フィフティ・ピープル (となりの国のものがたり 1)

  • 亜紀書房 (2018年9月27日発売)
4.14
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Amazon.co.jp ・本 (488ページ) / ISBN・EAN: 9784750515649

作品紹介・あらすじ

痛くて、おかしくて、悲しくて、愛しい。



50人のドラマが、あやとりのように絡まり合う。

韓国文学をリードする若手作家による、めくるめく連作短編小説集。



ものがたりの楽しさに満ちた、韓国小説の新シリーズ創刊!

みんなの感想まとめ

多様な人々の人生が交錯する物語が描かれています。50人以上の登場人物がそれぞれの短いストーリーを持ち、時にはすれ違い、時には再会する様子が魅力的に描かれています。韓国の首都圏を舞台に、日常の中での喜怒...

感想・レビュー・書評

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  • 面白かったです。
    著者があとがきに書いていますが、
    「主人公がいないと同時に、誰もが主人公である物語」
    と言う、変わった作品。
    50人全員が主人公で、一人ひとりのストーリーは数ページと、ごく短い。
    でも、みんなどこかですれ違っていて、読み進めていくと、
    あれ?この人はあの時の?
    さっき登場した人かな?
    と、あちこちに顔を出す。
    そんな発見も楽しい。

    舞台は韓国の首都圏のどこか、という設定です。
    日本との文化のちがい、社会問題なども、ごく普通の町の人々の生活から知ることができ、興味深かったです。

    • aoi-soraさん
      私も順番待ちだったけど、そんなに多くなかったよ(^^)v
      なおなおさんも是非〜♪

      でもね、読み終えるのに結構時間かかったよ。私はね(^.^...
      私も順番待ちだったけど、そんなに多くなかったよ(^^)v
      なおなおさんも是非〜♪

      でもね、読み終えるのに結構時間かかったよ。私はね(^.^;
      あれ?
      この人、どこに出てきたっけ?
      あ、これ、あの人だったのかー!
      とか、確かめたくて、前のページに戻って確認してたから(笑)
      あーもー、記憶力っ>⁠.⁠<
      2022/12/11
    • なおなおさん
      あおいさん

      なるほどー。
      あの人誰?この人いたっけ?どこにいた?…ってありますよね。
      あと韓国の小説は人物の名前が覚えられなくて。
      私も言...
      あおいさん

      なるほどー。
      あの人誰?この人いたっけ?どこにいた?…ってありますよね。
      あと韓国の小説は人物の名前が覚えられなくて。
      私も言わせて!記憶力っモォ…(。´>д<)ノ)))ペシペシ
      2022/12/11
    • aoi-soraさん
      そうそう
      韓国の人の名前!
      はっきり言って、男か女かも分からず混乱したり(笑)

      とりあえず、予約だね(⁠。⁠•̀⁠ᴗ⁠-⁠)⁠✧
      そうそう
      韓国の人の名前!
      はっきり言って、男か女かも分からず混乱したり(笑)

      とりあえず、予約だね(⁠。⁠•̀⁠ᴗ⁠-⁠)⁠✧
      2022/12/11
  • 50人ひとりひとりの物語。
    それぞれの人生の一小節のなかでほんの少し誰かと交わる瞬間がある。

    みんな自分を生きてるんだ。
    楽しいこともあれば死に直面する瞬間だったり恋人と別れたり仕事を辞めたり喧嘩したり映画見たり。

    あちこちに顔を出す登場人物に見覚えがあり、あの章で会ったな!って発見が嬉しい。
    実際51〜53人くらい登場してるなんて小話に笑った。

    作者が渋谷のスクランブル交差点で発想を得たなんて嬉しい話じゃないか。
    すれ違う人々はまたどこかで交わるかもしれないし、喜怒哀楽を活用してそれぞれの人生を生きているんだ。

  • 物語は韓国の首都圏のどこかにある大学病院にまつわる人々の話を集めたもの
    病院内が舞台ではなく、病院は空港のような一つのハブあり、そこに勤務する人々を含め病院を通過しながらお互いにすれ違い、影響を与え合っている

    そして、主人公はいない
    主人公がいないと同時に、登場人物全員が主人公
    その数「フィフティ・ピープル」50人!
    実際は51人だそうです…
    (著者が書きすぎたらしいですw)
    さらに、独立した章を持たずにあっちこちに出入りする人物もいるので、人数は52人、53人…と、数え方によって違ってくるらしいw

