マルクスに誘われて: みずみずしい思想を追う

著者 :
  • 亜紀書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750506029

作品紹介・あらすじ

『資本論』がちんぷんかんぷんでも、マルクスは十分に面白い。気鋭のマルクス学者が自分の過去を振り返りながら、「なぜマルクスを学ぶ魅力があるのか」を語る。

感想・レビュー・書評

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  • ▼的場昭弘さん、というマルクス経済学者さん?の、本をいずれ読んでみたいなあ、と。本屋さんでけっこうお見掛けするので。という動機から図書館で借りた本です。内容はなかなか変わっていて、

    <的場昭弘さん、というひとりの学者さんの自伝エッセイみたいな。つまりはどういう思いでこの学問を志したか、そして、どんな段取りでキャリアを作って来たのか、その間にどういう思いでマルクスと向き合ってきたのか>

    みたいなことがそこはかとなく書きつけられた本で。自伝、と二文字で言うと物足りない(笑)。マルクスの紹介本、というとなんだか的場さんの個人情報?が多すぎる。鵺のような本。それでいて、大変に面白かった。好きです。

    ▼70年代、80年代、90年代、00年代・・・・と、言ってみれば日本の(東京圏の)”気分”の現代史でもあります。それはつまり、マルクス主義、マルクスという存在、をどう捉えて、どう向き合って、あるいはどう無視してきたのかという日本全体の動きがあって。それに対してひとりの的場さんと言う人の個人史がクロスする。

    ▼一方でマルクスの思想が分かる本か?と言われると、そういうことはあんまりないかも知れません(笑)。ただ、実はこういうののほうが、「マルクス、という言ってみれば作家。その作家の残した文章思想の魅力や可能性」みたいなもの自体は、微温的にすごく読み手に伝わるのではないかと思いました。

    ▼あと、戦後の、フランスあたりを中心にした「新しい歴史の考え方」。翻訳を読んで感動したルゴフさんなども含めて。つまりは先入観や「正義論」だけでなくて、民俗学的な?風俗学的な?具体なトリビアや暮らしや無名な民衆の暮らし経済現実を大いにまず踏まえようぜ、的な?歴史の考え方。

    ▼これが今は言ってみれば「あたりまえ」で「主流」なんでしょうが、そのあたりがすごく腑に落ちました。平たく言やぁ、現代からしたら阿呆かっていうくらい、例えばマルクス思想なり、国家主義なり、そういう「傾向」に支配された歴史の考え方が以前は跋扈してたってことなんだな、と。

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著者プロフィール

的場昭弘(まとば・あきひろ)1952年宮崎県生まれ。マルクス学研究者。1984年、慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士。一橋大学社会科学古典資料センター助手、東京造形大学助教授を経て現在、神奈川大学教授。マルクス学の提唱者。マルクスの時代を再現し、マルクス理論の真の意味を問い続ける。原資料を使って書いた作品『トリーアの社会史』(未來社、1986年)、『パリの中のマルクス』(御茶の水書房、1995年)、『フランスの中のドイツ人』(御茶の水書房、1995年)をはじめとして、研究書から啓蒙書などさまざまな書物がある。本書には、著者による現在までのマルクス学の成果がすべて込められている。

「2018年 『新装版 新訳 共産党宣言』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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