見えないものを探す旅——旅と能と古典

著者 :
  • 亜紀書房
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本棚登録 : 66
感想 : 2
  • Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750516943

作品紹介・あらすじ

いつもの風景が、その姿を変える

単なる偶然、でも、それは意味ある偶然かもしれない。
世界各地へ出かけ、また漱石『夢十夜』や三島『豊饒の海』、芭蕉など文学の世界を逍遥し、死者と生者が交わる地平、場所に隠された意味を探し求める。

能楽師・安田登が時空を超える精神の旅へといざなう。


私たちには、「見えないもの」を見る力が備わっています。
「目」を使わないでものを見る力です。(まえがきより)

感想・レビュー・書評

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  • 下掛宝生流の能楽師、異才、安田登さんの雑誌連載を基にしたエッセイ集。能のワキとは「分く」から来た言葉で、あの世とこの世を分かつ存在、境界線に立つ存在だという。そのワキ方の安田さんが、能と旅と古典について記したエッセイは、まるで夢幻能のように、過去と現在、現実と幻の境界が曖昧になっていく。

    一ノ谷で肩に止まった赤トンボから平家を視る。旅先で会った古老から疱丁の包丁さばきを幻視する。ほうきや麻雀牌から隠れた意味を見出し、松尾芭蕉の歌を脳内ARに再生させる。

    こうしたことは誰にでも起きていると安田さんは言う。ただ、それに気づくか気づかないかだけだ、と。古典芸能や古典文学に触れることは、早回しのようになっている日々の時間軸を、ゆったりと、さらには引き伸ばしていくことにつながるのかも知れない。

  • 心の底から旅に出たいと思った。コロナ禍はつらい。

    "能のワキは旅人が多いが、能に限らず、古典の主人公はよく旅をする。そしてその旅人は何かの理由があって、属していた組織から追い出された者たちが多い。(略)
     日本人は昔から組織や共同体の中で自分の「物語」を紡いできた。(略)だから組織や共同体から追い出されるということは、物語を剥奪されてしまうということになる。
     物語がなければよって立つところもない。どこに足を置いたらいいのかわからなくなる。深い暗闇が大きな口を開いている。そんな穴の上に立たされるのと同じだ。
     そんな時、昔人は旅をした。物語を喪失した旅人はあてのない旅の途中で、ある場所と出会う。
     (略)
     漂白の旅人はそこで歌を謡う。
     なぜ歌か。彼が今まで生きてきたのは現実的な叙事的世界だ。散文的な世界だ。しかし、組織から追い出され、物語を失ったとき、今まで確固たるものだと思っていた叙事的世界がカラカラと崩れ、極めて不安定なものだということを思い知る。だからこそ、歌を謡う。歌は叙情(抒情)的世界に属する。韻文的な世界だ。彼の生は散文的世界から韻文的世界へと移行する。叙情的世界は、表層的には不安定でありながら、しかしその根底が真理につながっているがゆえに実は強固な真理世界なのである。" 105ページ

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著者プロフィール

能楽師。1956年千葉県生まれ。下掛宝生流ワキ方能楽師。高校教師時代に能と出会う。ワキ方の重鎮、鏑木岑男師の謡に衝撃を受け、27歳で入門。現在はワキ方の能楽師として国内外を問わず活躍し、能のメソッドを使った作品の創作、演出、出演などをおこなうかたわら、『論語』などを学ぶ寺子屋「遊学塾」を全国各地で開催。日本と中国の古典の「身体性」を読み直す試みにも取り組んでいる。著書に『能 650年続いた仕掛けとは』(新潮新書)、『すごい論語』『あわいの力』『三流のすすめ』(ミシマ社)、『日本人の身体』(ちくま新書)、『見えないものを探す旅 旅と能と古典』(亜紀書房)、『別冊NHK100分de名著 読書の学校 史記』『役に立つ古典』(NHK出版)など多数。

「2022年 『別冊NHK100分de名著 集中講義 平家物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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