    最初は、面白く読んでいましたがさすがに50人オーバーはちょっと多すぎ…w
    半分の25人ぐらいは読んだかな(^.^;

    残念ながら返却日が来たので一旦図書館に返却します
    また借りることがあれば、あなたが何人目かはわかりませんが、「チェ・デファンさん」あなたの章から読み始めますねw

    • 1Q84O1さん
      その通りです!
      韓国人名前覚えれない…(^.^;
      50人もいたら覚えるつもりもないですが…w
      その通りです!
      韓国人名前覚えれない…(^.^;
      50人もいたら覚えるつもりもないですが…w
      2023/06/27
    • mihiroさん
      1Qさ〜ん、こんばんは(*^^*)
      登場人物50人!!笑
      私がこないだ読んだのも登場人物多すぎと思ったけど、軽く超えてきましたね〜笑ꉂꉂ(ᵔ...
      1Qさ〜ん、こんばんは(*^^*)
      登場人物50人!!笑
      私がこないだ読んだのも登場人物多すぎと思ったけど、軽く超えてきましたね〜笑ꉂꉂ(ᵔᗜᵔ*)
      しかも聞きなれない韓国名だと余計に訳分からなくなりそうかも(^_^;)
      また機会があれば!で次いっちゃいましよ〜♡♡
      2023/06/27
    • 1Q84O1さん
      mihiroさーん、こんばんはです♪
      そうなんです!50人!w
      そして名前ややこしい〜w
      ひとりひとりの章は短いですが、50人いると全ページ...
      mihiroさーん、こんばんはです♪
      そうなんです!50人!w
      そして名前ややこしい〜w
      ひとりひとりの章は短いですが、50人いると全ページは450ページオーバーだったかな…(^.^;
      (今回は最後まで読んでませんが…)
      さぁ、次行きますよー(`・ω・´)ゞ
      2023/06/27
  • 評判は聞いていたのに、後回しにしてた本。
    早く読めばよかったなと後悔するくらいよかった。

    韓国の出生率は0.8!結婚が遠いものとして捉えられている感じ、すごくよく伝わった。利益だけを求める不正直で杜撰な資本主義の利益優先の企業に所属して生き続けなければならない窮屈さも。
    ごく普通の人たち50人の日常の中で浮き出される韓国社会の抑圧ぶり。その断片が少しずつ集まり、韓国の社会を私たちは肌で感じることができる。
    日本も相当まずいことになっているが、韓国に住むのもなかなかしんどいことだなと感じる。分断されたこと、兵役があること、抑圧された負の歴史があること、家父長制から抜け出せないこと、新自由主義の価値観が極めて強いこと、学歴偏重主義が行き過ぎていること。(後ろ3つは日本も同じ)それらが複雑に絡み合って一人一人が翻弄されて極めて生きにくい世の中を形成している。
    しんどそう。日本よりはるかに。
    その中で、柔らかい心の人たちが傷つきながら、なんとかかんとかやっている。
    「ヒュナム洞書店」の中の人たちもそうだった。

    50人が少しずつ関係しあい、最後のシーンに繋がっていく。上手い手法だと思う。

    何度も泣けた。泣けるたびに、読んでよかったと思った。
    これはよい小説。
    韓国の女性作家は、しんどい状況だからこそか、頑張ってる。

  • 予約待ちした図書館本。面白かった。
    50人(正確には51人)全員が主人公で韓国、首都圏のある大学病院にまつわる人々の話を集めたもの。
    あちこちに出入りする人物がいる、ということで最終ページには人名索引があったので、読み始めから軽くメモを取ったのですが、20人でストップ、時間がかかりすぎて。
    しかし、助かった。韓国の方の名前は覚え難くて。

    自分に似たタイプの人はいませんでしたが、
    経営者で自分の名前が気に入らない、と名前を変えたソンミに好意を持つ。子連れのムン・ウナムと結婚し、娘のムン・ヨンニンとは実の母娘の様な関係、縁あった女性に仕事のパートナーにと格好よく誘う。先を見据えることのできるサバサバした女性。何度も登場したのでメモしてて良かった…
    そして、幼いチョン・ダウンくんの話は切ない。

