ディディの傘 (となりの国のものがたり6)

  • 亜紀書房
3.96
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本棚登録 : 158
レビュー : 12
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750516684

作品紹介・あらすじ

死と破壊、そして革命。
人々は今日をどのように記憶するのか。

「セウォル号沈没事故」「キャンドル革命」という韓国で起きた社会的激変を背景に、人が人として生きることの意味を問う最新作。


多くの人命を奪った「セウォル号沈没事故」、現職大統領を罷免に追い込んだ「キャンドル革命」という社会的激変を背景にした連作小説。

孤立し、閉塞感が強まる日常の中で、人はいかに連帯し、突破していくのか?
行く先に真の〈革命〉はもたらされるのか?
私たちが望む未来とは?
——人は誰もが唯一無二の存在という事実をあらためて突きつけていく。


デビューから15年。たくさんの読者を獲得すると同時に、文壇の確固たる支持を受け、名実ともに韓国を代表する作家となったファン・ジョンウンが放つ、衝撃の最新作。
「d」と「何も言う必要がない」の2作品を収録。


2019年〈小説家50人が選ぶ“今年の小説”〉第1位に選出。5・18文学賞、第34回萬海文学賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 「野蛮なアリスさん」「誰でもない」が大っ好きで今か今かと邦訳を待ち続けていた本作。読んでみると、これまでの作品と明らかにテイストが違う。テイスト?って言うのは適当じゃないか。例えば短編集の「誰でもない」は物語が太巻きだとすると最も米と具が詰まってておいしいところを、痛烈で切実なセンスで盛り付けてくれていたような作品だった。だが、本作は米粒一つぶ一つぶを確かめ疑いながら海苔に乗せてゆく様子を、読者もともに苦しみながら見守るようなそんな作品だ。ともに苦しむといっても、この作品は韓国の情勢、社会事情、街の様子、生活について実体験している人とそうでない人とでは入り込み方が違う。私にはその辺りに詳しくなくて、実感を伴って読むことが出来なくて残念だった。人としてぎりぎりの状態でいる前半戦はマイケル・kみたい。韓国の小説はテーマがあって、社会的正義とか使命を感じる点がすごく面白いし、そのうえで普遍性を感じさせるからファン・ジョンウンはすごいな。「生きてるものの生活がぐちゃぐちゃなのはどうしようもないことだろ、恥じゃない」っていうキム・グィジャの言葉が好き。ファン・ジョンウンがあとがきで「いまだに読むことと書くことを愛しているし、人が好き」って言ってくれてて、ありがとうって感じでした。めちゃくちゃなレビューですみません。LOVE

  • 「みなさんが多少なりとも健康で、そしてたびたび幸福でありますよう。」

    時間も土地も違う、知らない固有名詞で埋められた文なのに、(これを私は知っている)と感じる不思議な読書体験だった。

  • この小説に描かれている圧倒的な絶望感、閉塞感、人々の怒りは一体どこからくるのだろう…とずっと思いながら読んでいた。韓国に生きる登場人物のこの揺れ動く心情を、そのまま自分のことのように実感するには、私の知識が不足しているのが口惜しい。
    訳者解説にある「現実は混沌としており、激しく変動する。そして正しさは常に一様ではない」この言葉が韓国の情勢の全てを表しているのだろう。
    様々なことを考えさせられる小説だった。

  • 【最終レビュー】

    図書館貸出。

    実際に起こった

    前編:セフォル号沈没事故

    後編:キャンドル革命(現役大統領罷免への道筋)

    を母体に据えながら

    ネット、メディアでは、決して、踏み込められない、直接的、手に届くことのない領域の中でもがいている

    生身の人間模様をありったけに映し出している。

    あらゆる角度から捉えた

    有機質/無機質…それぞれの空間が

    様々な場面で、折り重なるように散りばめつつ

    一言二言で決して、言い切れやしない、一筋縄では通用しない

    『多様な愛の形』

    『孤独感、連帯感、社会の閉塞感、革命等々』

    展開を追うにつれて、本著のタイトルそのものの

    意味合いが、少しずつじわじわ浮かび上がってくる。

    さりげないことだけれど、普段我々が気づけていない

    深掘りしていくかのような

    『内面的に抱えている思惑の数々』

    シンプルだけど、不思議と

    際立つ゛究極の感性を秘めた達筆さ゛

    単なる普遍的な感覚で到底及ばない

    独特のスパイスを

    次から次へ、降りかかるような空間が漂う様相が、滲み出てくる印象に包まれていた。

    やはり、韓国文学に触れてみて思うのは

    見識が深く、素養そのものが根付いている環境そのものが整っている。

    [書店名/諸外国の著名な方々の著書の数々/日本アニメ、洋画作品…]

    数多く、内容の中に、上記を上手く緻密に引用しながら

    よりメッセージ性に極みを加える。

    私的に、特に印象にきたこのキーワード

    [取るに足らなさと闘う]

    このキーワード=今の日本社会に置き換えても十分に通じうる部分があるのではないか…

    ささやかながら、今を生きる私達に

    何らかの想いそのものが込められているなと、率直に感じ入った部分であった。

    今のこの時…社会から目を背けず、一言でも、声をあげること。

    本国により必要ではないだろうか…

    そう思わずにはいられないぐらい、本著を通して、改めて考えさせられたといってもいい。

    ちなみに、私と同世代の著者。

    最初は、難解なところもありましたが、こうして完走。

    あまり知られない世界観も多々あったり

    まだまだ、未知数だなと痛感もしたりしながら

    こうして、新たな学びとして、既読レビューを終えます。

  • 2021 #3

    私の知らない韓国を知った
    とても丁寧に翻訳されているのが伝わってきて
    日本語で読ませてもらってありがたかった
    日本の読者へのメッセージと訳者解説まで
    おいおい泣きながら読んだ


