満月をまって

  • あすなろ書房
3.55
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本棚登録 : 276
感想 : 35
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  • Amazon.co.jp ・本 (32ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784751519813

感想・レビュー・書評

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  • 大好きなバーバラ・クーニーの晩年の作品。
    100年以上前のアメリカで、籠を作って暮らしていた人たちの話。
    詩的なタイトルと、抑えた色調で丹念に描かれた絵。そして篤実な語り口。
    それだけに、想像も出来ない中盤の展開に、胸が痛むほど戸惑ってしまう。

    父の背中を見て誇りにしていた籠作りの仕事は、町の人からは嘲りの対象だったのだ。
    心ない人たちだと言うのはたやすいが、誰しも心の中にこういう部分はある。
    人はみな、理解の出来ないものは排除したがるからだ。
    これだけ大人になってもまだ、私もそういう目に遭うことがある。
    万人の理解など得られるはずもなし、恥じるところがなければそれでいいのだが、主人公の少年はまだ9歳。
    受け入れられずに苦しむのは、当然のことだろう。
    このお話のポイントは、そこからどう立ち上がるか、である。

    「刑事ジョン・ブック」という作品を思い出す。
    映画化された方は確かハリソン・フォード主演の「目撃者」だったと思う。
    事件の目撃者である少年はアーミッシュの村の住人。
    自力で自治体を築き、外の世界には何一つ迷惑もかけていないのに、町に出ると執拗な虐めに遭う。
    嫌な気分になる場面だが、人間とはいつの世も変わらないのだ。
    謂れのない偏見や差別は世界中に蔓延しているし、決してなくなることはないだろう。
    そしてあなたも私も、決してそれをしないという保証もない。
    たくさん学び、細心の注意をはらっていても降りかかるときはあるし、不注意で巻き込まれる時もある。
    その時どうするか、それが大切なのだ。

    閑話休題。
    もろく壊れかけた子どもの心に語りかける職人仲間の言葉が、とても素敵だ。
    自然から教えられたことに耳を傾け、よく考え、想像すること。
    地に足を付け、自分のやるべきことをやって暮らすこと。
    誇りや満足は、あとからついてくるということ。
    生きることと働くことの根源を見つめ直して、最後はまた満月を楽しみに待つ少年の姿に、こちらも深く深く満たされる。

    約20分かかるので、なかなか子どもたちに読む機会がないかもしれないが、もしも許されるなら後書きもぜひ。
    文化も技術も、継承していくことの大切さと困難さとを、子どもなりに感じてくれるかもしれない。高学年以上に。大人にもおすすめ。

    • nejidonさん
      風花さん、こんにちは♪
      コメントとフォロー、ありがとうございます!
      実はだいぶ前にそちらにコメントを入れ、フォローもクリックしたのですが...
      風花さん、こんにちは♪
      コメントとフォロー、ありがとうございます!
      実はだいぶ前にそちらにコメントを入れ、フォローもクリックしたのですが。。
      しばらく待っても何もなかったのでご迷惑かと思い削除してしまいました(涙)
      すみません。わたくし、とても気が小さいのです。
      わざわざ起こしいただき、コメントもいただいて恐縮してます。
      これを機に、どうぞよろしくお願いします。
      風花さんの本棚、とても好きです。
      2017/08/30
    • 風花さん
      nijidonさんこんばんは。
      とても間が空いてしまいましたがコメントさせてください。
      こちらこそよろしくお願い致します(^^)

      ...
      nijidonさんこんばんは。
      とても間が空いてしまいましたがコメントさせてください。
      こちらこそよろしくお願い致します(^^)

      nijidonさんは読み聞かせをされているのですか?絵本の感想を見ていて、そうなのかなと。実は今アルバイトあるいはボランティアで読み聞かせをしたいと思って探しているので、気になってお聞きしました。
      教えていただけると嬉しいです。
      2017/09/25
    • nejidonさん
      風花さん、こんばんは♪
      コメントをいただき、ありがとうございます。とても嬉しいです。
      はい、幼稚園から中学生までの読み聞かせをしておりま...
      風花さん、こんばんは♪
      コメントをいただき、ありがとうございます。とても嬉しいです。
      はい、幼稚園から中学生までの読み聞かせをしております。
      そのうち、幼稚園と小学校は放課後で、中学生は不登校のクラスです。
      その都度プログラムを考えるのが大変で楽しいです(笑)
      本を持つ手と開き方の技術、読み方の技術等それぞれありますが、一番の難関は選書です。
      ぜひ風花さんもご一緒に!
      お知り合いの中ですでに活動されている方がいらしたら、そちらに聞いてみるとか、
      自治体の㏋でボランティア関係を調べてみるとか、そんな取っ掛かりでよろしいかと。