    訳者のあとがきのように、病院内部でなくてコミュニティの中の病院、外から見える病院で繋がる物語が新鮮。
    知り合いのようにも思えてきますが、さすがに、この人数は時間をかけて読みました。
    映像化したら面白そうな予感。

  • YouTubeの『東京の本屋さん』というチャンネルの#木曜日は本曜日という企画で佐久間宣行さんが絶賛していたので、気になって読んでみた。

    韓国のとある大病院を舞台に、そこで働くスタッフや患者、彼らの家族、近隣に住む人々等、総勢51人の登場人物が織りなす群像劇短編集。

    51人もの大人物からなる群像劇なので、主人公としてのストーリーはほんの数ページだが、各章(登場人物同士)が連鎖的に繋がり、別の章では脇役として登場してくる人物もいる為、いろいろな視点からキャラクターを見つめることができる。
    また、2016年に韓国で起きた複数の事件が題材になっており、韓国の時事問題にも触れることができる。

    以下個人的に印象に残ったキャラクター。
    ・ハニョン、ジジ、イサクの交友関係が素敵。
    ・イジンの話(友人の子供の名前が思い出せない)はどこの国もあるあるなんだと思ったし、道中で過去のメッセージを読み返すリアルさにも親近感。
    ・ウソプの話(ソゲッティングの女神の話)についても、婚活事情は韓国も同じなんだなと思った。
    ・ハンナの司書の仕事、いいなと思った。
    ・へリョンのマニュアル好きな性格はすごく共感できた。
    ・ウナムの話とへリョンの話に出て来るソンミのさっぱりしたキャラクターがとても好き。本作の中で1番友達になりたいキャラクター。きっと同じように感じている読者も多いはずなのに、ソンミ視点での物語は無いというところもこの本の面白さだなと思った。

    最後に…
    短編で主人公が変わっていくとはいえ、ミステリーのように伏線回収やどんでん返しといった刺激、ワクワク感がない為、途中でやや失速気味に。最後は気合いでゴール。
    お隣の国でありながら、韓国には一度も行ったことがなく、文化や環境も違う為、なかなか深いところで共感することができなかったのが原因かなと思う。
    ただ、裏を返せば、韓国という国を知るファーストステップとして、本作はかなり馴染みやすい作品だったと思う。(あらゆる時事ネタが広く浅く取り上げられており、かつ短編なので)
    今流行りの韓国文学、気になるという人にはおすすめの一冊。

  • この本は、主人公がいない物語。韓国の首都圏のどこかにある大学病院に、なにかしら関わりがある人達、約50人の物語でした。

    それぞれの人物の生きざまが韓国の世情を表している部分もあり、とても興味深かったです。すべての人が、きっとどこかですれ違っているだろうなという感じも受けました。

    最終章の「そして、みんなが」を読み始めると、思わず声が出てしまうくらい驚きました。今まで読んできた人たちが、一気に繋がり、あの人は、この人は 、と先が気になり、ページをめくるのがすこし怖くもありました。

    あとがきでは、韓国社会の問題点なども詳しくかかれていました。まずは隣国のことをよく知ることから始めるのが、大切だと思いました。私達と変わらない問題もかかえているから、相互理解に役立つと思いました。

    また、この本の一人一人の顔のイラストが違うように、人は生き方も考え方も違います。でも、いざというときに持つ心構えは、同じであってほしいと思いました。そして、忘れずに伝えていくことの必要性を強く感じました。この物語の終わり方が教えてくれたことは、誰もがよく考えなければならないことだと思いました。

    読みごたえがあり、読んでよかったと心から思えた1冊でした。お薦めです。

  • 話題になってたので図書館で借りてやっと読めた。韓国の大病院やその近くに住む人たちの話。
    登場人物が少しずつ絡み合って、韓国の名前にあまり馴染みのない私には、誰がなにやらと少々混乱しつつも楽しく読めた。
    それぞれの話は短く、重い話もあるし、毎回特別な何かが起こるわけではないんだけど、それでもとても良かった。
    ラストはどう終わるんだろうと思ったけど、うまいことまとめられており良かった。
    手元に置いておきたい本かも。

