を使わずに、障害者の物語を組み立ててみること。 障害者でなければその事実は取るに足らぬささいなことであればあるほど、「触発される」という言葉を使いすぎると、その言葉の意味は聞き手の心に届かず、輝きを失ってしまう。この言い回しは、相手を憐れんでいる自分の気持ちを覆い隠すために使う場合もある。例えば「あなたを見ていると触発されて、自分の問題について文句を言うのはやめようと思う。あなたが抱えているような問題が自分にはないことに、感謝すべきなのだから」という具合だ。「私たち と、それ以外の人たち」という構造のヒエラルキーを含むメッセージはいつまでもなくならず、障害を持つ人はのけものとして押しやられるばかりになってしまう。「触発される」という決まり文句を捨てて、 聞き手を魅了する努力を行ってみよう。
デジタルコンテンツへのアクセシビリティ
デジタルコンテンツへのアクセシビリティを実現すれば、コンテンツをもっと多くの人々に届けることができる。 「ウェブ・コンテント・アクセシビリティ・ガイドラインズ」とは、障害者がウェブサイトを利用できるようにするための、技術的なスタンダードである。モバイルアプリの設計に関しては、iOSおよび Androidの開発者向けアクセシビリティガイドラインを参照のこと、以下にデジタルコンテンツについて、気をつけるポイントをいくつか示す。
映像コンテンツ
・聴覚障害者が音声コンテンツを理解できるように、字幕を提供する。
・視覚障害者が画像コンテンツを理解できるように、解説放送を提供する。解説放送とは、映像の主な視覚情報を、会話の合間に副音声によるナレーションで伝える放送のこと。
・主な画面解説を含む字幕を提供する。これは、盲ろう者にとって特に役立つ。
ポッドキャストやラジオ
・聴覚障害者が利用できるようにテープ起こし原稿を提供する。
画像
・画像の近くにその説明を提供する。画像の説明は、主な視覚情報を伝えるものとする。
記事
・記事のテキストは、機械可読な(マシンリーダブル)形式とする。機械可読テキストは、視覚障害者が利用するソフトウェアを使って、音声合成あるいは点字データに変換できる。 -
明るい筆致で優しい笑みが浮かぶ本。障害があってもなくても共に生きる社会を作っていきたいと素直に思える。
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https://cool.obirin.ac.jp/opac/volume/875673
千駄ヶ谷にもあります。 -
目が見えにくく、耳も聞こえにくい盲ろう者のハーベンの半生。盲ろう者との関わりがあるため興味を持って読んだ。エリトリア出身の両親の元に生まれ、様々な困難も、両親が乗り越えられたように私も乗り越えられると信じ、常に、障害があってもそれを補うツールさえあればできる、と立ち向かってきた。そして、ハーバード大学法科大学院に盲ろう者として初めて入学する。信頼できる友人やサポーターにも出会えたのは、ハーベンの明確な目標があったからなのかなと思う。自分の話を聞いてくれる人から「その人の時間という最も価値の高い贈り物を貰っている」という言葉に感銘を受けた。
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東2法経図・6F開架:289.3A/G47g//K