災害ユートピア――なぜそのとき特別な共同体が立ち上がるのか (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ)

制作 : 高月園子 
  • 亜紀書房
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本棚登録 : 576
レビュー : 63
  • Amazon.co.jp ・本 (442ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750510231

作品紹介・あらすじ

不幸のどん底にありながら、人は困っている人に手を差し伸べる。
人々は喜々として自分のやれることに精を出す。
見ず知らずの人間に食事や寝場所を与える。
知らぬ間に話し合いのフォーラムができる…。
なぜその“楽園”が日常に生かされることはないのか?大爆発、大地震、大洪水、巨大なテロ―いつもそこにはユートピアが出現した。
『ニューヨークタイムス』2009年度の注目すべき本に選出。

感想・レビュー・書評

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  • かつての大震災の時、日本人の冷静さや規則正しさ(?)が海外のメディアに絶賛されたらしいけど、災害が起きたときのそういった行動は、別に日本人だけじゃない。
    海外でも未曾有の大震災が発生したとき、人々は助け合い、譲り合い、支えあった。
    では、震災の時に人は暴徒化すると思われているのは何故なのか。
    誰がそういった情報を刷り込ませたのか。

    読むとわかります。

  • 2019年1月13日に紹介されました!

  • 社会
    思索
    災害

  • 災害が起こったときにふだんの社会秩序が崩れる代わりに、自主的・利他的な行動が立ち上がってくる。それを称してタイトルの「災害ユートピア」。災害時に犯罪や略奪が多発するというのは多くの場合は迷信であり、逆にその「暴動」を抑えようとして行政や富裕層が「エリート・パニック」を起こすと言う。

    話の本筋は分かった。ありそうなことだと思う(少しゾンビ映画を思い出した)。しかし、本書の本題は「災害ユートピア」なんかではないのでは、という気がする。

    著者はジャーナリストだそうで、1906年のサンフランシスコ地震から始まって、第一次大戦中のカナダはハリファックスでの爆発事故、メキシコシティ大地震、9.11同時多発テロ、カトリーナの事例を順々にあげていく(アジアでの近年の災害は、距離・言語の壁があるといさぎよくあきらめている)。しかし、何を見ても「災害時にみられるコミュニティや連帯は素晴らしい。ひきかえ既成権力はクソ」という話しかしない。

    災害時の略奪も起こっていないわけじゃないのだし、なにが「ユートピア」と「略奪」を分けるのか、文化か社会資本か災害中心部からの距離(だいたい略奪とかって災害の周縁部で起こるって説を聞いたような)か、いろいろ考察をする余地もありそうなものだ。日常的な社会秩序がご破算になった状態で、どういうふうに人たちが行動するのかの社会心理学的な分析も多少はあろうかとも思っていたのだが、その手の記述は全然ない。事例をいくつ並べてみても、それをネタに同じ話しかできないのでは面白くもない。

    その反面、ブッシュやイラク戦争が全然ダメみたいな話にはえらくご執心なのである。

    とにかく最後まで読んで得心したのは、この方はカトリーナのときにニューオーリンズで起こった「エリート・パニック」、すなわち行政(FEMAとか)の機能不全やら人種差別的な「自警団」の行動やらに強い問題意識があるようだ。それならそれで、カトリーナに的を絞ったノンフィクションでも書けばよくって、無理に災害ユートピア全般に話を広げなくてもね。アメリカは厚い本を書くジャーナリストが偉いみたいな風潮があるのかね。

    一点、へーと思ったのは、「レインボー・ギャザリング」っていうカーニバル的なキャンプ生活があるそうだが、そういった活動しているヒッピー的(?)な人々は、水利・煮炊き・トイレなど原始的環境でのサバイバル的な組織だった自治が得意なので、実際に被災地でも活躍したと。これは右翼的なサバイバリストが家族単位で引きこもりがちなのとも好対照を成す。
    (似たところで「バーニング・マン」が有名だが、これはだいぶコマーシャライズされているそう)

  • 先ずは邦題が秀逸。確かにこういう状態を指す言葉ってない。英語も日本語も。
    ただこういう副題が付くと、表とグラフと数字が満載な社会学者の研究報告書的な書物を想像してしまい(勿論そういう本も大切)、敬遠されそう。さりとて「新潮クレストブックス」調の表紙から想像できるような柔らかなフィクション寄りの本でもなく、どこまでもノンフィクションライター、レベッカ・ソルニットなのよ〜。
    ケーススタディに終始せず、ウィリアム・ジェームズやドロシー・デイ、サミュエル・ヘンリー・プリンスやジョゼフ・スキャンロン、グスタフ・ルボンやクロポトキンの思想や世界観、更にその著書への考察も掘り下げる。