  • 作者であるチョン・セランが日本に来た時に渋谷のスクランブル交差点を上から眺めて、その行き交う様子にインスピレーションを得て、「主人公がいない小説」、「お互いがお互いの人生と交錯している様子を書きたい」と感じて生まれた作品。
    「フィフティ・ピープル」とタイトルにあるが、実際には51人の名前が各章のタイトルになっている。
    その名前の人物は子どもから老人まで、外国人も含め、男女や同性愛者も出てきて、ソウルからは離れた郊外?の大学病院や、映画館が入った商業施設がある街を舞台に短い物語が描かれる。
    そういう意味では短編集と言えるが、読んでいるうちに、名前は語られないが、この章で描かれているこの人物の話は、前の章に出てきたこの人のことではないかとか、章と章が、人と人が、つながっている部分があることがわかってくる。
    終わりの方の章で、まだ若い医師に老年の医師が語る。
    「私たちの仕事は、石を遠くに投げやることだと考えてみましょうよ。
    ソ先生はスタートラインから投げているわけではないんだよ。私の世代や、そして、私たちの中間の世代が投げた石が落ちた地点で、それを拾って投げているんです。
    (中略)
    どんなに若い人にも、次の世代がいるのですから。しょせん私たちは飛び石なんです。だからやれるところまでだけ、やればいいんです。後悔しないように。」

    作者は母国で2014年に起きたセウォル号沈没事件に大きなショックを受けたという。
    事故の原因は規定の何倍もの重量となっている状態で出航したこと、それはそもそも船で運搬しているトラックの貨物の過積載が日常的に行われていたことなども原因となっていたそうだ。
    過去から続く悪しき慣習など、韓国における社会問題を放置してきてしまった事が事故を招いたという悔恨の念が韓国の人たちの間では強いという。
    この51人の物語の中ではセウォル号事件は描かれないが、物語の中で描かれる悲惨な事件や劣悪な職場環境であったり、世代間の軋轢、閉塞感を感じさせる出来事は韓国で起きた事件、事故を暗示しているものが多数あるそうだ。

    しかし、そういう状況にありながらも、誰が投げ落としたかもわからない石を拾って、今より先へ投げようとする人と人との薄いながらも確かなつながりをチョン・セランさんは描きたかったのではないだろうか。
    そういう意味ではこの物語は群像劇でもあり、この51人の中に、いやタイトルにはなっていないが、この物語の中に描かれた51プラス・アルファの人たちの中に、読者が自分を見つけて欲しいと思っているのだろう。

  • 大都市のベッドタウンだろうか? 
    わりと大きな病院があって、そのとなりには映画館もはいるわりと大きなビルがあって そのまわりに人々が住む街。

    ひとりひとりのお話は短くて でも”小腹を満たす”程度には面白く 一つ読んでは満足し 二つ読んでは続きはこんど ....と、読むのにえらく時間をかけてしまった。

    でも読み終わるとすぐ、もう一度読みたくなる。

    となりの国のものがたり とシリーズにしてあるけれど これは隣人たちの物語。
    普通の人々の生活を ぐるっと見回して 自分も住んでいるかのように感じるそんな街の物語。

    ぱっと見カッコイイ ビルはあっても、一般人の家はイマイチだとか、どうも働きすぎる傾向があるとか、なのに上の人には言いたいことを言いづらいとか、すごく普通、すごくわかる。

    軽い毛布がじんわりと温みをくれるような 当たり前の共感がじわじわ来る よい本でした。

  • 210611*読了

    あまりにもよくて、何度も読み返したいと思えた小説。
    図書館で借りたのだけれど、これは買って手元に置いておきたいと思います。

    50人(51人)が主人公の短編がつまった本。
    ソウル中心部から離れた町の大学病院とその周辺で起こる出来事が書かれています。
    少しずつ物語が繋がっていて、誰もが主人公であり、誰もが登場人物(脇役)になるところがとてもいい。
    これだけたくさんの人のストーリーがあるので、誰かしらには共感できる部分や自分と重なる部分があると思います。
    悩みや生きづらさ、しんどさを誰もが少しは抱えていて、それを抱えながら他者と接し、心を癒したり、前を向いたりできているのだなぁ。

    外国の氏名は得てして覚えにくいので、名前は忘れてしまったのだけれど、私は司書さんから治験の管理の仕事に転職した女性や、文芸学科で教えていて、事故にあってしまった女性に共感を覚えました。

