小学生までに読んでおきたい文学 すごい話 (6)

  • あすなろ書房 (2013年10月31日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784751527467

作品紹介・あらすじ

グリム「ねずみと小鳥とソーセージ」、マーク・トウェイン「山彦」、岡本綺堂「蛇精」、サローヤン「冬を越したハチドリ」など、すごい話を17編収録。

感想・レビュー・書評

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  • 【グリム「ねずみと小鳥とソーセージ」】
    ねずみと小鳥とソーセージが仲良く一緒に暮らしていました。
    しかし小鳥は友達に囁かれたことが原因で、互いの仕事の分担を変えようと言い出しました。
    それによりみんなは呆気ない最期を遂げることになってしまったのです。

    …昔話コワイ(-_-;)

    【広津和郎「ある夜」】
    家の中を這うゲジゲジを見ながら、あんな虫にある知恵を恐れたり、哀れを感じたりする話。

    …これもなかなか印象的。
    この「小学生までに読んでおきたい文学」シリーズでは、初めて読む日本人作家が多いのですが、どれもかなり印象的だった。

    【サローヤン「冬を越したハチドリ」】
    冬に弱ったハチドリを保護した祖父と孫。
    ハチドリは元気を取り戻してまた自然に返っていく。
    春になりまたハチドリたちが元気に飛ぶようになった。
    だが自分たちが助けたハチドリは冬を越せたのだろうか?
    祖父は孫にいう。「一羽一羽が全部あいつなんじゃ」

    …一つのものを好きになったら全てが輝く。
    「星の王子さま」「わがままな大男」などでも書かれているこの情景は美しいです。

    【蒲松齢「宅妖/小官人」】
    家に現れる小人のお話。ちょっと奇妙だけど害はないという小品。

    【小泉八雲「ちんちん小袴」】
    これも家に現れる小人のお話。
    小泉八雲が冒頭で「日本人は物を大事にするし、日本の子供は躾けられて暴れたりしません」と書かれていて、なんとももぞもぞもと切ない気持ちに。
    ちゃんとしていない人には、物の精が現れて罰を与えるんですよ、という話。
    物がちゃんとした扱いをされていない!と怒り、人間は物を敬って扱うというのはいい風習ですよね。(だが私は整理整頓が苦手で家はぐっちゃ〜としているから、いつかナニかが夢枕に立つだろうか/ーー;)

    【ブラックウッド「小鬼のコレクション」】
    あるお屋敷には魔物が住んでいて、金ピカな物が大好きでちょっと拝借されてしまうというお話。

    【上田秋成「夢応の鯉魚」】
    絵のうまいお坊さんが、鯉になった夢を見て…。

    【芥川龍之介「杜子春」】
    改めて読んでみると杜子春はなかなか根性があり、人の情を解する、根はいい奴だと思った。

    【E・ハミルトン「追放者」】
    SF作家たちの語り合い。一人の男が言う。
    僕は自分の作品のために、ある世界を作ったんだ。するとその世界が具現化したことが分かったんだ!
    僕はもっとその世界を現実にするためにいろんなことを想像した。そして僕自身をその世界に住まわせようとしたんだよ。

    …オチは見えるし、似たようなテーマもある。
    私としては「一生懸命生きてるんだからそんなこと強調しないでよ!」と思ってしまうのだが。

    【ポー「ヴァルドマル氏の病症の真相」】
    死にかけている人に催眠術は効くのか?
    私は瀕死のヴァルドマル氏の了承を得てこの実験を行った。
    「わたしは、眠っている。死ぬところだ」
    だが肉体は完全に死ぬと、恐ろしい言葉た出てくる。
    「わたしは、眠っていた。だがいまは、死んでいるんだ」
    病室がパニックになった。
    わたしは彼を起こすべきなのか、完全に死んでいるのだが催眠術にはかかっている彼を?

    【岡本綺堂「蛇精」】
    蛇退治の名人、通称蛇吉という若者がいた。父も蛇退治の達人で、彼らにしかできない薬を使い蛇をおびき寄せたり、戦ったり、村々では蛇が出ると必ず呼ばれていた。
    そんな蛇吉は巨大なうわばみと命懸けの勝負に出たことがある。この時は亡き父の秘伝で勝ったのだが、あまりにも不思議なその勝負に村人たちは「蛇吉は、蛇の精なのではないか」と言われるくらいだった。
    そんな蛇吉が女房をもらった。身持ちの悪い年増女で病ももらっているという。
    だが周囲の心配に反して二人は仲睦まじく、女房の病も癒えいていったという。
    だがある時、蛇吉に隣の村から巨大うわばみ退治の依頼が来た。
    今度の今度は気が進まない蛇吉だが、周りからのたって頼みででかけていった。
    以前の命懸け勝負よりもさらに危険な闘い、もう亡父からの秘術も使えない。
    蛇吉はうわばみを倒したが、自分も瀕死の重傷を追った。
    家に帰ると病床から女房には家から出るようにと言う。
    女房が仕方なくでかけ、しばらくして様子を見ると、蛇吉の姿はどこにもなかった。
    村人は、やはり蛇吉は蛇の精で、元の姿に戻って山に返ったのではないかと噂した。
    女房はそれは強く否定したが、だが蛇吉が姿を消した理由だけはわからなかったのだ。

