ホンモノの偽物 (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズIII-15)

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感想 : 15
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750516714

作品紹介・あらすじ

本当のことはいつだって、偽物が教えてくれる!?
 
ウォーホルなしでつくられたウォーホル作品は本物か?
高クオリティーすぎて、それ自体で価値のついた“オリジナル贋作絵画”とは?
バナナ味とバナナの違いが明らかにする味覚の真実とは?
いんちき化石を信じた18世紀の博物学者の顛末とは?
天然ダイヤモンドと人工ダイヤモンドはどちらが道徳的か?
ネイチャー・ドキュメンタリーは本当に“自然”なのか? and more…!
 
真贋のグレーゾーンを行き来する事物を通して浮かび上がる、歴史と文化の実相に迫ったノンフィクション!

感想・レビュー・書評

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  • 「模造と真作をめぐる8つの奇妙な物語」という副題から、芸術分野の贋作に絞ったノンフィクションだと思う人も多いだろう。

    美術品の章もあるが、俎上に載るニセモノはもっと幅広い。
    人工ダイヤ、「◯◯味」の合成香料、考古学分野の贋作(ニセ化石)、ネイチャー・ドキュメンタリーにおける「演出」の問題など……。

    著者は、「偽造品・贋作はケシカラン!」と批判したり、ニセモノを低くみたりする凡庸な価値判断に立っていない。もっとニュートラルなスタンスだ。

    模造という営みを虚心坦懐に見つめ、〝ホンモノの持つ真正性とは何か?〟と改めて問い直した本なのだ。

    たとえば、天然ダイヤと人工ダイヤを比較した章では、天然ダイヤの採掘自体が途上国搾取を孕むことから、人工ダイヤのほうが倫理的と考えられるようになった価値の逆転が語られる。
    そのように、どの章でも真贋のグレーゾーンに光が当てられ、我々の価値観そのものが問い直されている。

    各章で取り上げる話についてのリサーチも綿密だし、よくできた本ではある。目からウロコのエピソードも多い。

    ただ、ちょっと扱う分野を広げすぎている気がするし、どうでもいい話を深堀りしすぎている部分もある。

    興味ある章だけ拾い読みする分には面白い本。

  • 副題に、模造と真作をめぐる8つの奇妙な物語とあるように、最初、本屋で立ち読みしたときに、美術品の話(スパニッシュ・フォージャー:スペインの偽作者の意味)が第1章にあったので、「私はフェルメール(フランク・ウイン (著))」のような、アートの事件のようなものと思って読み進めていると、2章は化石のウソ、3章は合成ダイヤモンド、4章は化学合成されたフレーバーの話、5章は自然(動物:セイウチ)を映像としてみること、6章はシロナガスクジラの博物館展示に関する、本物は腐臭がするので、科学的知見をもって複製する話、7章はマヤのコデックス(マヤ人の残した古書)、8章はラスコーを含む古代遺跡アートの話で、全然違った。
    が、読み進めていくと、本物と偽物であれば、本物がいいに決まっている、と誰しもいいそうなことが、本書は、そもそも本物って何、偽物との境は思っている以上に曖昧なのだということを認識させられる構成になっています。

    合成ダイヤモンドは、科学的な意味において、本物と元素組成は同じであり、フレーバーも物質としては同じ。ヒトは、偽物の裏に潜む胡散臭さや騙されたことに反応するのであって、誠実に正直にストーリーが判明していれば偽物を受け入れる生き物なんだということだと思いました。
    ウソはいかん、というが、嘘も方便、ともありますし、自分の中で軸や基準を作ってブレないようにするのが重要なんだろうな、と思ったけど、そうそうできないよなぁなど、色々考えられる本でした。

  • ●アンディウォーホルは1987年2月に死去した。しかし彼の死は必ずしも、もうこれ以上新たなを彼の絵画が作られる事は無いと言う事を意味しなかった。シルクスクリーンのネガにより、彼の死後も新しい作品が作られた。彼はすべての作品に必ず何かの手を入れていて、それは「アフターウォーホル」には起こり得ないことだった。
    ●フォージャーとヘンリーはアート贋作の長い歴史の中で、人々に望みものを与えることで「ホンモノの偽物」がいかにそれ自体として収集の対象になったかを示している。それらが本物になるのは、もはや人を騙そうとしたくなったとき。

  • 個人的には、第2章が面白くなく、第2章の途中で「読むのを止めようかな」と思ったのですが、第2章の残りはひとまず飛ばして第3章を読み始めたところ、そこからは、「これなら読める」と思えた内容だったので、何とか読み切りました(第2章の残りも、あとで何とか読みました)。

    ちなみに、この本を読み終えた直後に、「レンブラントの「夜警」をAIで復活」という記事を目にし、「まさに「ホンモノの偽物」の話だ」と思いました。

    我々は何を「本物」と捉え、「偽物」に対し、なぜそう思ってしまうのかは、実はグレーで、「本物」と「偽物」との間にはグラデーションがあります。
    そのグラデーションを知る上で、また、「本物」や「偽物」の自分なりの基準を身に付ける上で、この本は役立つと思います。

