戦争とバスタオル

  • 亜紀書房
4.19
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本棚登録 : 274
感想 : 21
  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750517100

作品紹介・あらすじ

タイ、沖縄、韓国、寒川(神奈川)、大久野島(広島)――
あの戦争で「加害」と「被害」の交差点となった温泉や銭湯を各地に訪ねた二人旅。


ジャングルのせせらぎ露天風呂にお寺の寸胴風呂、沖縄最後の銭湯にチムジルバンや無人島の大浴場……。
至福の時間が流れる癒しのむこう側には、しかし、かつて日本が遺した戦争の爪痕と多くの人が苦しんだ過酷な歴史が横たわっていた。

■タイ…………ジャングル風呂と旧泰緬鉄道
■沖縄…………日本最南端の「ユーフルヤ―」
■韓国…………沐浴湯とアカスリ、ふたつの国を生きた人
■寒川…………引揚者たちの銭湯と秘密の工場
■大久野島……「うさぎの島」の毒ガス兵器


嗚呼、風呂をたずねて四千里――風呂から覗いた近現代史

感想・レビュー・書評

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  • 第1章 ジャングル風呂と旧泰緬鉄道(タイ)
    第2章 日本最南端のユーフルヤー(沖縄)
    第3章 沐浴場とアカスリ、ふたつの国を生きた人(韓国)
    第4章 引揚者たちの銭湯と秘密の工場(寒川)
    第5章 「ウサギの島」の毒ガス兵器(大久野島)

    歴史修正主義がなんと言おうと過去は現在と繋がっていることを人の記憶や行政の記録、建造物や死者達が物語る。私達の国がどんなに酷い事をしてきたのか…直視するのはしんどいけれど、ほんわかタッチの絵と文章のおかげで情景が目に浮かぶし、おふたりが持つ「出会うべき人に出会うべきタイミングで出会うパワー」に驚かされながら最後まで一気読み。今も昔も、被害は隠され分断され広くは知られないまま忘れられるのを待っている。反対に私達にできることは
    「隠さず、繋がり、忘れない」ことなのかも。たまには温泉で息抜きしつつ、語り、伝え続けたい。

  • 「お風呂は究極の非武装」。温泉、銭湯を通して訪れる日本の加害の歴史。

    日本の負の歴史だろう加害の歴史。原爆など被害者としての側面に比べあまり話題にならない。本書はタブーに近いだろう加害の歴史を訪ね歩く旅。

    泰緬鉄道のタイ、沖縄、韓国と神奈川県寒川町の旧海軍工廠と毒ガスで知られる大久野島。

    ある程度予測はしていたが、本書の立ち位置は賛否別れるところだろう。個人的には、やたらと「歴史修正主義」という言葉であったり今の政府、行政を完全に疑ってかかるような姿勢に違和感。加害の歴史を探るだけでも十分な内容になり得ただろう。

    加害と被害は表裏一体。現在の価値観で過去を評価するところに無理があるように思う。過去の悪行を暴くことで時分が免罪されるように思えてしまうのだろう。

    沖縄の高齢女性だってどうしても仕事はどこかで米軍につながらざるを得ないし、泰緬鉄道で捕虜を虐待したコリアンガードもいる。毒ガス工場に徴用された人達だって被害者であり加害者でもある。
    そんな微妙な部分の扱いが、本書では雑なように思えた。

    お風呂を通じて歴史を探る試みとしては面白い内容でした。

  • 安田浩一さんと金井真希さんの組み合わせ。こんな本あったんだと図書館のおすすめ本コーナーから手に取る。
    特に毒ガス製造と使用については、ほとんど何も知らなかったので勉強になった。戦争を経験した人が生きておられるギリギリの年代になってきた。その人たちがいなくなりつつあるのと同時に、また戦争をしそうな国になりつつある。恐ろしいことだ。どうやって伝えていくかというのは大きな問題なので、この著者たちの取材と出版はとても意義があると思う。

  • チェ ビョンデさんに会ってみたい。

  • お風呂特有のゆるさがあって、絵もほのぼのしたタッチで和みながら読める。自動あかすり機の記述は笑った。でも、読み進めると戦争や、戦争によって人生を翻弄された人たちの感情に触れる。良書。