    【小熊秀雄「お月さまと馬賊」】 
    あまりにも月が綺麗なので、馬賊の大将は襲った村の酒場ですっかり酔っ払ってしまって、あっさりと兵隊に捕まってしまいました。
    いままで散々暴れた馬賊のしかも大将なので、そのまま打首になりました。
    ある時馬賊の手下が獄門の下を通ると、さらされている大将の首が話しかけてきます。
    「俺はすっかり馬賊暮らしが嫌になったんだ。いまでは達者で毎日気楽に月見しているから俺のことは木にしないでくれ。お前達も馬賊なぞ辞めて月を見る風情を持つようにな」
    数日後、その手下の首は大将と一緒に獄門に並びました。手下も月が綺麗で馬賊がいやになり、あっさり兵隊に捕まり打首になったのです。
    こうして馬賊の大将とその部下たちの首は次々に獄門に並び、月夜には豪快に合唱をしたり笑ったりしているのです。
    さすがに大男たちが毎晩騒ぐので村人たちから苦情が出て、兵隊たちはその首を山奥に埋めてしまいました。ああ、お月さまが見られなくて寂しいなあ。

    …豪快で笑ってしまうんだがラストがちょっと残念。「首はまとめて山に捨てられ、今でも月夜の晩には合唱の声が…」とかにしてほしかったんだが、馬賊だからしょうがないか。

    【マーク・トゥエイン「山彦」】
    蒐集家というのは、とにかくなにかに夢中になると留まることがありません。
    私の叔父はかなりの裕福で、その後継者である僕も毎日遊び暮らしていました。
    しかし叔父は蒐集癖に染まり、その財産をどんどん食いつぶしていったのです。
    叔父がそれほどまでにのめり込んだのは、今までのどんなコレクションも最後の最後に一番大切なものが手に入らず、悔しくも諦めざるを得なかったからなのです。
    そしてそんな叔父が最後に目をつけたのは山彦(エコー)の蒐集でした。山彦のために次々に山を買ってゆく叔父ですが、これもまた強力なライバルがいて、互いにつぶしあいになってしまいました。

     だから僕が受け継ぐはずだった財産はすっかりなくなり、受け継いだのは膨大な借金と、そしてほら、あなたに買っていただきたいこの山彦を響かせる山なのですよ。

    【チェーホフ「かけ」】
    一瞬で命を立つ死刑と、一生閉じ込められる終身刑はどちらが残酷か?という論議からその賭けは始まった。
    死刑のほうが耐えられない、終身刑と言っても15年くらいなら閉じ込められても平気だと行った法学生に銀行家が、それなら成功したら莫大な賞金を払おうと言ったのだ。
    食事や本や嗜好品などは望めば何でも与えられるが、完全に閉じ込められた状態で、人はなにを欲しがるか、人はなにを考えるのか。
    しかし15年まであと少しという時、銀行家は破産寸前で、このまま法学生に賞金を払えば完全に崩壊してしまうところまで落ちぶれていた。そこで銀行家は法学生を殺してしまおうと彼のところへ忍び込む。その時銀行家は、法学生の書いた手記を読んだのだ…

    【E・M・フォースター「岩」】
    小さな村で遭難した夫婦は村人により助けられた。
    一体命の代償としてなにを謝礼とすればよいのだろう?なにを渡しても足りないだろう、村人たちも、友人たちも、彼がなにを渡すのかを注目するようになった。
    悩んで悩んで夫が出した答えは、”なにもしない”だったのだ。
    彼は全財産を処分し、寄付し、無一文になり村人に使役されることで謝礼としたのだ…。

    【ブッツアーティ「コロンブレ」】
    少年は父の跡を継いで船乗りになりたかった。だが最初の航海で”コロンブレ”を見たのだ。
    コロンブレは目をつけた相手を取り殺すという。父親は少年を海から離した。
    だがコロンブレがいるからこそ少年は船乗りに憧れ、ついには海に戻った。
    長い長い航海の間、彼の船の跡をコロンブレは着いてきた。常に、執拗に。コロンブレがいるからこそ彼は海から離れられなかった。
    彼が老境に達し、最後の航海に出た時に、ついにコロンブレと対決しようとする。彼は小さなボートで海に降り、自分を50年も追っていたコロンブレと相対する。
    しかしコロンブレに告げられたのは、彼の思いとは全く反対のことだったのだ。

