- Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
- / ISBN・EAN: 9784750514833
作品紹介・あらすじ
ふれる、聞く、愛する、憎む……
悲しみの先に広がる
25の風景
NHK「100分de名著」(9月)著者出演!
『悲しみの秘儀』に続き魂の思想家が贈るエッセイ集!
生きていればときに闇の中を歩かなくてはならないことがある。そうしたとき、私たちは、内なる言葉を、ともしびにしながら歩くことができる。言葉など、と思ってはもったいない。たった一つの言葉にも闇にある人を光へと導く力が宿っている。
(「祈る」より)
感想・レビュー・書評
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若松英輔さん、2冊目。若松さんの本をテレビで紹介されるのを聞くと、毎回とても絶賛されていて、尊いことが書かれてあるのだろうと自ずと期待が膨らんだ。
レビューもとても高評価ばかりなので、私の読解力が乏しいだけなのかもしれないけれど、想像していたほどには、私には響かなかった。大学の文学部の先生が書きそうな内容だな、とか、仏文学部に在籍していた大学時代、私もこういう感覚を大切にして、こういう観念的な文章を書いていたなと感じた。
全体を通してかなり観念的で、一見○○だが実は…だ、のようなパラドクス的な考え方、とか、実際には触れられない、見えないものなどを心の深いところで見つめ感じることが生きる意味であり喜びだ、という考え方がしばしば書かれていた。
薬草を扱う商いをしているということで、東洋的な感覚を突き詰めていることに合点がいった。
25の生きていくうえでかけがえのないことについて書かれているが、中でも「老いる」「耐える」「憎む」が良かった。
心に残った文…
○今に生きることなく過去、あるいは未来どちらかに大きく傾いている状態を不幸と呼ぶのかもしれない。74
○耐えるとは、人生が差し出すいくつかの逃れることのできない問いを、明確な答えのないまま、どこまでも愛そうとすることだ。99
○人はどんなに他の人を嫌いになっても構わない。しかし、決して憎んではならない。それはついに自らを傷つけることになる。114
○愛してその悪(短所)を知り、憎みてその善(長所)を知る115
今の自分は心が擦りきれすぎていて、若松さんの文が、きちんと読めていない可能性もあるなと自省した。
悲しみがなければ得られないことがある、と若松さんは一貫して訴えている。自分がよくベートーヴェンの音楽の表現について、「厳しさがなければ本当の優しさは出てこないのよ」なんてわかったふうに生徒さんに伝えていることは、これに少し似ているのかもしれない。
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果てのない暗闇を感じて、
なんでこんな人生歩まねばならないのかと思い続けていた。
悲しみや苦しさは、いつになったら消えていくのか。意味はあるのか。
悲しみがなければ、得られないことがあると、慰められました。困難は人生の恩籠になりうる。
私のこのどうしようもない人生も、意味を付けられそうです。最期にはきっと。それまで祈り続けます。 -
日常的に使う、食べる、眠る、悲しむ、祈る等25の動詞を主題としたエッセイ集。一つの言葉に対するエッセイはとても短いものですが、でも、深いのです。心に静かに染みいる何かを感じます。
私も著者もキリスト教の信仰をもっているせいかもしれませんが、彼の言葉を読む時によく想うのが聖書のヨハネによる福音書の1章「はじめにことばがあった。ことばは神とともにあった。ことばは神であった。」という一節。
それほど”ことば”というものは人には絶対に必要なのものだと感じます。
折に触れて読み返したい一冊です。 -
人からすすめられて読み出した本だったけど、それも全てこの本に呼ばれていたからではないかと思えた。
日々の営みについて、こんなに深く、広い懐をもって書かれたエッセイを、わたしは今までに読んだことがない。
「辛い時こそ、どの一篇でもいいから読んでみてほしい」という吉村萬壱の言葉どおり、少しでも心の器にはってある水面が揺れたら、読み返そうと思う。とても良かった。 -
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深い思索の後の言葉。考え続けることに意義がある。
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人は自然を十分に癒す力を有していない。それでも、世界を壊し続ける。
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生きることは、これまで己に紡がれた言葉を他者に共有する行為とも言える。
自分が郵便箱になって、脈々と受け継がれる意志を伝えていきたい。
気になった本は積読して読む時が来るまで待つとしよう。
大事な人の存在を理解し、金を切り離した働くの意味を考えよう。 -
2021I050 914.6/Wa
配架場所:A3 東工大の先生の本 -
日本語には「雨」を形容する言葉が多いのと同じように、若松さんの中には「悲しみ」を形容する言葉が幾通りもある。
買ってからしばらくして読み終えたのだけれど、まさに「待つ」の項で解説されるとは思わずびっくりした。「休む」「見つめる」など書くことに関する話に印をつけた。