森は考える――人間的なるものを超えた人類学

  • 亜紀書房
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本棚登録 : 173
レビュー : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (494ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750514628

作品紹介・あらすじ

南米エクアドルのアマゾン河流域に住むルナ人にとっては、森は考
え、イヌは夢を見る。彼らがそう考えているというのではなくて、そう
したものでしかありえない世界を彼らは生きている。「森が考える」
とき、人間と動物、人間と世界、生者と死者は新たな関係を結ぶ。
発表と同時に欧米の人類学会でセンセーションを巻き起こしグレ
ゴリー・ベイトソン賞を受賞した注目のエスノグラフィー、ついに翻
訳なる。
人類学、哲学、文学、言語学、環境学、生態学、生命論などの諸領域
を縦横に接続し、インゴルド、ヴィヴェイロス・デ・カストロを凌ぐ、
来たるべき知の衝撃!

感想・レビュー・書評

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  • 思索

  •  人類学者でマギル大学(カナダ)准教授の著者が、南米エクアドル、アマゾン川上流域の森に住むルナ族に対して行ったフィールドワークを元にしたエスノグラフィー(民族誌)である。著者は本作によって、2014年のグレゴリー・ベイトソン賞を受賞している。

     単純に事実を記録した部分は、たいへん面白い。たとえば――。

     ルナ族は著者に対して、“外で寝るときには必ず仰向けに寝ろ!”とアドバイスをする。なぜなら、ジャガーに出くわしたとき、うつぶせに寝ると餌食だと思われるが、仰向けだと視線を合わすことでジャガーは放っておいてくれるから、と……。

     また、ルナ族は森で狩りをするときの獲物を、「森の主」(精霊)の家畜を主が分け与えてくれるものだと考える。だから、ときどき森に対して、木のうろに詰め込むなどして「貢ぎ物」をする。

     ルナ族は、飼い犬にどうしても言うことを聞かせたいとき(家畜の鳥を犬が噛むなどの「悪事」をしたとき)、薬草から抽出した幻覚作用のある汁を無理やり飲ませ、朦朧としたところで言い聞かせる(ドイヒー)。

     ……などという話が随所にあって、興趣尽きない。
     五十嵐大介の連作マンガ『魔女』に、アマゾンの熱帯雨林を舞台にした素晴らしい一編があったが、ちょうどあの作品のような面白さだ。

     ただ、事実をふまえて著者が考察している部分は、原文のせいなのか訳のせいなのか、非常にわかりにくい。正直なところ、何が言いたいのかさっぱりわからない。
     適当に一節引いてみよう。

    《生命がアマゾニアにて織りなす多くの層は、これらの人間的な記号過程の編み目よりも大きなものを増幅し、はっきりとさせる。その森が私たちを通じてそのありようを思考するのに任せるならば、私たち自身もまた常に何らかの仕方でいかにそのような編み目に編み込まれているのかを、そして、この事実と一緒にいかに概念的な作業をすることになるのかを、見定めることができよう。》

    《私たちをかたちづくるこの〈私たち〉が、いかに到来する布置のうちに多くのたぐいの存在を組み入れることができる創発する自己なのかを考えてみれば、こうしたことにはまさしく真実味があることがわかるだろう。私たち人間は、私たち自身を生み出し永続させるような多様な非人間的存在から、生み出されたものである。》

     著者の思索を記した部分は、全編こんな調子なのである。
     優れた作品なのかもしれないが、私の手には余った。

  •  アマゾニア(エクアドルの森林)の中で生きる人(ルナ)の民族誌であるが、非常に示唆的である。基本的に、「人間的なものを越えた人類学」を提唱している。ジャガーが人間をどうみるかとか、イヌをどのように説得するのかとか、死後どうなるのかとか、要するに、人間以外のものとの境界を越えていく人類の営みに焦点があたっている。このなかでパースの記号論(記号=思考=生命)がひかれ、それ自体で成立する「形式」(川の渦のようなもの)とか、人間が人間以外のものとの関係のなかで自己を決めていくということが書かれている。
     アニミズムは中国の古典を読むにも大事な要素だと思う。『論語』の「礼」とか「孝」に関する議論はこういうところからでているのだろう。ジャガーに「肉」とみられないために「まなざしを返せる」仰向けで寝るところなどは、『荘子』のカマキリがセミをねらう話しを思いだした。イヌが夢をみたり、嘘をついたりすることは、イヌを飼っている人にはよく分かると思う。
     動物行動学については、道徳を人間独自のものであることを前提としていて、少し不十分ではないかと思う。ドゥ・ヴァールの『共感の時代へ』とか『道徳性の起源』などの成果と組み合わせてほしいと思う。

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784750514628

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著者プロフィール

1968年生まれ。マギル大学人類学部准教授。グレゴリー・ベイトソン賞受賞(2014年)。

「2016年 『森は考える』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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