- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784751529379
作品紹介・あらすじ
生物学の礎にして、「もっとも世界に影響を与えた本」といわれる『種の起源』。
地球の年齢も、遺伝の仕組みも知らなかったダーウィンは、
どのようにしてこの独自の思考を組み立て、歴史的名著を書き上げたのか?
本書は、チャールズ・ダーウィン著『種の起源』(1859年第1版)を、
レベッカ・ステフォフがリライトしたものである。
大幅にボリュームが圧縮され、言葉も平易に置き換えられて、
ダーウィンの思考過程がより明確になった。
さらに、現代科学の最新動向に関するコラムも加えられ、
21世紀にふさわしいコンパクト版にアップデートされている。
感想・レビュー・書評
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本として素晴らしい。『種の起源』の価値について疑念を抱く人は今やほとんど存在しないだろうし、この本の図版の豊富さ、わかりやすさ、コラムの面白さ、しかもオールカラー。ブックデザインもとてもいい。2500円が高いとは思えない。
でも、予想より難しかった。原著は(の直訳、岩波文庫)は難しいと聞いていたので、私程度の人間にはYA向けにリライトされたくらいのものがピッタリだろうと思って読み始めたのだが、スラスラ読めるほどカンタンにはしていない。
文章が難解というわけではないが、平易に書かれているわけではない。ここは図にしたらわかりやすいな、というところでも、原著に従って言葉で説明してある。原著のボリュームはダウンされているけど、現在では誤りであると分かっている部分がカットされてはいるけど、予想以上に原著に忠実なのだろうと、読んでいて感じた。「できるだけ原文を残すように努めた。とくに、美しい描写や情熱のこめられた有名な箇所はなるべく原文通りにした。」(P20)とあるが、これも(どこが有名な箇所か知らないが)そうだろうと思う。ダーウィンの熱い思いが伝わった。
でも、だからこそ、1859年、まだ電灯もなく、地球の歴史は3億年だと思っていた、細菌の存在も大陸移動も知らなかったダーウィンが、飽くなき観察と様々な生き物で繰り返した実験で進化の核心をきちんと掴んでいたことに、畏敬の念としか言い様のない気持ちを抱いた。
「ある属が多数の種を抱えているということは、そうした種は個体数を増加させ、形質を分岐させ、別種になることを促進するような何らかの利点を、祖先から受け継いでいるということの表れなのだ。」(P76)
「(もっと重要なのは)広い範囲に多数生息している変種は、狭い中間地に少ない個体数で生息している中間的な変種よりずっと有利であるという点だ。なぜなら、個体数が多い生物集団はつねに、有利な変異を生じさせる割合が高い。個体数が多いということは、自然選択が作用する直接の素材が豊富であるという意味だからだ。生存をかけた戦いでは、数が多くてありふれた生物の方が、そうでないものより、すみやかに変異が生じて改良されるだろう。そして、そういう生物は、数が少なくまれであるものを打ち負かし、取って代わる傾向が大きいのである。」(P99)
「長い時を経れば、トビウオは変異を積み重ねて完璧な翼をもった動物へ変化する、と考えることができるかもしれない。もしそうなったら、移行期のトビウオは開けた海原で暮らし、翼としては原始的なヒレを、大型の捕食魚から逃れるためだけに使っていた、とは誰にも想像できないだろう。」(P102)ユーモアもあるダーウィン。
「よく似た生物のあいだでは、競争は熾烈なものになりやすい。だからこそ、適応し改良されてきた種の子孫は、往々にしてその親種を絶滅させるのだ。新旧の種はよく似ているために、自然界で同じ場所を争うのである。」(P157-158)
『絶滅の人類史』にもそういうことが書いてあったなあ。
今となっては当然の学説も、発表当時いかに衝撃的なものであったかも、書き方から伝わってくる。だから、繰り返し、実証を交えてあらゆる面から検証していく。
資産家の家に生まれ、働く必要もなかったダーウィン。小人閑居して不善をなすというが、大人は閑居して大仕事をやってのける。
本当に感動した。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
生物学で最も重要な本、「種の起源」を学ぶ短縮お得パックな感じの本。
本家が出版された頃はキリスト教下の創造論が常識でした。その常識に立ち向かうために、本家では変化を伴う継承を支持する大量の実例が必要でした。その結果、本家「種の起源」は実例まみれの本となり、現代においては結構読みにくい本となっていました。また、ダーウィンが種の起源で述べたことが全て正しいというわけではなく、一部大々的に間違っていることもありました。
