【定本】災害ユートピア (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズⅢ)

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  • Amazon.co.jp ・本 (508ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750516622

作品紹介・あらすじ

ロングセラー、待望の完全版刊行!
旧版での抄録部分、原注などを完全収録し、70ページに上る増補でおくる決定版。

解説「レベッカ・ソルニットを読み解く」(渡辺由佳里)も新たに収録。


ブレイディみかこ氏、推薦!
「エリートがビビッて失敗するとき、地べたは生き生きと機能し始める」


大地震、大洪水、巨大なテロ……私たちの日常に裂け目が入るとき、そこにはいつもユートピアが出現した。

災害時になぜ人々は無償の行為を行うのか?
そのとき、なぜエリートはパニックを起こし、人びとは自発的な秩序をつくり上げるのか?
1906年のカリフォルニア大地震から、ニューオーリンズの巨大ハリケーン、9.11テロまで、危機の最中に現れる人々の自発的な相互扶助のメカニズムを追った、珠玉のノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • ◯他の方の感想でも書かれているが、この本を読むと日本人は災害の時に暴動を起こさないということについて、民族とは関係がないのでは、と考えさせられる。
    ◯もしくはそれ自体を前提とした上で、暴動等の比率の小ささを言っているのだろうか。
    ◯少なくとも、地獄に仏、地獄に天国とは言い得て妙で、助け合う心が人にはあるんだと思えるだけでも救われる。

    ◯この本のもう一つのテーマとしては、行政のスタンスであると思う。実に悩ましい。本書で取り上げられているのはアメリカの事例である。銃社会であることから、秩序が失われたと想定される際の危険性の増加具合は日本の比ではない。この場合、州兵が派遣されるのも分からないではない。
    ◯日本ではエリートパニックがないとは言えないが、軍隊による治安出動がないだけ良い状況なのかもしれない。また、災害対応という点では地方自治体の頑張りもなかなかのものだと思う。
    ◯奇しくもコロナによって右往左往する政府を見ていると、どこに向いて政策を打ち出しているのかやや疑問である。コロナがなくなることは現実的ではないが、もう少し感染対策を打ち出してからの宣言解除でも良かったのではないか。

  • 自然災害は誰もが恐れ、できることなら起こらないでほしいと望むものだと思います。
    しかし、自然災害は起こります。現在でも日本は南海トラフ地震や首都直下型地震などの災害が来る来ると言われており、人々の災害への関心も高まっていると感じます。

    アメリカで起きたハリケーンや同時多発テロ事件が起きた時に人々が利他的になり共同することが実例と多くの引用を用いて記されていたためとても説得力のあるものでした。(ただ、文章のところどころが正直読みづらく、飛ばしとばしで読んでしまいました)

    私は直接的な被災経験はありませんが、大学2年次に台風による水害のボランティアと東日本大震災の被災地訪問、被災者との交流の経験があります。
    そこで学び、感じたことはまさにこの本に書かれている内容そのものだったと思います。
    仲間たちと学んだことをまとめると
    「未災地は将来の被災地になる」
    「私達が東日本大震災を伝えられる最後の世代」
    ということになりました。

  • 災害時になぜかユートピア的な利他的なコミュニティがたちあがることについてのソルニットの本。

    ソルニットは、社会変革のアクティヴィストだったり、フェミニズムの論者だったり、歴史社会文化に関する著作家であったり、さまざまな側面があって、それぞれに素敵な本を書いている。

    そうしたソルニットの作品の一つで、以前から気にはなっていたが、なんとなく本の内容は想像できる感じがしたので、読むのを先送りにしていた。

    2020年に定本という形で全訳版がでたのを発見して、遅ればせながら、読んでみた。

    まずは、本が届いてその厚さに驚いた。注までいれると500ページを超える大著である。なんとなく、300ページくらいのエッセイ集のようなものを想像していたのだ。

    で、読んでみると、これまた本格的な文献と可能な範囲でのインタビュー調査を踏まえた本格的な論考になっている。

    話は20世紀初めのサンフランシスコ地震から始まる。地震とその結果生じた大火事の影響で避難民がでたのだが、かれらのなかで自発的な利他的なコミュニティが立ち上がっていく姿が感動的に描かれる。そして、このことによってその後の人生が変わった人たちの話が紹介される。一方、良いことだけではなく、大災害にともなってエゴとエゴとのぶつかりあい無法状態、財産の略奪をおそれた権力側が、軍隊や警察をつかって法と秩序をもたらそうとして、より被害を拡大していく、いわば災害を人災化していくプロセスも描かれている。