    …なんというか、これは…何がしたかったんだ状態…。
    生涯の緊迫感と立ち向かう気持ちがあったということで良かった、でいいじゃないか…。

  • 著者の名は知っているが、
    選択されている作品はほとんど読んだ事が無かった。

    グリムやポー、
    チェーホフや八雲に龍之介…etc

    <あの作品>を読んでいるから
    作風は大体わかる。なんて、思い上がりも甚だしかった自分をバカだと思った。

    中には
    恐ろしい話や、涙腺崩壊な話もあったが、
    全部<すごい!>の風呂敷に包んでも間違いのない作品集。

  • 本当にすごい話。1番初めにチェーホフの「かけ」を、読んだのだが、圧倒されて何度も読んでしまった。深い。深すぎる。他にも短いのに圧倒されるお話しばかり。これは読むべき。小学生向けにふりがなが、ふってあり、注釈も細かい。

  • やっぱり古典は面白いなぁ。昔の話の方がぶっ飛んでる気がする。

  • 何これ面白い。ちょいグロい話もあるけど、これまで知らなかったタイプのお話に触れられてよい。短編集だから読みやすいし。にも関わらず子どもはNGで断念してて、残念。

  • 収録作品
    ・グリム 「ねずみと小鳥とソーセージ」
    ・広津和郎 「ある夜」
    ・サローヤン 「冬を越したハチドリ」
    ・蒲松齢 「宅妖/小官人」
    ・小泉八雲 「ちんちん小袴」
    ・ブラックウッド 「小鬼のコレクション」
    ・上田秋成 「夢応の鯉魚」
    ・芥川龍之介 「杜子春」
    ・E・ハミルトン 「追放者」
    ・ポー 「ヴァルドマル氏の病症の真相」
    ・岡本綺堂 「蛇精」
    ・小熊秀雄 「お月さまと馬賊」
    ・マーク・トウェイン 「山彦」
    ・チェーホフ 「かけ」
    ・E・M・フォースター 「岩」
    ・ブッツァーティ 「コロンブレ」

    上田秋成と芥川龍之介の作品は中国文学を元にしているし、小熊秀雄は舞台を中国としているので、なんとなく中国系の話が多く感じる。
    さすが、中国。
    器がでかくてすごい。

    岡本綺堂は「蛇精」は、上田秋成が書きましたと言ってもいいくらいの雰囲気をもった作品であるけれど、実は文明開化も近い文久の出来事。
    恐いような切ないような愛しいような。
    蛇は嫌だけど。

    ポー、チェーホフ、フォースターの作品は、生と死と人間の尊厳をかけたすごい話。
    小学生にわかるかな?
    マーク・トウェインの作品をすごいと思うか、ばかばかしいと思うかは人生への向き合い方によるかもしれない。

    一番気に入ったのはE・ハミルトンの「追放者」
    作者は「キャプテン・フューチャー」で有名なSF作家。
    私はハミルトンの長編を読んだことがないのですが、短編の傑作「フェッセンデンの宇宙」を彷彿とさせる世界観はとても面白かった。

  • まず3行で。

    「すごい」話を集めた短編集。
    どきどきわくわくの読書を楽しめました。
    文学らしく小難しめになってますけどね。

    さて、気取って書いてみよう。
    当初目次を眺めつつ、
    (この本は、「すごい」という題で私の興味を惹くのに成功したが、果たしてそれに見合う話が選出されているのか?)
    とこう思った。
    読んでみると、確かに「すごい」。
    人並みに読書はしてきたつもりだったが聞いたことのない話ばかりだった。(外国の話は殆んど読まないので)

    はじめの方は小学生でも十分にわかるような話。
    例えば、「ねずみと小鳥とソーセージ」は登場人物の取り合わせが既に突飛で驚く。
    童話でありながら急転直下で呆気にとられる結末に。
    珍妙・奇怪なストーリーである。

    「ある夜」が最も印象に残った。
    モノローグ、日記風の自己完結のお話。かなり短い。
    ゲジゲジの挙動を生真面目に書いて、その時々に考えたことを解説してくれる。
    しょうもない。しょうもないのに面白い。

    小学生までに、と限定せず、中高生だろうと成人だろうと読んで損はない。
    単純に面白く感心するし、「かけ」や「岩」、「杜子春」では人間や、人生の価値に思考を巡らせて含蓄を見出すこともできよう。
    難しい語に脚注がついているのもありがたかった。

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著者プロフィール

一九四七年、東京生まれ。編集者(元筑摩書房専務取締役)。書評家。東京都立大学中退。七〇年、筑摩書房に入社、書籍編集者として五百冊以上の本を編集。『ちくま文学の森』『中学生までによんでおきたい日本文学』『日本文学100年の名作』などのアンソロジーを多く手掛ける。「ちくま文庫」「ちくまプリマー新書」を創刊。九六年よりTBS系テレビ「王様のブランチ」のコメンテーターを十二年半務める。著書に『編集狂時代』『印刷に恋して』『「本」に恋して』『「王様のブランチ」ブックガイド200』『縁もたけなわ』など。

「2024年 『編集を愛して』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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