    韓国ならではの文化や、韓国ならではの社会問題を織り込んだお話も多く、知っているようで知らないお隣の国についての知識が増えました。
    最近、韓国のエッセイや小説が書店に並ぶことが増えてきているのもあって、韓国の作家さんの本を読む機会が多くなって嬉しいです。
    新たな出会いを楽しんでいます。

  • 人生ってままならない。理不尽だし。
    51人誰もが主人公の物語。読むのが辛くなってしまう所もあるが、「いちばん軽蔑すべきものも人間、いちばん愛すべきものも人間」。人が人を思う気持ちや思いやりを感じ、温かい気持ちにもなる。
    自分に似ていると思う人や、「人生の同僚」は誰かなあと探す楽しみもある。
    ままならない毎日でも、思いやりを忘れずに生きていきたいと思った。

  • 様々な年齢の、時代の物語があつまっていて、たった数頁の物語に涙したり、既視感を覚える話に胸がキュッとしたり。その日の気分でひらいた頁に感慨深い物語がある。
    日本にもそんな物語が日常溢れているなと感じることばかり。
    いつの時代も、マイナスな視点で〇〇世代は〜と語られるけど、ながい歴史を辿っていけば何かが変化してするときはネガティブな言葉が飛び交っている。それを見れば、どの立場も時代にあったやり方を身につけることがよりよいものを作っていけると知っているはずなのに、何十年も同じ時代を生きた人達、そこで成功体験を知った人達には、対応に難しい理解し難い事象が多いのかもしれない。世界でも多くの学者が日本はその世代が学ばなければ良いほうに変わらないと言われているように、新しい時代には新しい苦しみ、まだ知らない見たことのない世界があることを学ばなければいけない。それらを理解した上で、何十年も同じ時代を生きた人達は、開き直りではなくきちんと必要なノウハウを身につけ、新しい時代を共につくり歩いていく逞しさが求められるのだと感じました。そうでなければ、はだかの王様になってしまうから。たとえば周りによくいる「何を言ってもセクハラだと言われるなら何も言えん!」と言う人や「優しいは弱い、無責任な優しさばかり!」と自身が信じる精神論を語る人... どの立場にとっての強さなのか、どんな境遇の人にとっての厳しさなのだろうか。そのひと言で命取りになることや、その厳しさで大切なものを失うこと、無責任な厳しさが誰かの人生を奪ってきたことを、知らない無知な言葉たち。まわりを見渡せば価値観が広がった時代に、数多くの物語を、知らない、理解できない人がたくさんいる。それは何を言えばいいのかを学ぶときで、新しい指導法を生み出すときで、きっととてもシンプルな話なんだと思う。どんな言葉があるのだろうかと、優しさの中にある厳しさや強さを学ぶには、温かい目がどうすれば伝わるのだろうと、成功への新しい道、新しい歩き方、価値観、教養を身につける必要があり、それが他者への、次世代への、そして自分自身対する強く優しい厳しさではないのかとも思う。言葉も生き物なので、古くなるもの、消えるもの、生まれるもの、人の心に寄り添うもの、様々です。それは後ろ向きなことではなく、自身の経験を生かしながら、より良い言葉を紡いでいく柔らかい力とスキルが求められるし、それをせずに嘆きばかりを口にするのは、今までの経験もこれからの時間も、勿体無いなと思う。時代は変わるけど、いつだって大切なものは変わらずに残り続けている気がするし、今ある新しいものも、昔からそうであったかのように、自然に今はそこにある。遠い昔の〇〇時代、ちょっと近くの〇〇世代、感じ方は違っても、変わることは自然なこと。それはすべて人々が努力した奇跡の結果です。よりよい世界を願った想いが詰まっているのではないかと感じます。ネガティブな言葉で呪いをかけずに、新しく作られたよりよいものに目を向けながら、生きる言葉を紡いでいけたら思う。よりよい世界を願い、努力しつ続けることが尊い奇跡。それは人の矜持のような気がする。年齢や立場の違う人たちの環境や境遇、想像にも及ばなかった価値観が存在することを、多くの物語から学び、少しでも知らなかった世界を知るきっかけになればいいですね。