この本ではそうした部分をカットすることで、本家の1/3のボリュームに減らして、種の起源を要約しています。また、緑のページで現代における最新の研究等の知見を述べて、本文中でも豊富なコメントアウトによって誤った知識の定着を防いでくれています。非常に読みやすく、分かりやすかったです。その上で、現代進化の一例として使われている多くの資料が種の起源が元になっているのを発見して、やっぱりダーウィンってすげーと思いました。
この本で特に驚いたのが、この編著者であるレベッカさんが生物学出身ではないということ。特に緑のページ部分では現代の生物についてしっかりした知見(ef. 最新の研究事例、進化の誤解)が述べられているため、入念なリサーチを行ったんだろうなーと思っています。 -
一度は読んでみたかった『種の起源』の圧縮版。
種の起源に関するダーウィンの考察、見解がわかりやすく示されていて、各章の間に現代の科学的コラムが補足されているのでさらに理解が深まった。
生存競争と自然選択の長い歴史の中で、変異によって生命は進化し続けるということを仮説と実験を繰り返し論理的に述べられている。
日本がまだ幕末の頃に、現代の遺伝学に通じるような博物学の研究がなされていたことに驚き深く心を揺さぶられた。
ダーウィンからのこのメッセージから、遠い過去や未来、遥か彼方の場所や小さな生き物にまで思いを馳せながら読み進められた素晴らしい一冊。
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正に名著中の名著!!!
進化論の原点であり、生物学におけるコペルニクス的大転換の契機となった書。
ただ、大胆な仮説であるにも関わらず、ダーウィンの姿勢は慎重だった。
人間による犬や馬の品種改良を例にして、分かり易く、しかし緻密な考察を行った。
今読んでも非常に分かり易い。
現代の生物学者が以下のように著書で述べていたのを読んだことがある。
「人間の脳は悪夢と言えるくらい複雑で無駄が多い。神が設計図をもって創ったとは、到底考えられない」
ダーウィンの洞察は鋭く本質を突く。 -
絵が綺麗、写真が綺麗、カラフルで図鑑のよう
内容はちょっとした小説のよう
2019年に出版された古いけど新しい名著 -
↓貸出状況確認はこちら↓
https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/BB00280203 -
本は脳を育てる:https://www.lib.hokudai.ac.jp/book/index_detail.php?SSID=5087
推薦者 : 鈴木 孝紀 所属 : 理学研究院
生物学を専門としようとする人以外でも、理系学生ならば一度は読んでみたい名著『種の起源』。実際に挑戦すると、かなり長くて文章も判り難いため、挫折する人が多いようです。ボリュームが圧縮されたこのコンパクト版では、どのようにして進化論が生まれたのかというダーウィンの思考過程を容易に理解することができるでしょう。
エピジェネティクスなどの最新の考え方もコラムで紹介されており、進化論の動向を感じることもできます。また、自宅でたくさんの鳩を飼育してデータを収集したり、ランプの下で羽ペンで執筆したり、という当時のダーウィンの姿を思い描いて読んでみるのも良いと思います。 -
生物学の礎にして、「もっとも世界に影響を与えた本」といわれる『種の起源』。
地球の年齢も、遺伝の仕組みも知らなかったダーウィンは、
どのようにしてこの独自の思考を組み立て、歴史的名著を書き上げたのか。
本書は、チャールズ・ダーウィン著『種の起源』(1859年第1版)を、
レベッカ・ステフォフがリライトしたものです。
大幅にボリュームが圧縮され、言葉も平易に置き換えられて、
ダーウィンの思考過程がより明確になりました。
さらに、現代科学の最新動向に関するコラムも加えられ、
21世紀にふさわしいコンパクト版にアップデートされています。 -
本書は、『種の起源』をそのまま訳した本ではなく、『種の起源』のダイジェスト版です。
が、ダーウィンの思考と試行の過程はしっかり追うことができる内容になっていると思います。
それにしても、ダーウィン、すごいですね。
現代社会における自然科学の知見をある程度持っている自分から見ても、古さを感じないというか、違和感のない内容である点が、一番の驚きです。
『種の起源』が世に出たのは、1859年。
日本史的には、明治維新の直前で、当時の科学的な知見は、今から見ると、かなり心もとないものであるにもかかわらず、進化に対するダーウィンの考察は、鋭く、的確。
科学的な態度とはどのようなものであるか、を知る上でも、示唆に富んだ本でした。