会社の老化は止められない――未来を開くための組織不可逆論

著者 :
  • 亜紀書房
3.82
  • (18)
  • (29)
  • (14)
  • (2)
  • (4)
本棚登録 : 258
感想 : 38
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750513058

作品紹介・あらすじ

『「地頭力」を鍛える』(東洋経済新報社)の細谷功の最新刊!!

会社は人間と同様、生まれた瞬間から老化の一途をたどり、決して若返ることはない。
老化がはじまると、定例会議やルールが増え、スタンプラリー(承認印回覧)が始まる。
見えない未来よりも、わかりやすいコストやリスクばかりが論じられる。
折衷案と多数決で物事が決まり、アイデアと人材は凡庸化する。
手段の目的化が進み、ルーチンワークがクリエイティブワークを駆逐する。
社内評論家・社内政治家が増殖し、イノベーターが迫害される。
この絶望的な老化現象を乗り越える解決策とは?

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 会社組織を生き物のアナロジーで分析するのは、よくあるアプローチだと思いますが、本著では、「エントロピーは増大する」という自然科学の大原則から演繹的に組織論を考察する様が、知的で面白いです。ちょっと前に読んだ、福岡博士の模式図『ベルクソンの弧』をイメージすると分かりやすかった。

    P196
    また商談の「手離れのよさ」についても発想が正反対である。物売り的な発想では、商談の手離れをよくして効率的に数を多くこなしたいと考えるのに対して、ソリューションビジネスにおける「手離れのよさ」というのは「顧客接点が少ない」ことを意味し、むしろ「手離れが悪く」いつまでも顧客接点が残ることを歓迎する。

  • 会社の老化現象
    ・ルールや規則の増加
    ・部門と階層の増殖
    ・手段の目的化
    ・顧客意識の希薄化と社内志向化
    ・社内政治家の増殖
    ・人材の均質化、凡庸化

    人間の心理の非対称性
    ・変化に抵抗し、それまでの習慣に固執する
    ・一度得たものは簡単に手放せない
    ・期待値ではなく、リスクの大きさに反応する
    ・縄張り意識をもつ
    ・知れば知るほど近視眼的になる
    ・自分中心に考える

    老化が進むのは、同じパラダイムの組織が生き続けている場合だけである。
    老化した組織においては、イノベーターは存在しても活用されないばかりか、異端児として迫害され、行き着く先は牙を抜かれた普通の人になって埋没するか、転職するか

    「敵を作りたいと思うなら、何かを変えようとすることだ」byウィルソン米大統領

    会社の成長につれて仕事は標準化され、属人化した仕事は悪とされるようになり、誰がやってもほとんど同じ結果になるような仕事のやり方が推奨される

    イノベーターは常に孤独と戦わなければならない

    世界を変えるのは未熟と非常識

  • 前の会社に感じた嫌悪感が会社の老化という表現で体系的に言語化されていた。
    頑張れば何とかなると思って耐えてた時期もありましたが、最終的には老化した会社から脱出しました。
    まぁ、自分がイノベーターとは思っていませんが…

  • 第1章 会社という名の不可逆プロセス
    会社の営みは「老化との戦い」である
    会社にも「子供」「大人」「老人」がある

    第2章 老化した会社の「止められない」症候群
    数の増殖は止められない
    細分化の流れは止められない

    第3章 老化を加速させる大企業のジレンマ
    ブランド力を高めれば社員の依存心は増す
    組織化すれば付加価値が失われる

    第4章 会社の老化がイノベーターを殺す
    多くはアンチイノベーターである
    老化すれば社内政治家が増える

    第5章 何がパラダイムシフトを阻むのか
    会社はなぜか老化と世代交代を前提としていない
    負債化した「常識」が会社の変革を妨げる

    第6章 組織の宿命をどう乗り越えるか
    無駄な抵抗はやめて運命を受け入れる
    不可逆プロセスを遅らせる方策をとる

  • 【書評】会社の老化は止められない

    エンタープライズ企業へのアプローチに対しても非常に有効な考え方。

    - [ ] 「全体最適を考えよう」というのは、口では簡単だが、一度部分最適の味を知ってしまった人の後戻りは難しい。全体最適とは一般に部分最適の積み上げではなく、「部分非最適」とセットのものだからである。
    - [ ] 「データに基づく分析」というのも取り扱いに注意が必要な曲者。データが取れるのは基本的に「すでに起こったこと」でしか無いからである。当初の目的が「過去のデータから将来を予測する」ものであっても、世の(そして老化した会社の)圧倒的多数を占めるアンチイノベーターはそうは考えずに「過去のデータ」にとらわれてしまう。
    - [ ] 世の中の人を「知識・経験の有無」と「創造性の有無」で4象限に分類。イノベーターの足を引っ張るのは、必ずしも発言力の弱い人ばかりではなく、むしろエスタブリッシュメントに所属している、「知識と経験はある創造性の無い人」であることが多い。

  • ふむ

  • 【目次】(「BOOK」データベースより)
    第1章 会社という名の不可逆プロセス(会社の営みは「老化との戦い」である/会社にも「子供」「大人」「老人」がある ほか)/第2章 老化した会社の「止められない」症候群(数の増殖は止められない/細分化の流れは止められない ほか)/第3章 老化を加速させる大企業のジレンマ(ブランド力を高めれば社員の依存心は増す/組織化すれば付加価値が失われる ほか)/第4章 会社の老化がイノベーターを殺す(多くはアンチイノベーターである/老化すれば社内政治家が増える ほか)/第5章 何がパラダイムシフトを阻むのか(会社はなぜか老化と世代交代を前提としていない/負債化した「常識」が会社の変革を妨げる ほか)/第6章 組織の宿命をどう乗り越えるか(無駄な抵抗はやめて運命を受け入れる/不可逆プロセスを遅らせる方策をとる ほか)