  • とってもとってもとっても良い本。
    大きな病院のある地域を中心にした連作小説で、タイトル通り50人の人の章がある。
    その50人が別の人の章に登場したり、個人の章はなくても複数の章に登場する人たちがいたりと皆が行き来する小説だ。
    一人一人の章は短いけれど、皆これまで生きて来た重さと体温がしっかりあるので、実際に知り合ったような気持ちになった。
    なので、辛いことが書かれていると、読む私もとても辛い。
    なのに、しばらく他の人たちの話を読んで、またその出来事や人物に言及があった時、すっかり忘れていた自分にショックを受ける、ということを何度か繰り返した。
    あんなに悲しいと思ったのに。
    そして、フィクションの中だけでなく、現実でも私はそうやってたくさんの人の苦しみをすぐに忘れたり、見過ごしたりしているのだと痛感した。
    しかし、この作品で一番泣いた台詞が、
    「去年は、何でこんなことやるんだろうって思ってたんですけど……何でやるのか、ちょっとわかりました」
    というものなのだけど、そうだ、わからなかったことをわかるように、忘れてしまっていたことを覚えているように、見過ごしてきたことを見過ごさないように、私はちょっとずつでもなっていけるのだ、私がそう決めさえすれば。そして私は決める。
    そんな風に思わせてくれる、とっても良い作品だった。
    しんどいところもあるけれど、文章の温かみとユーモアが優しく包んでくれる。
    あと、最後の人物索引が最高。

  • 【全体を通しての感想】

    平易な文章でありながら軽すぎない。短編であるにもかかわらず感情移入がしやすい。
    比喩表現も面白いものが多く、著者の技能の高さが随所で感じられる作品。
    各人物の章が終わるときの余韻が良い。あと、各登場人物がゆるーく繋がっているのだが、これが旅先で出会う人との交流のような心地よさを感じさせてくれる。近すぎず、遠くない距離感。
    作中に幾度も登場するクレイアニメの「トカゲのゾフと仲間たち」をぜひ観てみたい。



    【印象に残った場面】

    <ソン・スジョン>
    チマチョゴリを着た母親が「さららららん」といいう音をさせながら一回転するのをスジョンが見ている場面。
    普段は迷惑がっているスジョンだが、彼女がもうすぐこの世を去ってしまうことを心から自覚したの瞬間なのではないだろうか。
    普段迷惑がっていることも、生きているからこそなのだ。

    <スンジョ>
    "お金をとる授業ではこの上なく親切だった先生が、上司になると毎日毎日スンジョを侮辱した。
    スンジョが手がけた作品を床にばらまいたこともある。拾うのが嫌だったから、スンジョもその上を踏んで歩いた。"
    かっこよすぎでしょうが。あと、
    "「僕は、あなたみたいな歳のとり方はしないつもりです。それがいちばん怖いんですから」"
    かっこよすぎでしょうが。最高だぜ。
    私は気が弱い方なので、スンジョのような振る舞いはできないかもしれない。というか、目上の人に対するこういう振る舞いは良くないこととして教育されているので抵抗感がある、と言ってもよいかもしれない。だが、大切な自分を傷つけられて黙っているのは果たしていかがなものだろうか。それは良いことなのだろうか。スンジョのように毅然とした態度で反抗するのは、むしろ推奨されるべきことなのではないだろうか。

    <ムン・ウナム>
    よく笑うソンミがとても魅力的。読んでいるうちに、過去に読んだアラン幸福論の
    "しあわせだから笑っているのではない。むしろぼくは、笑うからしあわせなのだ、と言いたい"
    という言葉を思い出した。

    <キムヒョッキン>
    このパートを読んでいたのは会社帰りの電車の中。その日はいつになく忙しかったため、心がざわざわして落ち着かない、そんな帰り道だった。だが純粋で茶目っ気のあるヒョッキンと普段手術室で天才的なオペを行っているとは思えない、可愛らしい一面を見せるチェウォンのやり取りを読んでいくうちに、煩瑣な業務でふさいだ気分は7回裏のジェット風船のごとくどこかへ飛んで行った。こういうじれったいような恋愛物語、好きなんすわあ。