    なお、自分としては、天然のダイヤモンドと人工のダイヤモンドの話(第3章!)が興味深かったです。
    どちらも本物のダイヤモンドですが、どちらに価値があると考えるかは、その人の価値基準次第。
    しかも、ダイヤモンドそのものの価値、というよりは、製品としてのダイヤモンドができあがる過程をどう考えるか、といった部分も、価値基準に関連していて、いろいろと考えさせられました。

  • ウォーホルが遺した版を使い、生前のウォーホルと同じ手法で刷られたシルクスクリーンプリントは「本物」か? 元素レベルまで天然ダイヤモンドと同一の人工ダイヤモンドを「偽物」のように感じてしまうのはなぜか? ドキュメンタリー映像は本当に「リアル」なのか? 歴史上のさまざまなエピソードを通して、フェイクとリアルの線引きについて考えるノンフィクション。


    本書はウォーホルで始まりバンクシーで終わる。モダンアートは本物を認証する権威への批判と挑戦を内包してこそだから、現代美術の世界におけるフェイクとリアルの線引きは今後ますます混沌としていくことだろう。バンクシーが博物館の展示に紛れ込ませたエセ旧石器時代アートの欠片はそうと知って見ればおふざけの産物でしかないが、博物館という場の権威によって三日間は「本物」だった。そして博物館から放りだされても、それはバンクシーの作品という意味で「本物」なのだ。
    これと同じ例として本書で取り上げられているのが、19世紀に中世絵画の贋作をしていたスパニッシュ・フォージャー(「スペインの贋作者」の意)と呼ばれる無名の画家。20世紀後半になってこの贋作者の手がけた作品が同定されていくうち独特のキッチュな画風にファンがつき、贋作と知って蒐集するコレクターが生まれていったという。19世紀の人びとを知る資料的価値があるとして、贋作認定後も美術館に入っているとか。
    科学的な裏付けを伴わない場面で何をリアルとするかは、その時代の人びとが「その物語にノレるか否か」で判断されてしまう側面がある。とても本物には見えない作り物の化石を信じたベリンガー教授の心理は18世紀の考古学熱を思えば然もありなんだし、かと思えば、発見者が語る来歴が怪しすぎるのでずっと偽物だと思われていた「グロリア・コデックス」が本物の古代マヤの遺物だったりする。
    上記のような歴史学上の反省があるかと思えば、人工フレーバーの開発史にスポットを当てた章もあるのが楽しい。今の「バナナ味」や「ブドウ味」を本物と比べて甘すぎると感じてしまうのは、そのフレーバーが開発されたとき市場に出回っていたのが今主流になっているものより甘い品種だったからとは。人工フレーバーの「リアルさ」はノスタルジーのなかにある、という締めが余韻を残す。
    美術系の分野に限らず、いろんな「偽物」と「本物」の物語を知ることができて面白かった。クローンやAIの問題なども含めれば、これから先はリアルとフェイクの違いを問うこと自体がナンセンスになっていくのかもしれない。

  •  いつも利用している図書館の「新着本」のリストで目に付いた本です。「ホンモノの偽物」という気になるタイトルは、私の注意を惹くには十分でした。
     “偽物”をテーマにした著作ですが、対象にしている範囲はいわゆる“贋作”に止まらずかなり広く取り上げているので、その対象ごとに興味深い切り口がいくつも提示されています。
     “多様な視点”を意識し、そこから“新たな気づき”を得るには有益な著作だと思います。

  • ふむ

  • 『#ホンモノの偽物』

    ほぼ日書評 Day330

    19世紀に(時代を偽って)中世絵画を多数描いたスパニッシュ・フォージャーなる画家の作品は「ホンモノ」の中世絵画ではないながら、その圧倒的な品質ゆえ逆にブランド化、高値で取引されるようになっている。

    シェークスピアの贋作者、ヘンリー・アイアランドは単なるサインの模造から、失われた作品の発見までやってのけた。素人目には相当な文章力(かつ古英語の知識: 大学の英語でシェークスピアを原文で読むという講義を取ったが、単語レベルで全く現代英語とは異なるもので非常に苦戦した思い出がある)がなければ、そんなことはできないと思うのだが。

    偽物では無いのだが、「へえー」的な話題。20世紀半ばに世界中で流通するバナナの種類が一変した。ひとつの種に特化しすぎたために病原菌によって瞬く間に絶滅したのだそうだ。

    と、まあ、知ってて何かの役に立つかというと「?」だが、マルクスの言う「交換価値」よりもむしろ「使用価値」に重きを置くような論調が興味深い。

    https://amzn.to/3oyEthj

  • 贋作だけど博物館に陳列…みたいな世界の贋作8点。技術と科学の進歩を感じるノンフィクション。

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著者プロフィール

1979年生まれ。著述家・歴史家。アリゾナ州立大学で歴史学と人類学の学位、科学史・科学哲学の博士号を取得。科学と物質文化の歴史に関心を抱き、現在テキサス大学オースティン校・歴史学研究所で客員研究員をつとめる。これまで調査活動を行ってきた地域は、南アフリカ、エチオピア、ウズベキスタン、イラン、アメリカ合衆国南西部。著書に『7つの人類化石の物語 古人類界のスターが生まれるまで』(白揚社)などがある。

「2020年 『ホンモノの偽物』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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