意識はいつ生まれるのか――脳の謎に挑む統合情報理論

  • 亜紀書房
4.03
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本棚登録 : 708
レビュー : 64
  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750514505

作品紹介・あらすじ

NHKスペシャル『立花隆 臨死体験』出演の天才脳科学者、初の翻訳!

脳は意識を生み出すが、コンピューターは意識を生み出さない。では両者の違いはどこにあるのか。クリストフ・コッホが「意識に関して唯一、真に有望な基礎理論」と評した、意識の謎を解明するトノーニの「統合情報理論」を紹介。わくわくするようなエピソード満載でわかりやすく語られる脳科学の最先端、待望の翻訳!

【本書が挑む脳科学最前線の脅威の事例】

・脳幹に傷を負い植物状態に見えるロックトイン症候群患者(映画「潜水服は蝶の夢を見るか」の主人公)。彼らの意識の有無はどう診断すればいいのか?

・麻酔薬を投与するとなぜ意識が失われるのか?
 麻酔時に意識が醒めてしまうとどうなるのか(1000人に1人はそうなる)

・右脳と左脳をつなぐ脳梁を切断する(スプリットブレイン。てんかん治療で行われることがある)と、1つの脳のなかに意識が2つ生まれる!?

感想・レビュー・書評

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  • とても分かり易く、そして面白い!!
    意識の尺度として、情報の多様性と統合が重要であるという統合情報理論は直感的にもしっくりくるし、実験的検証にも耐えられるということでエレガント。
    もっとも”いつ”意識が生まれるのかは分かっても”なぜ”意識が生まれるのかは未だ深い謎である。

  • タイトル通り「意識はいつ生まれるのか」をテーマにした本。著者の戦略は、まず意識の有/無を定義し、それぞれの場合の脳の状態を観測して差分を調べることで、意識が発生するための「脳の状態」に関する条件を探ろうとするものである。

    人間の脳のうち、小脳のニューロンが800億個と脳全体の半分以上が集まっているにも関わらず、小脳を取り除いても生命は維持できる上に意識も存在している。一方、大脳皮質には約200億個のニューロンしかないが、大脳皮質の障害は意識状態に大きな影響を与える。このことは、単にニューロンの数が意識を生み出しているわけではないことを示している。また、睡眠状態の脳の活動の量を測定すると、ほとんど覚醒時のそれと変わらない。一方、TMS (Transcranial magnetic stimulation: 経頭蓋磁気刺激法)により直接的に脳内のニューロンを刺激した反応は睡眠時と覚醒時は大きく違っており、睡眠時は同期した単調な反応しか生じないのに対して、覚醒時のそれは非同期な複雑な反応をするという。著者は、この違いが「意識がいつ生まれるのか」を判定するために非常に重要なものであるとする。

    著者らは、このような近年得られた知見をもとに、「ある身体システムは、情報を統合する能力があれば、意識がある」(p.111)という仮説を提唱し、これを「統合情報理論」と名付ける。彼らはシステムの統合度と複雑性を表す数値をΦと定義し、それを「ある物理的システムがあらゆる方法で揺さぶられたとしたら、どのような反応をしうるか、を表す数値である」(p.270)と定義する。そして意識レベルを表すこの値は「脳が潜在的に持つ選択肢の数によって左右される」(p.270)とし、その数を測定することで判定が可能だとする。もちろん、この値を現時点で直接的に測定することはできない。しかし、著者らはそれを将来的には測定し客観的に比較することが可能な数値であるとしている。そのことで、動物に意識はあるのか、コンピュータは意識を持つことができるのか、といった問いを数字的に測定可能な問いに置き換えることができるとしている。

    この本に対する批判があるとすれば、著者らが提唱する情報統合理論におけるこのΦの測定可能性が、少なくとも本書の中では「一連の複雑な計算プロセスを経る必要がある」とするだけで明確ではないことだろう。「外側から観察するだけでは不十分」で「あらゆる方法でシステムに揺さぶりをかけるだけでなく、情報がいろいろな構成要素によってどの程度共有されているかも調べなければならない」としているが、このような「あらゆる」という仮定を導入しなければならないものが自分にはそれが測定可能であると思えない。これらの疑問は、専門的な研究論文などでは言及され、解消されているのだろうか。 また、何ゆえにΦの値が意識レベルを表すものであるのかの根拠が弱い(ほとんどない)という問題も挙げることができる。「『意識とは何か』という哲学的な問いには答えない」としているからといって、その疑問に答えなくても、彼らの主張が成立することを説明しなくていいということにはならない。

    繰り返しになるが、本書は「意識がいつ生まれるか」について説明するものであり、「意識とは何であるか」を説明するものではない。そこに物足りなさを抱くこともあるかもしれない。
    本書では、脳梁を切断したときに、どうやら二つの個別の意識があるらしいことや、脳の局所的反応から意識生成までに0.3秒~0.5秒かかることを説明している。これらの事実は、意識が情報の統合から生まれるという仮定と合致するものである。いずれにせよ、この辺りの知見は近年の脳を測定する技術が進展したことの成果である。技術の進化はつい最近のことであり、かつ発展途上でもあるため、「意識とは何か」ということに関してもまだまだこの先にも新しい話はありそうだ。

    なお、第一章から第九章までを第五章を中心にして、前半四章で階層的に出される問題に対して、後半四章でミラーにして回答をするような構成になっているが、その工夫の効果はいまいち感じられなかった。期待していたものに対しては少し十分なものではなかったのかな。

