[グラフィック版]アンネの日記

制作 : アリ・フォルマン 
  • あすなろ書房
4.11
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本棚登録 : 203
感想 : 23
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  • Amazon.co.jp ・本 (152ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784751529638

作品紹介・あらすじ

隠れ家での2年間の雑居生活。異常な環境で思春期を迎えた13歳の少女の不安、恐れ、怒り、愛を書きつづった「アンネの日記」。500ページ近い大著を、アンネ・フランク財団監修のもと、150ページのグラフィック版で刊行。

感想・レビュー・書評

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  • 本棚の(今読んでいる)にあったので削除したら(読んだ)のほうも削除されてしまった。
    たしかなおなおさんのお勧めで読んだんだった。
    ※(2023.5.14 映画観賞)

  • 恥ずかしながら『アンネの日記』を読んでいない。
    小学校低学年の時に簡略版を読み、その後絵本や、様々な著者によるアンネの本(ホロコーストの本も)は読んだので、一応知っているつもりになって、もともとの『アンネの日記』を読みたいという気持ちがなくなってしまったというのもあるし、結構厚いので、いくら歴史的な本とはいえ、少女の独白だけの本が正直言って面白いのか?と疑問も湧き、読まなかったのである。
    そしてまた、別の著者による『アンネの日記』に手を出してしまった。

    グラフィック版とあり、ぱっと見るとマンガ化かと思うが、ちょっと前読んだ『サブリナ』みたいに、かなりきちんと作り上げられており、安易なマンガ化では決してない。よく学習マンガで偉人の伝記なんかがあるが、そういうものとは全く違う。アンネの文章そのままの部分も多く、見開きでびっしりと原文のまま載せられているページもある。小さい字で横書きなのでかなり読みにくい。しかし、丁寧に読んでいくと、この文章は削ったり、絵で表したりすることはできない部分なんだな、『アンネの日記』の肝の部分だな、というのが分かる。つまり、読みやすさより、『アンネの日記』を正確に伝えることを重視しているのである。そこが大変良い。読みやすさを重視した本は山のように出ているのだから。
    さらに、文字を読むだけではイメージしづらい、当時の状況や隠れ家の様子が、絵のおかげでよくわかる。(クリスマスツリーとハヌキヤが並んで置いてあるフランク家の様子も描かれており、彼らがガチガチのユダヤ教徒ではなく、キリスト教も適度に取り入れて暮らしていたことがわかる。)登場人物の顔が、残っている写真そっくりな上に生き生きとした表情があるので、より人間的に感じられる。
    これを読んでから原典版を読むといいと思う。これを読めたら、とも言える。
    アンネの日記が後世に残ったのは、彼女の不幸がきっかけではあったが、単に可哀想な少女の日記なら、これ程までに読まれることはなかっただろう。彼女には確かな才能と類まれな感受性があったから、思春期の、特に少女を中心とした若者の心を捉えたのだ、と改めて実感した。
    これだけの才能のあった若者が(才能がなくても。というか、何が才能かは長く生きてみないとわからないことも多い。)、命を奪われる残酷は、本来あってはならないことだが、人間の歴史では、アンネ以降もたくさんの未来ある若者が戦争や紛争で命を奪われている。その理不尽さを今一度考えて欲しい。
    これだけの苦難の生活の中でも「どんな不幸の中にも、つねに美しいものが残っている」(P109)「どんな危険なときにもその中に滑稽な一面を見つけ、それを笑わずにいられない」(P131)という強さ。
    「なぜ人間は、ますます大きな飛行機、ますます強力な爆弾をつくりだしておきながら、一方では、復興のためのプレハブ住宅を作ろうとしたりするのでしょう?どうして、毎日何百万という戦費を費やしながら、医療施設のために使うお金がぜんぜんない、などということが起こりうるのでしょう?どうして、飢え死にしそうな人たちがいるのに、世界のどこかでは、食べ物がありあまって、くさらせているところさえあるのでしょう?」(P130)「このところ、ひとつの疑問が一度ならず頭をもたげてき、けっして心に安らぎを与えてくれません。どうしてこれほど多くの民族が過去において、そしてしばしば現在もなお、女性を男性よりも劣ったものとして扱ってきたのかということです。こういうおおいなる不法のまかりとおってきた、その根拠を知りたいんです。」世の中を見据える目。
    「(お父さんは)いつも私に語りかけるとき、むずかしい過渡期にある子供として語りかけた」「彼(ペーター)が私を征服したんじゃなく、私が彼を征服してしまったんだ」(P142)「私はせめて彼をそういう視野の狭さから引っぱりだしたい、彼の若さという限界をひろげさせたいと願った」(P143)この洞察力。

    もうひとつ、大人になって感じることは、この困難な状況で、アンネの両親が精一杯のことをしたことに対する敬意である。衣食住さえままならない中、子ども達の安全を第一にしながらも、より良い人間となるよう、本を読ませ、語り合い、抱きしめた。母親は隠れ家生活中はアンネに嫌われたけれど、これは思春期特有の身近な同性を嫌悪する心があったと思う。母エディートは、父オットーより、心配を表に出しすぎてうっとうしがられた感じがあるが、この極限生活の中で、この程度で居られたことは凄いと思う。私なら子どもを虐待してたかも。
    それから、姉マルゴーのこと。アンネはいつも姉と比較され、姉の方が褒められることに腹を立てているが、マルゴーだっていろいろ思うことはあっただろう。ペーターのことだって、彼は私にはものたりないみたいなことを言っていたが、本心かは分からない。感情を素直に表現し、なんと思われようが言いたいことを言う妹を羨む気持ちが絶対あったはず。爆撃に怯えて父の布団にもぐり込む妹を横目で見ながら、一人で震える夜もあっただろう。マルゴー、あなたにも生きていて欲しかった。あなたにも語るべき物語があっただろう。