    映画「チャイナシンドローム」の公開直後にスリーマイル島事故が起き、メキシコシティ大地震の直後にチェルノブイリ事故が起き…はともかく、9・11翌年に「タワーリング・インフェルノ」が公開されたは偶然でしょう。

  • 今さらだがいろいろ震災について勉強中。ユートピアの話は前出の『人はなぜ逃げ遅れるのか』にもある。

  • 災害時に人々が利他的になって助け合う ”災害ユートピア” が出現する、そしてそれはなぜ日常には現れないのか、ということだが。
    話半分だなあ、というのが正直なところ。

    パニックとか犯罪とか噂されるほど酷いことばかりではなく、むしろ自然発生的自律的に整然と助け合いがあった、というのはそういう面もあっただろうとは思うし、救いにもなる。
    でも、災害時に、日常より更に利己的になる人たちもいましたよね。見ましたよね。

    ”PTSD"ばかりではなく、”心的外傷後成長”という概念もある、というのはちょっと面白かった。

  • おすすめ

    「災害が起こると人々はパニックを起こし無法地帯と化した町は犯罪が横行し暴力が支配する。そうならないように国などが強力なリーダーシップを発揮しなければならない」…ということは何となく疑いようのない事実とされていて、昨今の憲法改正論における「緊急事態条項」の追加云々もこれが暗黙の大前提となっているわけだが、実際災害時の光景はこのイメージとずいぶん異なる。本書では20世紀初めのサンフランシスコ地震に始まって、さまざまな天災、人災を例にそれ明らかにしていく。

     実際の災害現場においては平時に想像するようなパニックは起こらない。パニックを起こすのは大多数の民衆ではなく、ごく一部の指導的立場にいる者たちである。本書にも紹介されている災害社会学者キャスリーン・ティアニーはこれを「エリートパニック」と呼び、パニックに陥る市民と英雄的な少数派という一般的なイメージを覆した。
     現在、災害においては自然発生的な助け合いが勝利を収め、秩序をまもろうとする公的機関が過ちを犯すという世界観が大方の災害社会学者の共通認識になっているという。

    自ら極限の状態にある人が見ず知らずの他者に自然に利他的な行動を行うという事実。人間の根底にある善なるものに感動を覚えるが、これはアナキズムそのものでもある。国民を縛り付ける法律の制定に異議を唱えるばかりか、国家の根幹まで脅かそうとしているこの事実を国家たるもの認めるはずがない。

    9.11に続くハリケーンカトリーナにおける悲劇はこの古い神話にしがみついたアメリカ政府の失政であり、その結果ブッシュは急速に支持を失う。

    かたや我が国はどうだろう。

  • 東日本大震災の時に被災者がパニックを起こさず冷静だったのを世界から賞賛されて日本人ホクホクだったけど、実は災害時にはどこにでもある風景だった。緊急時には一般庶民はパニックを起こして暴れるという思い込みは、権力を持つ側の「エリートパニック」に過ぎない。

  • 東日本大震災の前に刊行され、震災後にやたらと取り上げられた感のある本。

    アメリカの災害について詳しいわけではないので
    わからないけれど、かなり
    大げさに書いているのでしょう?と
    疑いたくなる内容が多数。

    ギブアップしました

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著者プロフィール

1961年生まれ。作家、歴史家、アクティヴィスト。カリフォルニアに育ち、環境問題・人権・反戦などの政治運動に参加。1988年より文筆活動を開始する。歩くことがいかに人間の思考と文化に深く根ざしているか広大な人類史を渉猟する『ウォークス 歩くことの精神史』(Wanderlust, 2000)、エドワード・マイブリッジ伝River of Shadows(2004、全米批評家協会賞)、旅や移動をめぐる思索A Field Guide to Getting Lost(2005)、ハリケーン・カトリーナを取材したA Paradise Built in Hell(2009、邦訳『災害ユートピア』)など、環境、土地、芸術、アメリカ史など多分野に二十を越す著作がある。美術展カタログや雑誌への寄稿も多数。

「2018年 『説教したがる男たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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