アドリブ

著者 :
  • あすなろ書房
4.03
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本棚登録 : 262
感想 : 34
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784751529423

作品紹介・あらすじ

イタリア、トスカーナの小さな町に暮らす少年、ユージ。
フルートとの電撃的な出会いから5年、
ユージは岐路に立たされていた。
本気でめざしても、プロになれるのはひと握り。
クラシック音楽界のきびしさを目の当たりにした、
15歳のユージの決断とは……?

感想・レビュー・書評

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  • 第60回日本児童文学者協会賞受賞
    ライバルや仲間達と夢に向かって切磋琢磨する、イタリアが舞台の青春音楽小説♫
    ハッと目を引く色鮮やかなカバーデザインがとても綺麗

    トスカーナ州に住むユージ10歳
    フィレンツェでオーケストラのコンサートを聴いて、フルートの音色に魅力され、次第にプロのフルーティストを目指す様になる

    だが、道は甘くなかった
    後期中等教育の勉強と音楽院との二重生活、厳しい経済面
    そして自分との葛藤
    プロのフルーティストになれると思っていたが、自分の才能を信じる事ができない、そんな覚悟はない

    悩んでいるユージに先生は言う
    『今やっていることは君の人生で必ず役に立つだろう。自分の限界を知る。そしてそれを乗り越える。その繰り返しだからだ』
    確かにね。。。
    私もたまには何かに思いっ切りチャレンジするのもいいかもしれない、とほ
    ーんの少しだけ思った

    作中に出てくる演奏曲名をYouTubeで探して、フルート演奏を流しながら読んでみた
    イメージ、イメージ。。。

    ストーリーとしては王道で、青少年向けなので、物足りなさを感じてしまう所はあるが、単純な私はラストはやっぱり感動してしまった笑

    親子で楽しめる作品です♪

  • 5年前クラシックコンサートで聴いたフルートの音色に魅せられたユージは、未経験ながらフランキジャーナ音楽院の入学試験に合格し、普通の学校との二重生活をしながら練習に励んでいた。しかし、常に、このままで本当にプロのフルーティストになれるのかという不安、より良い楽器の購入やより良い指導者の合宿参加という経済的な問題、どんどん難しくなる学校の勉強とフルート練習との時間配分に悩まされていた彼は、念願の第一オーケストラに選ばれてもあまり喜べず、音楽学校の課題を「こなす」自分に気づく。なんのために音楽をやっているのかわからなくなってしまった彼は、先輩の厚意から参加できることになった有名奏者の合宿で、音楽の楽しみを再発見する。

    競争とプレッシャーの世界に身を置きながら、音楽の楽しさに気づき、本気で立ち向かう覚悟を得る少年と、温かく支える周囲の人たちの姿を描いた物語。





    *******ここからはネタバレ*******

    最初は大好きなフルートで演奏することがただ喜びだったのに、厳しい世界に長く身を置きすぎて、本当の望みがわからなくなってしまう、芸術の世界「あるある」です。
    もっとお金があれば、良い楽器を手に入れることも、良い先生に師事することも、失敗したときの将来の心配なんかせずに音楽の道を追求することもできるのに、と思う気持ちも痛いほど伝わる中、学友たちが、貧富の差や音楽への向かい方の違いがあって、それぞれいい味を出していますね。

    こんな胃が痛くなるような世界にあって、良い大人に囲まれているのは救いです。彼の指導者サンティーニ先生は、指導力も人間的にも素晴らしいし、合宿の先生マエストロ・ビーニもとても魅力的。
    お母さんも、経済的にはしんどいけれど、人間的には普通の良いお母さんだし、職場の方々もとても温かい。

    音楽をやっていて人生で役に立つことは、単にその道で成功することだけじゃない。「自分の限界を知る。そして、それを超える。そのくりかえしだから」というサンティーニ先生の言葉が、この物語の要でしょう。
    お店のパーティのために準備するユージは、内輪のパーティだからとおろそかにせず、きちんと準備して感動させていた。これが彼が「超えた」ところなんでしょうね。



    文章は平易ですし、刺激的な表現も出てきません。高学年から読めるます。音楽が好きな子なら、更に楽しめると思います。

  • イタリア国立音楽院。フルートをゼロから始めたユージにとって,音楽の世界は厳しい。経済的苦境や厳しい現実を乗越え,成長する姿が頼もしい。競い合うライバルの存在も大切(サンドロ)。

  • 初めての作家さん。
    音楽は楽しんでこそなのだが、それまでに苦労がある。それが良くわかる物語でした。

    フルートを吹こうと思ったユージが音楽院で色々悩みながら自分の道を見つけていく。

    音楽院の情景などがリアルだと思いましたが、あとがきでイタリアに住んでいる佐藤さんの娘さんがまさしくフルートを学んでいるとあったので、納得。

    若い人、それも高校前の人たちに特におすすめしたいです。

    佐藤さんの他の物語も読んでみたくなりました。

  • イタリアのトスカーナが舞台。フルートに魅せられて、国立音楽院に入学した中学生の少年、ユージ。夢中で練習に明け暮れていたが、テクニックを磨く練習が続き、曲を楽しむゆとりを失っていく。やがてクラシック音楽の道の厳しさを知り、情熱がなくなってくる。そんなとき、夏休みに2日間のマスターコースに参加することになる。そこでユージは音楽の楽しさを思い出し、再びフルートに向き合うようになる。