    この話しを起点にハリファックスの大爆発、ロンドン大空襲、メキシコシティ大地震、911と議論は進み、最後はカトリーナによるニューオリンズの被害などで、同じようなことが生じていることを丁寧に紹介している。

    アメリカの事例が中心であるが、まずは、ここまでしっかり調査してくれていることが素晴らしいと思った。

    その上で、災害時などにおいて、
    ・厳しい状態のなかで人間は利他的な行動をとり、ユートピア的なコミュニティが生まれ出るということは、しばしば起きるということ
    ・一方で、権力者側では、秩序が崩壊すると、略奪行為、残虐行為など無法状態が生じるという固定観念が強く、実態を悪化させる傾向があること
    ・そして、災害がおさまると、また日常が戻ってきて、ユートピア的なコミュニティは消滅する傾向にある
    ということが傾向としてあることを指摘している。

    いわれてみれば、そうだろうなと思うのだけど、現代の社会の常識では、やはり災害時においてはエゴイスティックな無法状態になるのではないかという恐れが相当に強いことを再確認した。これは人間性に関する近代的な利己的な個人という仮定が自明のこととして埋め込まれている感じ。

    この本で書かれていることは、わたしがここ数年ぼんやりと考えていた問題意識にとても近いことがわかった。

    まずは、ハンナ・アーレントの議論で、市民参加の直接民主主義的な評議会が革命時などにおいてしばしば生じるというものがあるのだが、ここでソルニットのいう災害ユートピアはきわめて近いものがある。(パリ・コミューンについては、アーレントもソルニットも言及している)

    アーレントは、その評議会は短時間しか生じないのだが、それを持続できる可能性はないかということを考えていて、そのあたりへの関心も共通するものだと思う。(ソルニットがアーレントに言及していないことが不思議だ。これだけたくさんの文献調査をやっているわけだから、読んでないわけでもないと思うのだが)

    そして、もう一つの関心時は、組織開発などで、組織がカオスになるとそこから自己組織化であたらしい組織が生まれ出てくるという議論があって、そういうことがあることはそのとおりなのだが、そうした自己組織化のコミュニティの脆弱性やそれを抑圧・管理しようとしたりする権力の働きも自然な反応ででてくると思っていて、そのあたりがずっと気になっていた。

    組織は、社会よりも規模は小さいので、そこはうまくマネジメントできるのかもしれないが(マネジメントというところで自己組織化ではないわけだが)、カオスが生み出すネガティブな側面についても意識する必要性、そして自発的な活動の持続性への意識をもつことの重要性を再確認した気がした。

    もちろん、この本が、災害時、そして社会的な活動を行なっていく上で重要な視点を与えてくれることは間違いない。(個人的には、利他的な市民側コミュニティと利己主義にもとづき既存の権益をまもろうとする権力側という対立構造を強調しすぎるのはあまり良くないと思っているが。。。)

  • ◆9/26オンライン企画「まちあるきのすゝめ ―迷える身体に向けて―」で紹介されています。
    https://www.youtube.com/watch?v=ighe77gjWX4
    本の詳細
    https://www.akishobo.com/book/detail.html?id=974

  • 神戸地震の時、日本人は暴動も起こさず、礼儀正しく忍耐強いと世界で報道されていた。
    それは、間違ってはいない。
    しかし正しくは、大抵の人間は非常事態でも暴動も起こさず、礼儀正しく忍耐強いということ。
    実際に起きた少数の犯罪行為と、事実と異なる偏見やイメージにより、アメリカでの災害では黒人が略奪行為を行うと思われている。
    ハリケーンカトリーナの際に、その偏見のために黒人は被災者ではなく、暴動を起こす犯罪者として扱われ、避難と救助が遅れた。また、その偏見に囚われた白人が、自衛と称して黒人を銃で殺していた。