    <チョ・ヒラク>
    イ・ホが来店して過去を語る場面。音楽がよくて泣いたのか、親切がありがたくて泣いたのか。そんな場面が私の人生にもあっただろうか。無かったかもしれない。こんな経験ができるイ・ホが羨ましい。なんて思ったが、「自分は運がよかっただけだ」と謙虚な気持ちを持っているイ・ホだからこそ涙を流したのかもしれない。私が思うに「人生を楽しむための能力」は存在する。素質ではなく、能力だ。能力は鍛錬することで上昇させることができる。ではどうやって鍛錬するのか。それは、「自分には無いものに積極的に触れ、取り入れる」ことで鍛えられるのだと思う。普通に生活しているだけではこれはなかなか難しい。たいてい、意識しなければ同じような毎日を繰り返してしまうのだから。私にとっての鍛錬は、読書だ。様々な人の考えに触れて吸収したり、時には反発する。反発した後でやっぱり吸収することだってある。そうして「人生を楽しむための能力」を鍛錬しているのだ。
    ・・・なんだか話が逸れてしまったのでこれくらいにしておこう。

    <パク・イサク>
    嫉妬からか価値観を押し付けてくる先輩に対して「消えろよ」と言ってのけるイサクが羨ましい。自分らしく生きていると必ず嫉妬して足を引っ張ってくる輩が出てくる。奴らは確固たる自分をもっていないがために自分らしく生きている人間を見ると足を引っ張らずにはいられないらしい。
    作中の言葉を引用してみよう。"よくない穴に生まれたら、ずっとその穴にいなくちゃいけないのか?チャンスが与えられない世の中で、自分なりにチャンスを作り出そうとするのがずるいのか?皆が無気力に浸ってなくちゃいけないのか?そうだったら安心できるのか?"
    嫉妬する人間には「努力してより良い方向へ向かおう」という発想が無い。自分より高みにいる人間を引きずり下ろすことしか考えられない、悲しい人間なんだ。嫉妬の炎はやがて自らをも包み込むとも知らずに。
    イサクのモットーは「探せばいくらでも方法はある、解決できない問題はない」いいね。嫉妬深い人間に是非とも真似してほしいと思う。

    <イ・ソラ>
    バザーにて、恐らくヒョッキョンと一緒にチェウォンが「バナナ手術室」をやっている場面。バナナに麻酔をかけて剥いた皮を縫合する。これを2人がやっているところを想像すると思わず顔がにやけてしまった。私はこの本の登場人物の中で一番チェウォンが好きかもしれない。

    <キム・シチョル>
    楽天的な性格の妻、ヘリンと賃貸マンションに暮らしている。普段は温厚で楽天的なヘリンだが、攻撃的な人間に対する免疫がないために悪意のこもった住人の言葉や態度に傷ついて崩れてしまった。こういった場合、加害者側は何とも思っていないことが多い。どうして優しくて感受性が豊かな人間が傷つき、そうでない人間が我が物顔でのさばっているのか。
    本当に世の中は不公平で、不公正で、不合理だ。
    下の階の住人に耐えられなくなり、引っ越すことを決意する場面が印象に残っている。
    "「違うって、言ってくれ」
    「ん?」
    「変わらないって」
    「うん」
    ヘリンが夢うつつで答えた。その顔からは涙の跡が消えている。シチョルは眠れなかった。"
    シチョルとヘリン、この先も二人が一緒にいるのなら決して変わることは無いと、私は思う。

    <ソ・ヒョンジェ>
    思うようにいかないこの理不尽な世の中でどう生きればくたびれずにいられるのだろう。諦めてもがくのをやめる?自分の心の中から聞こえる自分自身の悲鳴を無視し続ければ、やがてなにも感じなくなるかもしれない。悲しみのついでに、喜びも。ヒョンジェの話を読んだとき、以前読んだアラン幸福論の"幸福になるのはいつだってむずかしいことなのだ。多くの出来事を乗り越えねばならない。大勢の敵と戦わねばならない。中略 幸福になろうと欲しなければ、絶対幸福になれない。"という言葉を思い出した。ヒョンジェの様に断固として戦う必要があるのだ。各々の人生に存在する鼓膜クラッシャーに「だめです」と言える勇気を持とう。

  • 五十人全員が主人公。それぞれが独立した物語であるのに、とある病院を中心に、少しずつ、そして最後はかなりの人たちが絡み合う、不思議な感覚に陥る小説。私は初めて、本を読みながら相関図を書いた(途中で諦めたが…)。そして、それぞれの短い物語が、深い。人生の切なさのようなものがところどころ漂っている。2021年の今の時点で、人にオススメしたい1番の小説となった。