  • 手のひらに乗るくらいの大きさの物質である脳に、どのようにして意識が宿るのかを説いた本。
    進化の系統的にどの段階で意識が発生したのかや、人間の成長のどの段階で意識を持つのか、を説明しているわけではない。実はそう思って読み始めていた。実際のところは、意識が生まれるためにはどのような条件を満たせばよいか、が近い。
    そして、その答えを導くのが「統合情報理論」である。重要なのは、情報に多様性があり、なおかつ全体が統合されているという、そのバランスである。それをΦという単位で表している。小脳はシナプスが非常に多く多量の情報を扱うことができるが、全体として統合されておらず、意識を宿すことはない。心臓は統合されたシステムだが、単純なパルスを刻むだけで、情報量は少ない。当然、心臓には意識はない。
    今のところ、Φが大きいシステムとなっているのは、大脳の視床皮質である。
    興味深いポイントは、Φは連続量であるため、意識がある/ないの境界をはっきり分けることはできないということ。覚醒した人間のΦは大きいけれど、寝入る寸前や、麻酔から覚醒する過程などはΦが小さい。乳幼児のΦも小さいのかもしれない。サルやイルカやイヌやネコは人間と同じ言語が使えないというだけで、高いΦを持っているのかもしれない。昆虫にも意識があると言えるのかもしれない。
    統合情報理論はまだ確固たる裏付けはないらしいが、世界の見方をちょっと変えることができた。

  • 本書のテーマは「意識」。筆者は「意識」の発生に関する仮説を提示します。意識は豊富な情報を扱う統一されたシステムに発生する。と。人間でいうと大脳皮質がそのシステムに当たります。意識の性質としての統合性というのはとても肚に落ちるものでした。「部屋が暗い」というときに、光センサーと違って人間はただ光量を判断しているわけではなく、常に「青くない」「目をつぶっていない」「・・でない」と無数の可能性を潰す作業を高速で行っていると。
    しかし筆者の示す条件だけであれば、意識のある機械が既に存在していてもおかしくない気がします。高性能な機械が大量の情報をフルに連関させて答えを出す。その場合、機械には意識があると言えるのかどうか?AI理論の本と合わせて読みたい一冊です。

  • 「意識」というものに対しては、小さい頃からずっと不思議に感じている。
    「意識=自分=人生そのもの」のように思ってきた。

    意識って何なんだろう?
    サルや猫や魚や虫に意識はあるのか?
    どこまであってその境界は?
    死んだら意識はどうなるのか?
    肉体と意識は分離できるのか?本当に一体のものなのか?
    死んでも意識が残るということは不可能なのか?
    意識をコピーできないのか?
    などなど…

    ほぼ半世紀生きてきたが、意識に対するクエスチョンマークは一向に減ることはない。この間、ニューロンやシナプスの構造や働きが解剖学的・生理学的に解明されてはきたが、意識の謎は解明されない。

    しかしこの本は少し手がかりが見える。
    特に植物状態や昏睡状態に陥っている人の意識の問題は深刻で、かつ示唆に富んでいる。それは、意識のある状態とない状態の境界に位置する問題だからだ。

    情報量と伝達の構造と多様性(複雑性)が鍵になる。
    これは組織の在り方や人間社会の在り方のヒントにもなる。

  • 「明るい」と言うとき、あらゆるパターンの「明るくない」を捨てている。つまり、私たちはモノゴトの意味を複雑で多様な情報を統合することで理解する。これはとても示唆に富む。
    私は「私」をはあらゆる可能性の「私ではない」私だと理解している。

  • 「意識はいつ生まれるか」というタイトルではあるが、全体
    として「意識があるということをいかにして測定するか」と
    いう内容だったように思う。多様性と統合によって意識が
    生じる、そしてそれを測定することが可能である、という
    ことはよくわかるし、面白い内容だとは思う。読み応えの
    ある素晴らしい著作ではあるのだが、多様性を保ちつつ
    それを統合することによってなぜ意識が生まれるのか、
    そしてそもそもその「意識」とは何かということについては
    何も述べられていないので、もどかしさも感じてしまった。

  • 視床ー皮質系に意識を司るニューロンがあるという。小脳の4分の1ほどしかないが、小脳が反応に対して1対1対応であるのに対し、視床ー皮質系は相互に「コミュニケーション」を交わし、統合的反応として対応するという点で「意識的」とされる。また、「(自立的)意識が失われる(陰を潜める)深睡眠」において外界との反応が単純化されることから、たとえば植物人間のように、身体的な反応がなくてもい「意識はある」という診断が可能だと説く。本書は脳科学的には興味深いが、では視床ー皮質系の統合的なニューロンの反応がどのように意識と関わるのか? なぜ意識は生じるのか? については言及していない。ともあれ、「宇宙のはじまりがビッグバンだとして、そこにあるのが物質的要素に限られるのであれば、意識は、これとは無関係に存在するのかもしれない」という考え方は興味深かった。

  • ”意識”というものをどうやって測るのか?
    この難題に様々な理論、臨床試験を経て迫っていく過程を分かりやすく解説する。

    普段意識することは無いが、わずか1.4キロの物体である脳がこの”我”の思考、記憶、全てを司っているかと思うと不思議な感覚になる。
    特に覚醒時、睡眠時、植物人間などの明確な違いを様々な方法で浮き彫りにしていく過程は面白かった。
    こういう、最先端の脳科学や医学を分かりやすく書いてもらうと全く専門知識が無くても色々知ることが出来て有難い。

  • サイエンス

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著者プロフィール

精神科医、神経科学者。ウィスコンシン大学精神医学科教授。睡眠と意識についての世界的権威。著書に、Phi: A Voyage from the Brain to the Soul.(Random House LLC, 2012)、A Universe of Consciousness: How Matter Becomes Imagination.(ジェラルド・エーデルマンとの共著、Basic Books,2000)などがある。

「2015年 『意識はいつ生まれるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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