      それから、この本は昨秋中学生向けに読みました。
      読んでいる私が、涙で声が詰まってしまいました・(笑)
      2017/09/25
  • トネリコの枝を編んで作る、美しく丈夫なかご。山に住む人々は、かごを作り、街へ売りに行くと、心ない声を浴びせる人がいる。それでも、誇りを持って作り、生きる姿が清々しく感動的です。

  • 〝もうすぐ満月になる。父さんが造る籠みたいにまんまるい満月に。満月になったら、父さんはハドソンに行く。今度こそ、ぼくを連れってて貰えるかも知れない〟・・・今から100年以上も前のこと、アメリカ北東部の山あいの地方に、籠を造って生計をたてている人達がいた。丈夫で美しい籠を造るための技術と精魂こもった情熱は、長い間、父から子へと伝えられていくことに・・・。最後の作品となったバーバラ・クーニ-(1917-2000)の絵が、とても素晴らしい絵本です。

  • 日本語のタイトルに違和感があって

    山奥でカゴを作って 街に出て売る
    少年は父と一緒に 街に行くことになり

    街では山猿と言われ 人々は カゴの良さには 気づかないよう

    大自然の声を聞きながら生活している人たちのよさは に 都会ではわからない

  • ちょっと悲しい、素朴なおはなし。

  • ニューヨークから、それほど遠くない山あいの地方に、
    かごをつくって、生計をたてる人たちがいました。

    満月の日に、父さんは街へかごを売りに行く。
    僕はいつか一緒に連れて行ってもらえることになっているのだ。
    父さんたちが作るじょうぶなバスケットは僕の誇りだった。
    僕もバスケットを作るのをてつだった。

    9歳になったある満月の日、ついに僕も街へ出かけることに。
    色とりどりの街に見せられて帰ってくる道すがら、
    街の男たちから、
    山ザルのかごはおんぼろのクソッタレかごだと、
    大声でどなられます。

    家に帰った僕は、もう父さんも、カゴも憎らしく、悲しくなっていました。

    そこへ、かご作りの仲間のビッグジョーがやってきて言います。

    「風からまなんだことばを、音にして歌いあげる人がいる。詩を作る人もいる。風はおれたちには、かごを作ることをおしえてくれたんだ。」

    ぼくにも、風の声が聞こえる時がくるのです。。


    素敵だなぁ。

  • このお話がわかる人たちの中で暮らしたい。
    誠実に生きることの大切さがしみじみと心に伝わってきて、思春期の主人公の心の葛藤が美しい絵で描かれています。
    満月を待って とは、満月のように心に満ちてくる思いを大切に待って、という意味でもあるのでしょうか。
    クーニーの絵本の中で、一番訴えるもののある絵本だと思います。

  • 娘には少し難しかった気がするけれど大人になったらもう一度読んでみてほしい本。絵も文も題材も素晴らしい。父親の家業が子供にどう映るか、覚えのある心理描写が心のひだに触れる。

  • 満月の明りがこうこうとあたりを照らし出す頃に、読みたくなるのが、アメリカの人気絵本作家バーバラ・クーニーの最後の作品、「満月をまって」です。
    今から100年以上も前のこと、アメリカのニューヨーク州ハドソンからそれほど遠くない山あいの地方に、かごをつくって生計をたてている人たちがいました。このかごをハドソンの町に歩いて売りに行くのですから、帰りが遅くなっても、お月さまが道を照らしてくれる満月の日に出かけます。・・・じょうぶで美しいかごをつくるための技術と、山奥での暮らし。
    しずかに、ゆっくり大人のあなたも味わってほしい。

  • たぶん15〜20分ぐらい

    高学年向け

    かご職人の息子が街についていくのを許されたが
    都会の人達にバカにされ葛藤するお話

    日本語訳が素晴らしいのか
    情景が脳裏に想像できるような言葉で綴られている。
    絵も素晴らしいが朗読でも良い。

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