    ---メモ---


    P192 彼はキム・ソリに大人であれと要求したが、彼自身もキム・ソリに対しては大人なのに、彼はキム・ソリに対して何も、キム・ソリが大人になることについて何も、何らの責任も負わず、非難するだけして行っちゃったんだ。彼の大人らしさはキム・ソリを観察し、判断を下し、ことが終わった後に寄っていって非難するときだけ有効に働いたが、大人らしさがそんなものならあまりに御都合主義で下品じゃないか。
    P194 「生きることは、話すことです。…生きることは…私たちより前に存在していた文章から生の形を受け取ることです」。私はこの文章をロラン・バルトの『小説の準備』で発見し、その美しい文章を発見した後、読むスピードを落としに落とし、一年ずっと同じ本を読んでいる。
    P220 墨字の状態が常識だから、それをそうと呼ぶ必要もなく、それがあまりに当然だから、私たちはそうと自称することさえしない。
    P221 見えるものには見えない者が見えない。見えない者がなぜそこにいるのか?見えない者は考慮されない。龍山駅1番ホームの常識にその人は入っていない。その人はそこにいない…私はまだそれを見ることができたからそこにいたが、いつか消えるだろう。常識の世界という墨字のプラットホームから、再び。

    P275 訳者解説
    ファン・ジョンウンは2018年に来日したとき、「私にとっての革命基本は、雨が降ってきて傘をさしたときに、隣の人は傘を持っているかどうかと気にかけること」と話してくれた。

  • 読んでる最中も読み終わってからもすごいしか言えなくなっちゃうけど、時代背景や社会のうねりについて、いろんな時代の小さき者たちの記憶の断片をもとに語られてて、また勉強したくなった。

  • セウォル号沈没事故、大統領罷免に追い込むキャンドル革命、90年代半ばまで続く学生運動など、40代の韓国作家には、社会運動が身近なのだと、隔世の感がありました。社会のひとつのあり方を変える手前に立っている人たちはひとりひとりが特別な力を持つ人たちではなく、川の水の流れにある岩のようであっちにこっちに向きを変えていく役割のような印象を受けました。

  • "まっ昼間から、恨めしくて、恥ずかしくて、涙が出たよ。そのとき私、たいがい驚いて、気がついたのさ、私が泣いてる、恥ずかしいのがわかるんだ、ああ生きてるなあと。そしたらこんどはそれが嬉しくて、涙が出て出てきりがなくて。生きなくちゃ、せっかくここまで生きたんだから最後まで生きてみようって確かに覚悟を決めたんだ……そうやってしっかりはっきり心が決まったのはあの恥ずかしさのおかげで、あれが私を生かしたの。"(p.22)



    "私は自分の答え方や考え方が子どもに及ぼす影響が怖い。"(p. 183)

    "大人になることは、恥ずかしさの後に来るんだよとキム・ソリは言ったよね。"(p.185)


    "ある人の言う常識は、その人が考えている面よりも、考えてない面を表すことの方が多く、その人が考えていないことはその人がどういう人間であるかをかなり赤裸々に示すもので、あなたはさっきあまりに赤裸々だったよと言ってやりたいんだよ。"(p.214)

  • セウォル号沈没、キャンドル革命といった社会的な出来事と、個人の絶望や悲しみが端正な文章で織り上げられている。
    読み終わってタイトルを見ると、胸が締め付けられるなぁ…。
    喪失であったり、疎外されることであったり、様々なものに直面して、色んなものを引きずって生きている人たちの息遣いまで聞こえてくるようだった。

  • 個人は個人で様々な考えや思い、問題を抱えて生きてる。
    それは大切な人を亡くしたことだったり、両親との隔たりだったり、性差、同性愛だったり、過去の運動や争いだったり。

    そういうものを胸に抱く個人にも、世の中の大きな流れは影響を与え、またその個人が、各々の抱えたものを持ち寄ってより大きな流れに響きあい、新しい流れを作っていく。時に後退しながら、時に迂回しながらも。

    韓国の現代、「セウォル号事故」「キャンドル革命」を背景に語られる、個人の「小さな記憶」と人々の歴史としての「大きな記憶」。
    今は過去となり、語られながら「記憶」は紡がれる。

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著者プロフィール

ファン・ジョンウン(黄貞殷)
1976年、ソウル生まれ。2005年、短編「マザー」で作家活動を始める。08年、最初の短編集『7時32分 象列車』を発表すると、現実と幻想をつなぐ個性的な表現方法が多くの人の心を捉える。10年、最初の長編小説『百の影』で韓国日報文学賞を受賞。以降、12年『パ氏の入門』で申東曄文学賞、14年短編「誰が」で李孝石文学賞、15年『続けてみます』で大山文学賞、17年中編「笑う男」で金裕貞文学賞など、名だたる文学賞を受賞している。邦訳された作品に『誰でもない』(斎藤真理子訳、晶文社)、『野蛮なアリスさん』(斎藤真理子訳、河出書房新社)、『ディディの傘』(斎藤真理子訳、亜紀書房)がある。

「2020年 『続けてみます』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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