発達障害者は〈擬態〉する 抑圧と生存戦略のカモフラージュ

  • 明石書店 (2024年1月30日発売)
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感想 : 12
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  • 本 ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750357027

作品紹介・あらすじ

自らも発達障害の当事者であり、自助グループを運営する著者が、当事者間では一般的ながら、支援現場ではまだ浸透していない発達障害者の〈擬態〉について11名にインタビュー。当事者の「生きた声」と「発達障害者の内側から見た体験世界」をリアルに伝える。

感想・レビュー・書評

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  • 快進撃の横道誠さんによる、いろいろな発達障害当事者へのインタビュー集。テーマは「擬態」。今年の初めに外国の方が書いた同じく「発達障害者の擬態」の本を読んだのを思い出したし、少しテーマは離れるけれど、平野啓一郎さんの「分人」という考え方も思い出した。脳を中心とした人間の神経系は、コンピュータのように一律ではないので、文化や社会は多数派に都合の良いように発達してきた側面がある。最近はダイバーシティとかいって、多様性にも目がむき出したけれど、まだまだポーズ、というか商売くささが感じられる。少しでも多くの人が、生きづらさを感じないで暮らせるような社会を目指すことが、今生きる自分の使命なのかな、と考えました。

  • 発達障害者のうち、(結果として)比較的学歴が高い人が多めのインタビュー集。インタビュー集と書いたが、インタビューしたものを一人の語りとしてまとめているので、インタビュアーの語りは注釈としてそれぞれに付されている。
    私が、ASD近似者として強く共感したのが下記。長いが、引用する。書籍137ページより。
    "「擬態」って発達障害でない人もしているんじゃないかなと思うところもあります。発達障害の「擬態」とそれ以外の「擬態」の境界は曖昧だと思います。あと、これもロック的な反抗心かもしれませんが、発達界隈には「擬態」の概念を知って、「これぞ私」と熱心に語っている人が多くて、引いちゃったんですよね。また、「HSP」とか「ギフテッド」もそうですけれど、「擬態」も特権意識をくすぐるかもしれないって思ってます。「擬態」は一定程度の知性がないとできないですよね。一定以上のメタ認知能力のある人だけが「擬態」できるはずです。ですから、「じぶんは『擬態』で苦労している」という言説が自慢げで苦手なんです。"
    もっとこうすればいい、と言われたくないことに100%同意した著者が4ページ後に、「すふさんになにか創作してもらえたら良いのではと思っている」と言明するのもよく分からず、自分にとっては何かすっきりしない本だった。発達障害にまつわる生き方の記述にすっきりしないのではなく、著者にすっきりしないのが残念でした。カモフラージュという行為について、もう少し分析をくわえてほしかったかな……。

  • 発達障害を「仮面着用(人目につく自閉スペクトラム症由来の言動を隠す)」したり「代償(欠如の穴埋め)」することをカモフラージュ(擬態)というらしい。
    人は誰しもそういう事を行って普通という括りの中に入って行くのではないか。フィット感を得られず続けている人が本書の対象とされるのかもしれないが、生存戦略として別にそれはそれでいいし、仕方のないことでもあるなと感じた。誰もが食物連鎖の頂点にはいられないわけで、カメレオンやスカンクみたいな生き方をしている人がいても、それはすごく真っ当なことのように思う。
    自分を守るため、生き延びていくためであるなら弱者には必要な手段だし、世間も人間もそんなに優しくないのでハード面に求めるのも限度がある。
    当事者の声が限定的に取り上げられていて、それに対して筆者の個人的な感想が書かれてる少し偏った内容だった。
    もう少し整理建てで、擬態するメリットやつらさ、進んでいくべき方向性みたいな所が描かれていて欲しかった。正直物足りない。

  • 発達障害者当事者が自分のことを語っている本はあまり読んだことがなかったので興味深かった。
    全体的に、勿論過去大変なことがあった人も多く今も様々な問題があるのには違わないが、現在問題なく生きられている人、有体に言えば学歴や職歴が問題ない人の話が多く、それぞれの話に何か得られたかと言われると少し難しいような気がする。
    著者によるそれぞれのインタビューについての注釈も、共感や理解が得られるようなものでもなく、引っ掛かりを覚える内容もあり、著者の感想でしかないなと感じた。

    発達障害者がどのような擬態を行うのか、どのような擬態が必要になるのか、その傾向・対策等の内容を求めていたところがあるので、自分の期待とはまた違っていたというところだろう。

  • 493.7

  • 編者も書いていたが、高学歴の人に偏りがあるのは確かに、と。ただし、当事者の歩みや感じていることを知ることには一定の意味があると思う。

  • いかに、発達障がいを抱えている人が擬態して生活している様子がよくわかる。
    これは、周囲からはわからない。社会をサバイブするために編み出されたのが擬態で、思っていることとは違う行動をできているのが結構すごいことぢゃないかと思ってしまった。
    そして、登場する11人の方が人生を振り返って、どんなふうに頑張っていたのか、ここが特性だったなと振り返って分析しているのが定型発達より鋭い自己分析ができている気がする

  • カモフラージュはかなり前から発達界隈で話題になっていて、最近ではカエル亭のイワクラと吉住の番組で風間くんのカモフラージュが取り上げられて話題になった。カモフラージュをどう定義するか、どこからがカモフラージュなのか難しい。「世間に合わせる」という点では、誰もがやっていておかしくない。そこにどれだけのしんどさや生きづらさが付き纏うのかという視点だろうか。

  • 【学内】
    https://mol.medicalonline.jp/library/ebooks/detail/?id=11603
    【学外】
    https://mol-medicalonline-jp.iuhw.remotexs.co/library/ebooks/detail?id=11603
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著者プロフィール

京都府立大学文学部准教授。1979年、大阪市生まれ。博士(文学)(京都大学)。専門は文学・当事者研究。著書に『信仰から解放されない子どもたち――#宗教2世に信教の自由を』(編著、明石書店)、『発達障害者は〈擬態〉する――抑圧と生存戦略のカモフラージュ』(明石書店)、『アダルトチルドレンの教科書――回復のメタメソッド』(晶文社)、『酒をやめられない文学研究者とタバコをやめられない精神科医が本気で語り明かした依存症の話』(松本俊彦氏と共著、太田出版)など。

「2025年 『「ほどよく」なんて生きられない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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