大都会の愛し方 (となりの国のものがたり7)

  • 亜紀書房
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本棚登録 : 159
感想 : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750516738

作品紹介・あらすじ

彼を抱きしめると、俺はこの世のすべてを手に入れたような気がした。

光と影が渦巻く大都市ソウル。
最低賃金のバイトをしながら、くずみたいな文章を書きなぐって暮らす〈俺〉は、どれだけ派手に遊んでも、消せない孤独を抱えている。
そんな日々のなか、梨泰院(イテウォン)のクラブでバーテンダーとして働くギュホと出会い、愛を分かちあう。

しかし〈俺〉には、人に言えない〝秘密〟がある……。(「大都会の愛し方」)


喧騒と寂しさにあふれる大都会で繰り広げられる多様な愛の形。
さまざまに交差する出会いと別れを切なく軽快に描く。
韓国で新時代の文学として大きな話題を呼んだベストセラー連作小説。

感想・レビュー・書評

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  • すごい面白かった!
    そもそもクィア文学を初めて読んだけれど、すごく共感できるし、よかった。
    文章でなかなか男を愛する人の心情が語られるのを見たことがないから珍しかったし、読んでいて楽しかった。

  • 4つのお話の中で「ジェヒ」と「メバル一切れ宇宙の味」が好きでした。

    「ジェヒ」は、お互いやりたい放題の夜の交友関係をしてて、性や性的指向なんかの違いを超えて心底ソウルメイトだと思ってた女性ヘテロ同居人が、あれよあれよと言う間にいわゆる”普通”の結婚をして主流社会に復帰して行った時の、取り残された孤独感に似た経験を重ねた者として痛いくらいの共感を覚えずにはいられなくて、少ししんどかった。

    一方「メバル」は純粋にある一つの恋愛の話で一つ一つの過程を堪能しながら読むことを楽しめた。そもそも前提として私が彼のキャラが好きだった。一回り違うその彼との初対面の描写(タトゥー、アイスアメリカーノのくだり)からしてすでに好きで、頭の中にそのあとの展開も含め、風景が完全にビジュアライズできて話に入り込んでいった。私的には俳優で言うと彼は「ペパーミントキャンディ」ぐらいのソル・ギョングさんか、日本だと大倉孝二みたいな感じ。いつも何かとlow keyな彼だけど、実は学生時代は熱心な学生運動家でその信念的な名残は全然健在で、GAPの星条旗のついたような服は着れないとか、オリンピック公園でデートする時はヨンくんの影響を密かに受けて今まで塗ったことない日焼け止めなんかしてきたりして、そんなくだりがたまらなく良かった。彼との関係に意識がいってしまっていたので、母親との方が少し理解がおざなりになっていたかもしれない。再読時にはそこにもう少し観点を置いて読んでみたい。おそらく母親は感づいていたけど言わない。ヨンくんも、彼女が気づいてるのかもしれない、気づいてるかもしれないことを自分も知ってる状況の中、真正面から伝えられないなら逆に、きっかけは不用意ではあったが知ってほしいような、でも病床でかつ敬虔なクリスチャンの母親でもある彼女に対して自発的な方向に踏み切れないもどかしさの中、何もかも知らないことにもっていこうとする葛藤が切なかった。

  • 叙情的、文章の書き方がなかなか良い

  • クィア文学は初めて読むジャンルで、性別や生活環境、性格や恋愛観など何もかもが私とは異なる主人公の話だった。

    実際私が登場人物たちの感情をどれだけ理解出来たかはわからないが、たまに琴線の触れる一文があったりなんかして、この作品から抜け出せない感覚に陥る。

    私がここまで恋愛に突き動かされるタイプではないことも相まって、唯一自分と似ていると感じたのは『メバル』で、被害者と加害者では無い〝はず〟の母親との関係が個人的に一番切ないと感じた。

    〝ほかの文学作品には求めない当事者性をクィア文学にだけ適用して決めつけようとするのはなぜなのか〟という訳者あとがきが何よりも沁みる、そんな一冊。

  • 久しぶりに会ったらきっとお互い「お前超老けたね」って言い合ったりしちゃうんだろうな。大学の近くのモールの喫煙室で、講義終わりにチューハイ片手に馬鹿話に興じていたのが、もう随分昔に感じちゃう。
    そんな感じで、本作第一編目を飾る「ジェヒ」は私に大学の友人を思い起こさせた。今となっては彼はもう結婚してしまって、すっかり疎遠になってしまったけれど。特に共通の趣味があるわけじゃないのに仲良く毎日つるんでたなんて、今考えると若かったからできたのかもしれない。だってそうでしょう?今も関係が続いている友人なんて、大体が映画や音楽、ファッションの趣味でつながっている人ばかりだ。
    ジェヒと主人公の男の共通点といえば、どちらもぺらっぺらの貞操観念の持ち主だということくらいかもしれない。お互いいつも男の話をして、ゲラゲラと笑って過ごす。まるで学生時代の私達のように。そして二人とも、とんでもなく口が悪いのだ。語り口もいい意味で軽薄で、飾らない言葉が並んでいく。なんとなく日本よりも「オカタイ」印象がある韓国の作家の、こんな文章を読むのも斬新で、大嫌いな紙の本だったけれどすいすいと読めてしまった。
    幸いなことに私の学生時代は男に関して言うなれば、ジェヒのようなドラマは起きなかったけれど(他の意味でのドラマ―それもとびっきりヘビーなやつはあった)、読み終えた時に訪れた寂寥感は、学生時代の親友の喪失に気付かされたからかな?あの頃の私も彼の好きだった女の子たちを、HDDのように記録していた。すぐに好きになって舞い上がっては振られて落ち込んで、超恋愛脳だった彼が今となっては一児の父だなんて信じられないくらい。そうやってジェヒも違う人生を歩んでいくんだろう。私も、主人公もすっかり取り残された側なんだ。

  • 明るかったり暗かったり日々の生活を感じることができて楽しかった。日常の中でお互い真実をぶつけ合うと傷つくというような文がぐさっときた。友達でも家族でも聞きたくない自分の真実は傷つくし、なかなか忘れられない。

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著者プロフィール

1988年、韓国・大邱(テグ)生まれ。2016年「パリス・ヒルトンを探してます」で文学トンネ新人賞を受賞し作家活動を始める。「メバル一切れ宇宙の味」(本書収録)で2019年若い作家賞大賞を受賞するなど、早くも2020年代を代表する新しい韓国文学の“顔”、最も将来が期待される作家の一人と位置づけられている。
著書に短編集『知られざる芸術家の涙とザイトゥーンパスタ』(第11回ホ・ギュン文学作家賞受賞、2018年)。エッセイ集『今夜は食べずに寝よう』(2020年)がある。

「2020年 『大都会の愛し方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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