- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784750513058
作品紹介・あらすじ
『「地頭力」を鍛える』(東洋経済新報社)の細谷功の最新刊!!
会社は人間と同様、生まれた瞬間から老化の一途をたどり、決して若返ることはない。
老化がはじまると、定例会議やルールが増え、スタンプラリー(承認印回覧)が始まる。
見えない未来よりも、わかりやすいコストやリスクばかりが論じられる。
折衷案と多数決で物事が決まり、アイデアと人材は凡庸化する。
手段の目的化が進み、ルーチンワークがクリエイティブワークを駆逐する。
社内評論家・社内政治家が増殖し、イノベーターが迫害される。
この絶望的な老化現象を乗り越える解決策とは?
感想・レビュー・書評
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会社組織を生き物のアナロジーで分析するのは、よくあるアプローチだと思いますが、本著では、「エントロピーは増大する」という自然科学の大原則から演繹的に組織論を考察する様が、知的で面白いです。ちょっと前に読んだ、福岡博士の模式図『ベルクソンの弧』をイメージすると分かりやすかった。
P196
また商談の「手離れのよさ」についても発想が正反対である。物売り的な発想では、商談の手離れをよくして効率的に数を多くこなしたいと考えるのに対して、ソリューションビジネスにおける「手離れのよさ」というのは「顧客接点が少ない」ことを意味し、むしろ「手離れが悪く」いつまでも顧客接点が残ることを歓迎する。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
会社の老化現象
・ルールや規則の増加
・部門と階層の増殖
・手段の目的化
・顧客意識の希薄化と社内志向化
・社内政治家の増殖
・人材の均質化、凡庸化
人間の心理の非対称性
・変化に抵抗し、それまでの習慣に固執する
・一度得たものは簡単に手放せない
・期待値ではなく、リスクの大きさに反応する
・縄張り意識をもつ
・知れば知るほど近視眼的になる
・自分中心に考える
老化が進むのは、同じパラダイムの組織が生き続けている場合だけである。
老化した組織においては、イノベーターは存在しても活用されないばかりか、異端児として迫害され、行き着く先は牙を抜かれた普通の人になって埋没するか、転職するか
「敵を作りたいと思うなら、何かを変えようとすることだ」byウィルソン米大統領
会社の成長につれて仕事は標準化され、属人化した仕事は悪とされるようになり、誰がやってもほとんど同じ結果になるような仕事のやり方が推奨される
イノベーターは常に孤独と戦わなければならない
世界を変えるのは未熟と非常識 -
前の会社に感じた嫌悪感が会社の老化という表現で体系的に言語化されていた。
頑張れば何とかなると思って耐えてた時期もありましたが、最終的には老化した会社から脱出しました。
まぁ、自分がイノベーターとは思っていませんが… -
第1章 会社という名の不可逆プロセス
会社の営みは「老化との戦い」である
会社にも「子供」「大人」「老人」がある
第2章 老化した会社の「止められない」症候群
数の増殖は止められない
細分化の流れは止められない
第3章 老化を加速させる大企業のジレンマ
ブランド力を高めれば社員の依存心は増す
組織化すれば付加価値が失われる
第4章 会社の老化がイノベーターを殺す
多くはアンチイノベーターである
老化すれば社内政治家が増える
第5章 何がパラダイムシフトを阻むのか
会社はなぜか老化と世代交代を前提としていない
負債化した「常識」が会社の変革を妨げる
第6章 組織の宿命をどう乗り越えるか
無駄な抵抗はやめて運命を受け入れる
不可逆プロセスを遅らせる方策をとる -
【書評】会社の老化は止められない
エンタープライズ企業へのアプローチに対しても非常に有効な考え方。
- [ ] 「全体最適を考えよう」というのは、口では簡単だが、一度部分最適の味を知ってしまった人の後戻りは難しい。全体最適とは一般に部分最適の積み上げではなく、「部分非最適」とセットのものだからである。
- [ ] 「データに基づく分析」というのも取り扱いに注意が必要な曲者。データが取れるのは基本的に「すでに起こったこと」でしか無いからである。当初の目的が「過去のデータから将来を予測する」ものであっても、世の(そして老化した会社の)圧倒的多数を占めるアンチイノベーターはそうは考えずに「過去のデータ」にとらわれてしまう。
- [ ] 世の中の人を「知識・経験の有無」と「創造性の有無」で4象限に分類。イノベーターの足を引っ張るのは、必ずしも発言力の弱い人ばかりではなく、むしろエスタブリッシュメントに所属している、「知識と経験はある創造性の無い人」であることが多い。 -
【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 会社という名の不可逆プロセス(会社の営みは「老化との戦い」である/会社にも「子供」「大人」「老人」がある ほか)/第2章 老化した会社の「止められない」症候群(数の増殖は止められない/細分化の流れは止められない ほか)/第3章 老化を加速させる大企業のジレンマ(ブランド力を高めれば社員の依存心は増す/組織化すれば付加価値が失われる ほか)/第4章 会社の老化がイノベーターを殺す(多くはアンチイノベーターである/老化すれば社内政治家が増える ほか)/第5章 何がパラダイムシフトを阻むのか(会社はなぜか老化と世代交代を前提としていない/負債化した「常識」が会社の変革を妨げる ほか)/第6章 組織の宿命をどう乗り越えるか(無駄な抵抗はやめて運命を受け入れる/不可逆プロセスを遅らせる方策をとる ほか) -
ビジネス
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会社の「老化」を「不可逆プロセス」と捉え、その構造を物理的側面と心理的側面から分析する本書。
会社の老化をヒトの老化に例えつつ、類似点・相違点を踏まえて解説する点も面白い。
「資産の負債化」などは、最近めっきり体脂肪が気になるお年頃の私にとっては、たいへん身近な話(笑)。
本書曰く、「成長」=「老化」。
本書では老化が主題であり、そのネガティブな面がフォーカスされています。
一方でその裏には「成長」がある。
「成長」のメリットを享受しつつ、「老化」現象として現れるデメリットを如何に抑制・管理できるか。
そのバランス感覚が大切ですね。