  • ビジネス

  • 会社の「老化」を「不可逆プロセス」と捉え、その構造を物理的側面と心理的側面から分析する本書。

    会社の老化をヒトの老化に例えつつ、類似点・相違点を踏まえて解説する点も面白い。
    「資産の負債化」などは、最近めっきり体脂肪が気になるお年頃の私にとっては、たいへん身近な話(笑)。

    本書曰く、「成長」=「老化」。
    本書では老化が主題であり、そのネガティブな面がフォーカスされています。
    一方でその裏には「成長」がある。
    「成長」のメリットを享受しつつ、「老化」現象として現れるデメリットを如何に抑制・管理できるか。
    そのバランス感覚が大切ですね。

  • いわゆる大企業病とは、企業が老化することで現れる様々な症状のことであり、老化すると発症する具体的な病状や、そのメカニズムについて「人の老化」を引き合いに出しながら解説した一冊。老化することが不可逆的で避けられない以上、その事実を受け入れた上で、無駄な若返りの抵抗(=老害)をするのではなく、意図的に世代交代を図っていかなければならないというくだりは、とても納得。企業勤の方はぜひ読んで理解をしておくと良い内容だと思います!

    ・人間は老いるのに、企業は老いしらずで成長し続けるという幻想が、マネジメントを見誤ることに繋がる。

    ・企業の老化を脱するには、老化を受け入れ、世代(パラダイム)を意図的にリセットし、眠れるイノベーターを活用すること。

    ・会社の営みとは老化との戦いともいえる

    ・身に付けてきた常識が、現状変化を拒む負の資産となるタイミングがくる。

    ・不可逆プロセスにおいて、複雑性はのこぎり状で増加する。

    ・敵を作ろうと思ったら、何かを変えようとすることだ。

    ・状態よりも変化の方が優位

    ・思考停止とは上位概念で考えられなくなること。下位概念⇔上位概念:「主観⇔客観」「手段⇔目的」「部分⇔全体」「具体⇔抽象」。

    ・減点主義がルーチンワーク増大を産む。

    ・自社の社長と得意先と、どちらのミーティングを優先するかが、会社の若さを図る指標になりうる。

    ・目に見ないものを想像する創造力の欠如

    ・超優良企業の特性の1つは物事を単純化することの大切さを熟知していること

    ・スタンプラリーは承認責任を希薄化させる。

    ・リモコンボタンの増殖は止められない。顧客が求める機能を超えた機能開発に奔走する。

    ・部門や階層は目的達成のための手段に過ぎないが、手段が目的化され、縄張り主義と、権威主義が横行する。

    ・過剰な体脂肪の温床になる

    ・ほうれんそうのほうれん自体は価値をうまない。手段が目的化

    ・オレはきいてないは、言っても価値がないと思われていること、役割を全うできてないことを、自ら晒していることに気付かない。

    ・規則遵守は残すことが目的となり、その規則遵守が生み出す価値の議論は置き去りにされる。

    ・規模の経済に、規模の不経済が隠れる

    ・性善説から性悪説への流れ、ルール規則の増加は止められない

    ・批評家は「全体」の責任を負って前に出て行動している人にたいして、自分の得意領域の「部分」に絞って戦いを挑めるため、ほぼ勝利をおさめることができる。

    ・評論家でいれば、加点は狙えないが減点は避けられる。

    ・言いだしっぺが得をすると考える損をすると考えるかが、組織の老化を図るバロメーターになる。

    ・ブランドを磨けば磨くほど、ブランドに依存する受け身社員が増える。ブランドを築くために働くか、出来上がったブランドの下で働くかは、正反対。ブランドのジレンマ。

    ・大企業に勤めるとは電車にのることに似ている。あなた自身が時速100kmで走っているのか。あなたは時速100kmで走っている電車にただ乗っているだけなのか。

    ・「多様な評価主義+加点主義=人材の多様化」⇔「多様な評価主義+減点主義=人材の凡庸化」

    ・凡庸化すると、自分よりレベルの低い人を採用しようとし、レベルダウンのスパイラルにはまる。

    ・効率化のもとに外注を進めることは、口は出すが手足は動かさない、まさに老化現象のはじまり。それでも初期のころは、手足のうごかし方を理解して外注しているが、そのうち、手足のうごかし方を知らないのに、外注先をコントロールするという悲劇が生まれる。

    ・間違えるかもしれないが、思い切った意思決定をするか、間違えるリスクは低いが過去踏襲の凡庸な意思決定をするか。

    ・M&Aは複雑さを増す。異なるものを混ぜることで価値は下がる。500円のビールと500円のワインを混ぜたら、1200円の飲み物になるか。

    ・イノベーターは誰が「信頼」できるかを重視し、オペレーターは誰が「担当」かを重視する。

    ・成功の反意語は、失敗ではなく、何もしないこと。

    ・時期尚早は、アンチイノベーターの常套文句、逃げ口上。時期尚早なんて

    ・常識の囚人(イノベーターから見たアンチイノベーター)vs宇宙人(アンチイノベーターから見たイノベーター)。

    ・根回しができるイノベーターは、根回しができる子供みたいなもので、それ自体が自己矛盾である。

全38件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

細谷功(ほそや・いさお):1964年生まれ。ビジネスコンサルタント、著述家。問題発見・解決や思考力に関する講演や研修を国内外で実施。『仕事に生かす地頭力』(ちくま文庫)、『地頭力を鍛える』『アナロジー思考』(共に東洋経済新報社)、『具体と抽象』(dZERO)、『思考力の地図』(KADOKAWA)等著書多数。

「2023年 『やわらかい頭の作り方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

細谷功の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×