  • 13歳の多感な少女アンネ・フランクが、ナチ占領下のアムステルダムで、彼女の家族四人のみならず同居を余儀なくされた人たちとの窮屈な《隠れ家》での二年余りの生活を綴った『グラフィック版・アンネの日記』です。深町眞理子訳の『アンネの日記 完全版』で記述された母エーディトやファン・ダ-ン夫人(同居人)との確執、思春期ならではの異性への関心など包み隠さず色彩豊かに表現されています。密告によって《隠れ家》で逮捕された八人のその後を知る今日に生きる者へ、アンネ・フランクの魂の叫びが響きわたります。

  • 今週の本棚:『グラフィック版 アンネの日記』=アンネ・フランク著… - 毎日新聞
    https://mainichi.jp/articles/20200711/ddm/015/070/019000c

    あすなろ書房【[グラフィック版]アンネの日記】
    http://www.asunaroshobo.co.jp/home/search/info.php?isbn=9784751529638

  • 『乙女の密告』赤染昌子
    を読んで、アンネの日記本文を読みたくなったが、完全版を借りたものの手をつけられず、、と言った時に見かけたグラフィック版。良かったです。
    本書でもわかるように、アンネの日記本文は当然ながら個人の日記。個人の経験として理解が深まる一方、俯瞰して全体像を把握するのは結構難しい。
    グラフィック版は、そこを漫画として表現してくれているので、アンネが主人公でありながら全体像がわかりやすい。かつ、日記本文を引用している部分もあるため、よくあるようなアンネの伝記とは異なり、ちゃんと『アンネの日記』である。
    乙女の密告でスピーチする1944年4月9日の日記は、残念ながらグラフィック版には掲載されていない。本書で導入は済んだので、改めて本文に挑みたい。

  • 『侍女の物語』と同じく、原本から入るのはむずかしそうだと思っていた作品がグラフィック版で出ていたので手に取ってみた。作家小川洋子さんがこの日記をとても高く評価?してらっしゃるのもあって読んでみた。

    ナチスに苦しめられてつらい日々を送り死んでいった女の子の日記と思っていたけれど、読んでみると全く印象が違う。彼女が望んでいたとおり、あの戦争を生き延びて作家になっていたらどれだけ素晴らしい作品を世に出してくれたのだろう。そう思ってしまうほど、ありのままを打ち明けるということへの貪欲さのようなものを感じた。それはきっと物書きをする上で最も重要な才能の一つだろう。成長とともに感じる当然の痛み、苦しみ、甘美さ。そしてそれを戦争によって不当に阻害されてもまっすぐ自分を通そうとする強さ。内面を見つめながら世界を見つめた14歳の少女。
    この作品がただの戦争記録として以上に評価される理由がわかった気がした。

    彼女の、一人の人間としての葛藤がどれだけ魅力的か。どれだけ後世の人々の希望になるか。そして改めて、こんな聡明な少女の未来が戦争で奪われたことを忘れてはいけない。

    また、アンネの心の、色とりどりの機微が、たくさんの絵柄によって補助的に説明されているのはグラフィック版ならではの良さだと思う。最後に編者が述べていた通り、全てのページにアンネを宿そうという気概が感じられる。

    日記が終わる最後の記録より「彼女(本当のアンネ)が主役を演じるのは、私とふたりきりのときだけです」。

  • 子ども時代に「アンネの日記」を読んだのですが、内容をあまり覚えておらず。
    この本を読んで、戦争のリアルがよくわかるのと、ユダヤ人の虐殺がたった80年ほど前の出来事だということに緊張を感じました。

    思春期独特のものかもしれませんが、アンネが母親に対してあまり親しみを感じていなかったことなどをあらためて知ることが出来ました。
    不幸な目に遭っている人に対するアンネと彼女の母の考え方の違いにそれがあらわれていると思います。
    とても価値のある、貴重な本です。小学校の図書館にぜひ置いてほしい一冊です。

  • <こんな人にオススメ>
    ・さらっとアンネの日記を知りたい
    ・アンネの心理的成長より当時の社会状況の一例として知りたい
    ・原著の前にあらすじを掴みたい

    原著に挫折してこちらを読了 笑
    ナチスドイツの当時の状況や空気を知りたかった私としてはこちらで十分でした‼️

  • どんな不幸の中にも、つねに美しいものが残っているということ。それを探す気になりさえすれば、それだけ多くの美しいもの、多くの幸福が見つかり、人は心の調和を取り戻せるでしょう。それだけの勇気と信念とを持つ人は、けっして不幸におしつぶされたりはしないのです。

  • アンネ・フランク財団の後援のもと邦訳が出版されたグラフィック版。フルカラーの絵がとてもとてもすばらしい。あとがきにもあるように、原作を1/3ほどに短く縮めているようだが、絵の中のアンネの生き生きとした表情から、その夢やあこがれ、不安、焦り、いら立ちなどがくっきりと伝わってくる。

    「いつ終わりになるかわからない隔離生活」というもののほんの一端をわたしたちも今味わっているけれど、隠れ住んでいることが露見したら確実に死が待っているというその恐怖たるやどんなものだっただろう。そんななかでも、ただおびえるだけでなく、自身や家族に対しての思索を深め、また戦争というものへの怒りを書きつづったアンネ。収容所が解放されるひと月前に亡くなったのか……。

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