    挫折からの復活、ライバルたちと切磋琢磨しながらの成長、コンクール出場を巡るあれこれ、と王道の展開。
    指導者の資質って大事だなと思う。そういう人に巡り会えるかどうかもその人の運、ひいては実力がもたらすものなのだろう。

  • フルートと共に生きていこうとする、少年の話。
    音楽を志すひとって、とても大変だよね。

    音楽だけでなく、
    自分が心から打ち込める、
    何かに出会えるといいな、と思える1冊でした。
    児童書の分量なので、
    さらっと終わってしまった感じが否めないのが、もったいなかった。

  • イタリタの、とある音楽の盛んな田舎町。10歳のユージはフルートと出逢う。音楽を続ける悦びと厳しさに向き合う、少年の成長の物語。バッハ、プロコフィエフ、ラヴェルのフルート曲を片っ端から聴きたくなる。そして、フルートを吹いてみたくなる。とても素敵なお話。

  • 逆境の中でも自分の心を揺さぶられたフルートの音楽院を初めは頑張っていたが、経済的な問題もあり、続けられないと諦めそうになった時が沢山あったが、周りの人たちの援助などもあり、最後では、プロの奏者になったことがとても感動した

  • ユージと共にたくさんの音楽に出会いながら、いろいろな感情で胸がいっぱいになりながら、読み終えた。誰かに紹介したくなる物語だ。

    ユージとフルートとの出会いは、10歳の夏。フィレンツェの大聖堂で聞いたオーケストラ。まるで天から舞い降りてきた天使の声のような音を聞く。涙が出て止まらない。
    体の中が熱くなるような衝撃を受けたユージは、フルートをやりたいと強く思うところから、物語は始まる。

    国立音楽院に通うユージの周りの子たちもよい。

    みんなが噂するほど問題児だがヴァイオリンがとびきりうまいジャンフランコ、楽譜通り完璧にフルートを吹きこなすサンドロ、何かとユージを勇気づけてくれる一年先輩のマルタ、表現力豊かにフルートを奏でるが、ママの思いが強すぎるリナ。

    個性豊かな4人だが、それぞれに音楽に対する向き合い方や考え方が違うのも面白かった。

    最初はフルートに息を吹き込み、息が音に、音が音楽になり、素敵な曲との出会いがうれしくてたまらないユージだったが、次第に、テクニックを磨くことばかりになり、宿題をこなすようにフルートを吹くようになる。

    周りはコンクールに参加して入賞を果たしていく中、先生からまだ早いと言われ、コンクールに参加できないユージ。自分には才能がないのだろうと思い始める。

    ユージはプロのフルーティストになる覚悟がまだ持てずにいた。家の家計も厳しく、才能を信じて突き進む自信も持てないでいた。サンドロ達のように、親族に音楽家がいるわけでもないし、家が資産家でもない。
    難しい曲に取り組もうにも、新しい楽器の買い換えも出来ずにいる。
    どんどん熱意が消えていく。
    フルートを始めたときのようなときめきが薄れていく。

    「だれのために音楽をやりたいんだ?」
    「今やっていることは、たとえプロの道に行かなくても、きみの人生で必ず役に立つだろう」それは、「自分の限界を知る。そして、それを超える。その繰り返しだからだ。」
    サンティーニ先生の言葉が胸を打つ。

    好きなものを見つけて、そのことに邁進していく。それは本当にラッキーなことだ。だが、それを将来の仕事へと結びつけられる人は、才能と惜しまぬ努力、そして運があってこそ。
    ユージが苦悩しながら、『音楽』とは何か『美』とは何かを考えながら、フルートを吹き続ける姿が描かれていて、最後まで応援しながら読んだ。

    この本に出てくるフルートの曲を聴いてみたくなった。

  • イタリアの音楽学校物語。ものすごい天才が出てくるわけではないけど、生徒たちのリアルな描写が面白い。

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著者プロフィール

『水色の足ひれ』(第22回ニッサン童話と絵本のグランプリ童話大賞受賞・BL出版)で作家デビュー。主な著書に『スーパーキッズ 最低で最高のボクたち』(第28回うつのみやこども賞受賞)『ぼくのネコがロボットになった』『リジェクション 心臓と死体と時速200km』『雨の日が好きな人』(以上、講談社)、『セイギのミカタ』(フレーベル館)、『つくられた心』(ポプラ社)、『一〇五度』(第64回青少年読書感想文全国コンクール中学校部門課題図書)、『アドリブ』(第60回日本児童文学者協会賞受賞)、『世界とキレル』(以上、あすなろ書房)など。
イタリア在住。日本児童文学者協会会員。季節風同人。

「2023年 『おはなしサイエンス AI(人工知能) ロボットは泣くのか?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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