  • 内容的にはずっしりしているのですが…
    安田さんは分かりやすく丁寧に史実を書いてくれ、金井さんの素直な感情は読んでいる無知な私に共感してくれて、お二人の文章が交互に来ることにより、本当にすんなり読めました。

    すんなり読めましたが、"こんな大切なことをきちんと知らずに今まで生きていたのか"と反省し、恥ずかしくなり、とてつもなく申し訳なくなり…
    もっともっと本当のことを知りたくなり、お話を聞きたくなりました。

  • 女子栄養大学図書館OPAC▼ https://opac.eiyo.ac.jp/detail?bbid=2000055841

  • ノンフィクションライターの安田浩一氏と文筆家でイラストレーターの金井真紀氏はともにお風呂好き。二人でタイ、韓国、沖縄、大久野島などの温泉を巡り、湯けむりの先にある歴史を紐解くという歴史紀行本。
    風呂で出会った客や温泉関係者との語らいにはユーモアもあり、癒されるが、タイトルにあるように、基調には戦争がある。日本軍が残した負の遺産について、生き証人になる方が語るところは重く厳粛な気持ちにならざるを得なかった。
    特に深刻な気分になったのは現在はうさぎで有名な大久野島の毒ガス兵器工場の歴史に関する話だ。元教諭で大久野島のガイドをしている山内氏や工場で働いていた95歳の藤本氏の語りの中には、断じて風化させてはならない歴史があった。
    毒ガス兵器製造の事実が隠蔽され、島の人々が実情を知らぬまま、工場従事者の体に異変が起きる。後遺症で死ぬ人も続出するが、被爆者援護法のような戦後の救済措置は十分になされなかった。
    毒ガス兵器は中国戦線で多用され、民間人も犠牲となったうえ、戦後は毒液を海や川に捨てたり、土中に埋めたりして大量の毒ガスが中国大陸に置き去りにされた。
    大久野島には加害と被害両面に関する負の歴史が残っているのだ。
    この他、タイとビルマを結ぶ「泰緬鉄道」建設に20万人超の労働者を集め過酷を極める強制労働をさせたこと、終戦後、夫の故郷である朝鮮半島に来た日本人女性が支配者だった日本人ということで強烈ないじめにあい、精神を病んだりした事実、相模海軍工場でイぺリット製造に従事させられ、身体を病んでも十分な補償はしてもらえなかたった徴用工の話などの悲話も盛り込まれている。
    日本では気持ちを落ち着かせるために風呂に入るが、韓国では風呂が垢を落とし、体に刺激を与え活力や鋭気を養う場所になっているという記述は新鮮で面白かった。
    沖縄唯一の銭湯「中乃湯」の話など、風呂巡りと戦争がうまく融和したレポートもあるが、戦争の悲劇的な歴史が突出している部分も多い。だが、それはそれで、立派なルポになっていると感じた。

  • お風呂ってみんな無防備じゃないですか。言ってみれば究極の非武装。だからこそみえてくる風景もあると思ったんです。実際、今回の取材でもお風呂を切り口とすることで、人間の奥深さや戦争の罪科が見えてきました。(P371)付録対談・旅の途中で/より

    タイのジャングルの露天風呂、沖縄県唯一の銭湯、韓国の温泉そして日本。丁寧なイラスト、資料が配され、日本と戦争の関わりを考えさせられる一冊。

  • 現代史必読書というてもよい。
    安田浩一さんのあとがき、おわりに、のところに

    排他の空気に満ち満ちた、いまの社会に対する私たちの小さな抵抗でもあるから

    と。この本の存在意義。安田浩一さんと金井真紀さんが、歩いて出会った人との貴重な記録。

    こんなコンセプトで実際にたどり着き出会い聞いて答えて聞いて書き付け、私たちの血肉に、忘れてはいけないものを刻みつけ?お二人の行動力人間力よ。
    そしてほのぼのと、人柄を感じる金井さんのイラスト。油断させて、ギスギスしないで、人や物の本質をつく。

    排他の空気に満ちたこの国の人の必読書じゃないかな。

    装丁も素晴らしい。

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著者プロフィール

1964年、静岡県生まれ。週刊誌記者を経てノンフィクションライターに。2012年、『ネットと愛国』(講談社)で講談社ノンフィクション賞受賞。2015年、月刊誌「g2」(講談社)に発

「2022年 『沖縄の新聞記者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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