Beフラット

著者 :
  • 亜紀書房
3.60
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本棚登録 : 171
感想 : 32
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750511085

感想・レビュー・書評

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  • 【引用】
    物心ついたときには、経済成長なんてすっかり終わっていた。就職難も自殺も過労死も、それに無差別殺人だって、ごく当たり前の現象として受け入れながら大人になった。
    昔は何だってよかった。何でもいいから、モノを作りさえすれば売れる時代だった。もっと人を雇えば、もっともうかる時代だった、と、祖母は言っていた。
    その言葉を聞くたびに、私は、動物たちが果実を食い尽くして走り去ったあとの、フンと食べカスだけになった果樹園を思い浮かべた。
    【引用終わり】

    筆者の中村安紀さんは、1979年生まれ。バブル崩壊が、1991年のことなので、中村さんは12歳。確かに日本の経済成長を知らない世代だ。
    中村さんは、日本の将来を真剣に憂う。そして、日本が抱える社会問題について、国会議員18人にインタビュー をする。何人かを除いて、まともなことを考えている国会議員はいなかった。

    不思議なノンフィクション作品だ。
    中村さんの日本の将来を憂う気持ちと、もっと個別の具体的な問題意識。それをベースに国会議員にインタビュー し、自らも考えてみることをずっと続ける。
    結論めいたものは全くなく、読者にも日本の将来についての心配が残る。
    ノンフィクション作品として、とても面白いが、読後感はスッキリしない。スッキリしないのは、作品に対してではなく、日本の将来に対してのモヤモヤとした心配が残るから。

  • 若手ノンフィクション作家が、政治家という職業に真正面からインタビューし、切り込んだ本。
    正直、切り込みすぎていて、取材後に「実名を載せないでほしい」と連絡してきた政治家もいるようで、実名でない方は大体そうなのか。。

    本著の中にある問いのそれぞれが非常に本質的で、日本の将来像を考えるにあたって非常に大事な1冊なのではないかと思います。中学生は無理かもだけど、高校生くらいには読んでもらえると、自分の将来について考えるキッカケになるのでは。
    個人的にも、読んでいて「議院内閣制は本当に必要なのか?」「義務教育の理想的な姿は何なのか?」等々、色々な疑問が頭をよぎりました。
    このように様々な疑問を惹起する本なのですが、もちろんノンフィクションである以上、何らかの結論に誘導する訳ではありません。将来の日本をどうしたいのか、どうありたいのか、は読者に委ねられています。

    ただ、特に本著の前半は読んでいてただただしんどいと言うか、冷たい派遣仕事をこなす著者のエピソードと、上滑りする言葉ばかりで意味を為さない(一部の)政治家とのやりとり。
    仕事の後でちょい疲れてる時に読むとダメージがでかいので、休日に読むのが良いのではと(笑
    しかし、著者の書きぶりは政治家の主張をときに真正面からディスっているものもあり、命削りすぎでは…と心配になります。民主主義国家で良かったとは思いますが。

    とりあえず、本著に実名が載っていた政治家をメモしておきます。(当時の所属)
    ・山尾しおり議員(民主党)
    ・山内康一議員(みんなの党)
    ・小川淳也議員(民主党)
    ・櫛渕万里議員(民主党)
    ・津村啓介議員(民主党)
    18名にインタビューされたんでしたっけ…。2世議員も含めて、保守系にももうちょい幅広く網をかけてほしかった感はありますが。

  • 斜めから切り込むわけでもなく、まっすぐに政治家にインタビュー。2011年頃の民主党が政権をとって、とられた頃の時代。
    『どうやら私は重大な勘違いをしていたらしかった。私は誰もが選挙に行って自分の権利を行使し、立候補者に投票するという形を通して、政治に国民の考えを反映させるべきだと考えていた。それこそが民主主義における一つの正義だとバカみたいに信じ込んで生きてきた。けれど結果としていつも、応援もしていない世襲のじいさんを国会に送り込む手助けをして、国家運営の足を引っ張っていただけなのかもしれない。私は自分の愚かな正義を、もっと早いうちに疑っておくべきだった。』
    フラットな考えからくる、フラットな社会。教育、財源、税。これからの社会を考える時に参考になる。選挙の前にもう一度、いや何度でも読み返したい。

  • 先日の友人の結婚式で話にあがった本読んでみました。政治に縁遠かったノンフィクションライターの作者が、18人の政治家に、率直な気持ちでインタビューをした内容を、ありのまま綴ったものです。

    良くも悪くもありのままなので、上手く噛み合わなかったインタビューも、そのまま掲載されてます。作者の思いに率直に、それゆえ辛辣に書かれてます。

    作者は自分と同じ年。同世代の人の殆どが、この作者と同じような見方をしてるのかな…。

    好みが別れる本だとは思いますが、一度、読んでおいて頂きたい本です。

  • "私たちが出会いをするとき、大切なのは自分のなかにあるものを分かち合い、その体験や出会った人々のことを覚えたおくことであって、彼らに再び会えるかどうかを心配する必要はないということ"

  • 1人口構造と成長は望めない、この2点は常に視点を持つ。
    働く機会を作り、税収を増やすこと。
    地方分権を進めること。魅力的な環境にし、優秀な人が目指す場所にする事。

  • 2014

  • お花畑を夢想する世代とは違う、リアルな意見だと思った。現実を知らない人には書けない。

  • 2013年

  • 単なるインタビュー集ではなく、所々に挟まれた著者の生活の皹(日々の誤変換ではありません)が、文章の厚みを増している。
    それに比べてインタビューを受けている無名の政治家さんたちの言葉の問題外の薄さは、読んでいる私の気持ちが虚ろになるほどに…
    …とはいえタイトルに掲げられている「Beフラット」にはまだ到達していない、当たり前のことに気付き、自らがはらんでいる欠陥に気付くまでにはまだ足りない
    …合間に挟まれる"現実"に頬を叩かれながら…
    そんな思いを感じつつ頁をめくる。

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著者プロフィール

ノンフィクション作家。1979年、京都府に生まれ、三重県で育つ。高校を卒業後、渡米。カリフォルニア大学アーバイン校舞台芸術学部を卒業する。アメリカと日本で三年間の社会人生活を送ったのち、取材旅行へ。訪れた国は六十五に及ぶ。2009年、『インパラの朝』(集英社)で第七回開高健ノンフィクション賞を受賞

「2011年 『Beフラット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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