愛あるところに神あり (トルストイの散歩道 5)

  • あすなろ書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (101ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784751523858

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  • 裝幀/和田誠

  • 『愛あるところに神あり』
    妻と息子を亡くし、つらい運命を背負った靴屋の老人。
    ”息子が死ぬことも、お前が生きることも神様が定めた。そのほうがいいから。自分の楽しみのために生きるのではなく、神様のために生きれば気が軽くなる”と教えられ、福音書を読みだした老人は、ある日神様のお告げのような声を聞く。”明日行くから”という天からの言葉。

    老人は窓から通りを眺めながら、天からやってくるであろう救世主を待つ。窓の外では寒さに凍える人たちや、争いを始めようとする人々が見える。老人は彼らを助け、神様の教えを説く。
    すると老人の前に先ほど助けた人々が次々に姿を現して言う。
    「わたしに気づかなかったのか?」
    老人は気づかぬうちに困っている人に扮した神様をもてなしていた。

    ---------------------------------------------

    『火の不始末は大火のもと』
    隣り合う二つの百姓一家が仲良しだったのは昔のこと。息子たちの代になってからはつまらないことがきっかけで、やったりやられたり、やりかえしたりの応酬で裁判沙汰を繰り返していた。

    ある時、隣の家の主人に恥をかかせようとした嫁が彼に打ちのめされてしまう。裁判の結果、手を出した隣の家の主人はむち打ちの刑になる。

    息子が家の主人となり、隣人といがみ合うようになった老人は神の教えを伝える。
    「相手が一方の頬を殴ったら、もう一方の頬もなぐれ、と差し出せばいい。相手が悪態をついても自分は黙っていろ。じっと我慢すればわだかまりはなくなる。火は初めのうちに消さなければならない。燃え上ってしまえば手がつけられない」

    隣人と仲直りをしようと思う主人だったが、彼が目にしたのは彼の家の納屋に火をつけている隣人だった。
    彼の家は焼け落ち、家財道具や家畜を失うが、彼は隣人の犯行だと話すことはなかった。
    「主や、光栄は汝に帰す!」と祈る老人。
    隣人同士のいがみ合いはやがて消え、助け合って家を再建し、彼らの暮らしは以前よりも向上する。

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    よくないことがあって悲しい気持ちの時も、”神様がそう決めたんだ。そうれなければもっとよくないことが起こっていた”と考えれば気が楽になる。

    ”隣人を愛さずにいがみ合い、火がつくようなことがあれば燃え上ってしまい、お互い大変な目に合う”という老人が説いたキリストの教え。
    隣にいる人を憎いと思っている時、隣の人も自分を憎んでいる。自分が隣人を愛しせば、隣人も同じ気持ちで自分に接してくれる。

    正論過ぎてぐうの音も出ないとはこのことで、トルストイさんのおっしゃることは正しい。
    正しいからこそ、間違ったことばかりしている自分には耳が痛い。

    何か行動する時に”神様がこう言っている”からそれに従って行動する、ということは自分にはない。そもそも神様の教えを知らない。
    小学生の頃、学校の周りで聖書を配っている人がたまにいたけどなんか怖くて受け取れなかった。福音書も読んだことない。
    ただ、何かしらの神様が自分の心のなかにいると思って、日々それに従い、それを支えとして生活していくのは精神的に安定する生き方なんだろうなとは思う。実感はないけど。

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    「主や、光栄は汝に帰す」の意味を検索してみた。難しい…。
    https://www.gotquestions.org/Japanese/Japanese-honor-God.html

  • 読んでいたら、妻に「宗教の本?」っと言われてしまいました。神=宗教なんでしょう。まぁある意味宗教関連本とも言えないところもありませんが、ただの民話なんです。
    神を信じなくても信じていても、仏教でもイスラム教でもこれを読んで「くだらん」とは思わないと思いますよ(細かいところはツッこむかもしれませんが)
    日々何かにイライラしてる人、何かうまくいってない人。
    読んでみてはいかが?
    特に二話目の「火の不始末は大火のもと」なんて昨今のつまらんご近所トラブルには持って来い。でも当人たちは読んでも「くだらん」っと大火が起きるまで気がつかないだろうと思いますがね。
    っという訳でまだ「火」がついてない皆さんは今のうちにいかが?

  • あすなろ書房/2006・6・15
     トルストイの散歩道
      愛あるところに神あり

      トルストイ
     訳:北御門 二郎
    装幀:和田 誠

  • 実家に保管☆

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著者プロフィール

19世紀のロシアを代表する小説家、思想家。ロシア・ヤースナヤ・ポリャーナに伯爵家の四男として生まれる。非暴力主義の思想のもと、文学のみならず、政治や社会にも大きな影響を与え、また、自ら教科書を執筆・編集し、教育にも力を注いだ。代表作に『戦争と平和』『アンナ・カレーニナ』『復活』など。『イワンの馬鹿』は、1876年(トルストイ56歳)の作品。

「2020年 『イワンの馬鹿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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