    一方、災害時には日常生活が失われて、生き延びることが人間共通の目的となる。お互いの差が消えて、他者との一体感や利他的な気持ちが生まれる。それにより孤独が癒やされ、一種の幸福感すら生む。
    個人個人の悩みが各人の固有のものとして扱われて、他者と隔絶してしまう日常生活は一種の災害とも言える。他者との壁が、取り払われる災害時は。一種のユートピア状態が生じる。

    いざという時に何が起きるのか理解しておき、起こしてはいけないことが起きないように、知識をつけておきたい。

  • レベッカ・ソルニット「災害ユートピア」書評 相互扶助の出現、無法状態でなく|好書好日
    https://book.asahi.com/article/11648072

    『災害ユートピア─なぜそのとき特別な共同体が立ち上がるのか』レベッカ・ソルニット(高月園子訳)(亜紀書房) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG
    https://booklog.kinokuniya.co.jp/hase/archives/2011/03/post_18.html

    亜紀書房 - 亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズⅢ-14 【定本】災害ユートピア なぜそのとき特別な共同体が立ち上がるのか
    https://www.akishobo.com/book/detail.html?id=974&kw=%E7%81%BD%E5%AE%B3%E3%83%A6%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%94%E3%82%A2

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      社会の変化の兆しは見えている…「コロナ後の世界」を世界の賢人たちが語る(クーリエ・ジャポン編集部) | 現代新書 | 講談社
      https:/...
      社会の変化の兆しは見えている…「コロナ後の世界」を世界の賢人たちが語る(クーリエ・ジャポン編集部) | 現代新書 | 講談社
      https://gendai.ismedia.jp/articles/-/87241
      2021/09/18
  • 地震、洪水、大火災、そして9.11のようなテロリズムなどの暴力に出会ったときに、市井の人々が利他的に相互を助け合いユートピアともいえるコミュニティをどのように構築するかを描いた論考。本書の意義とは、災害によって極めて民主主義的とも言えるユートピアが立ち上がる可能性があるという点から、災害のもたらす影響をポジティブに解釈しなおそうとする点にある。

    もちろん、全ての災害でこのようなコミュニティが発生するわけではなく、災害の規模が圧倒的すぎれば、そのようなコミュニティが発生する余力すら失われるのが実態ではある。とはいえ、被害がそこまでではない場合には、様々な災害後の様子を丹念に辿ることで、そうしたコミュニティが自然発生している点が浮かび上がってくる。

    また、そうした相互扶助的なコミュニティと対局にあるのは、政治・官僚エリート層が市井の人々は災害においてパニックになるに違いないという妄信から、市民同士の救助活動を禁止したり、ひどい場合にはニューオリンズを襲ったハリケーンのカトリーナの場合にように水害から逃れようとする黒人の住民を”治安を乱す”として軍・兵士らが銃殺する二次災害を巻き起こすことである。

    全ての災害を本書が示すようにポジティブに解釈することは正直難しいとは思うものの、災害時のような緊急事態においてはトップダウン型の官僚組織よりも、市井の人々によるボトムアップ的な相互扶助の力を活用した方が結果としてうまくいく、というのはおそらく一つの真実であり、災害時の市民活動のあり方を考える際に、非常に参考になる書籍であると感じた。

  • エリート・パニック興味深い。生き延びるにはやっぱりリスとかカメとか食べられなきゃなんだな。

  • P68でギブアップ。
    最後まで読んでないけど「行政ダメ弱者サイコー」な感じ。
    自分の主義主張を掲げる材料として災害を利用するのは不謹慎。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/757285

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著者プロフィール

レベッカ・ソルニット(Rebecca Solnit):1961年生まれ。作家、歴史家、アクティヴィスト。カリフォルニアに育ち、環境問題・人権・反戦などの政治運動に参加。アカデミズムに属さず、多岐にわたるテーマで執筆をつづける。主な著書に、『ウォークス歩くことの精神史』(左右社)、『オーウェルの薔薇』(岩波書店)がある。

「2023年 『暗闇のなかの希望 増補改訂版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

レベッカ・ソルニットの作品

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