  • コミック「異国日記7巻」を読んでいたら、この本が出てきていた。どんな本なのか、早速読んでみて引き込まれた。
    韓国の小都市の病院を中心に、すれ違ったり、そのすれ違った人がまたかかわった事が広がっていく、
    50人の人たちそれぞれの日常。出来事。事件。事故。人生。
    読みごたえはあるけれど、読みやすく、間違いなく記憶に残る一冊。出会えてよかった。

  • フィフティ•ピープルで織りなす物語。
    (本当は51人いるらしいけど)

    イチ推しは天才少女ユ•チェウォン!
    完璧な手術を遂行する、合理的な女性が好きなんだと思う。周りの目を憚らず、必要な栄養を摂るためにパンを腹に入れるチェウォン、かわいい。

    天才であっても、非合理的な世渡りと運が彼女の存在意義を揺るがすわけで。
    「どこか正しい位置、適切な場所、自分の居場所を見つけたかった」と思いながらチェウォンの章は幕を降ろす。

    そして。
    チェウォンが低血糖で倒れかけたその時を見ていた人間がいた。麻酔科のヒョッキョン!
    というわけでヒョッキョン•ターンでさらに可愛らしいチェウォンと再会する。嬉しい。

    こんな風に、誰かが誰かの章に登場しては、その人にとってのちょっとした出来事を彩る。
    ふと恩田陸の『ドミノ』を思い出した、章の名前を冠する人物が視点で展開されるので、個人を描いた感じが強いように思う。

    最近、taknalというアプリを知った。
    すれ違う人の読んだ本や思い入れのある本が、自分の気付かない間に溜まっていく。
    誰か分からない、たくさんの通り過ぎていく人にとっての、エピソード。そこには何か繋がりがあったり、もしかしたら友達の友達みたいなことがあるのかもしれない。

    それは、この本が目指した物語のカタチに繋がっていくような気もした。

    メインの舞台が病院だからか、病気とか死にまつわる章が多く、やたらドラマな展開もあるんだけど。
    再婚、DV、ジェンダー、貧困といったテーマにも触れられていて、短いお話の人物背景にそれらを組み込んでいこうという姿勢に、作家のガッツを感じた。

  • 多くの話を、できるだけ、短く、軽く、ハートウォームに仕立ててているが、そこにはいくつもの気が重いテーマがひそんでおり、著者の社会に対する硬派なまなざしに打たれる。韓国の人々を愛しつつ韓国社会のあり方に憤る。韓国社会に生きる人でなければ、この作品にきちんと共感することはできないかもしれない。それだけに巻末の訳者解説は重要だと思った。

  • 50人(あとがきによると、厳密にはもう少し多いらしい)それぞれを主人公に据えた短編の集まりで、その登場人物たちは別の話の中で他の登場人物の友人だったり知り合いだったり親族だったり、たまたま見かけただけの赤の他人だったりする。読み進めていくと、あ、この人、あの時のあの人じゃん!となって、これがなかなか楽しい。
    人はみんな自分の人生の主人公で、かつ誰かの人生のバイプレイヤーなのだなぁ。

    韓国の小説は初めてだったけれど、本書はとても読みやすく、とっつきやすい。韓国の社会的・文化的な問題も背景に見えていて、それはなかなかに日本の問題との共通点も多いのだなと感じた。

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著者プロフィール

1984年ソウル生まれ。編集者として働いた後、2010年に雑誌『ファンタスティック』に「ドリーム、ドリーム、ドリーム」を発表してデビュー。13年『アンダー、サンダー、テンダー』(吉川凪訳、クオン)で第7回チャンビ長編小説賞、17年に『フィフティ・ピープル』(斎藤真理子訳、亜紀書房)で第50回韓国日報文学賞を受賞。純文学、SF、ファンタジー、ホラーなどジャンルを超えて多彩な作品を発表し、幅広い世代から愛され続けている。他の小説作品に『保健室のアン・ウニョン先生』(斎藤真理子訳)、『屋上で会いましょう』(すんみ訳)、『声をあげます』(斎藤真理子訳)、『シソンから、』(斎藤真理子訳)、『地球でハナだけ』『八重歯が見たい』(すんみ訳、以上、亜紀書房)などがある。

「2024年 『J・J・J三姉弟の世にも平凡な超能力』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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