改革派首長はなにを改革したのか

著者 :
  • 亜紀書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750514109

作品紹介・あらすじ

米大統領より大きな権限を持った自治体首長の暴走を止めよ!

人事・予算・立法-すべてに巨大な力を持つ権力者が”改革”の名で地方自治を停滞させている。
経済面の貢献度から、首長の仕事をつぶさに検証し、あるべき地方行政の姿を提示する。

感想・レビュー・書評

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  • 本書は、元自治官僚の行政学者である著者が、いわゆる「改革派首長」が何を改革しようとし、その結果何を残したのかについて検証を行うという趣旨の本である。改革派首長に対する過剰な期待へ警鐘を鳴らすことが本書執筆の目的と著者も言っているように、本書は改革派首長全般に対してかなり批判的な論調である。改革派首長の就任前後で、その地域の経済状況はどうなったかについて県民所得の順位の推移を活用して分析しているのが特色である。
    取り上げられた「改革派首長」は、革新自治体から始まり、橋本大二郎、青島幸雄、横山ノック、北川正恭、石原慎太郎、浅野史郎、増田寛也、片山善博、田中康夫、東国原英夫、中田宏、橋下徹、河村たかしといった面々で、いわゆる改革派首長と呼ばれた首長を大体網羅している。その点で、改革派首長の来歴を簡潔にまとめた資料として本書は有益である。
    「改革派といわれる首長がどれだけ本当の意味で改革を成し遂げたのか、これまで検証が行われてこなかった」という著者の問題意識はまさにそのとおりだと思うし、
    「改革が手段ではなく、それ自体が目的となっているのが昨今の状況」という著者の憂慮にも首肯すべきものがあるが、全般的に、本書の改革派首長に対する批判は印象論の域を出ていないような気がした。
    唯一のデータを用いた分析が、改革派首長の登場によって地域経済は好転したのかを、県民所得のランキングの推移で評価するものである。その分析により、著者は、「結局のところ、改革派首長の多くは、目立った割には地域の将来につながる「投資」をあまり行っておらず、単なる清涼剤の役割しか果たしていないことが明らかになった。」と結論付けている。確かに県民所得の順位を上げるという点では改革派首長の成果はあまり見られなかったのかもしれないが、県民所得の絶対水準ではどうなのか(順位が下がったとしても絶対水準が確保できていればよいのではないか)という点や、首長の政策は多種多様なのに、これでは企業誘致等の県民所得に直接つながる政策しか評価できていないのではないかといった疑問点もあり、実証分析としては雑ではないかという印象をぬぐえなかった。特に、三重県は、北川知事の改革を経て、県民所得の順位を18位から9位に上げているのに、もともと地の利があった割には潜在能力を発揮していないとか、現在の三重県庁に北川イズムはほとんど残っていないなどと指摘し、北川知事も成果を上げたとはいえないような記述をしているのは、牽強付会としか言えないと思う。著者は、北川知事時代に三重県財政課長を務めていたそうだが、個人的な恨みでもあったのだろうか。

  • 大阪やら宮崎やらにいた改革派首長たちについての本
    ”改革が手段ではなく、目的になっている”には強く同意
    故に改革派首長の多くが結果(県民所得の向上)を達成できていないそうです

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著者プロフィール

1962年生まれ。北海道出身。東京大学工学部卒。博士(学術)。自治省、香川県企画調整課長、三重県財政課長、東京大学教養学部客員助教授、新潟大学法学部教授・学部長を経て、現在は長野県立大学グローバルマネジメント学部教授。専門は行政学、地方自治、公共政策。著書には『暴走する地方自治』『地方都市の持続可能性』(どちらも、ちくま新書)、近著に『公立大学の過去・現在そして未来』(玉川大学出版部、2021年)など多数。

「2022年 『自治体と大学 少子化時代の生き残り策』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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