スーパー・ノヴァ

  • あすなろ書房
3.83
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784751530320

作品紹介・あらすじ

ノヴァとブリジットの姉妹はスペースシャトル・チャレンジャーの打ち上げを心待ちにしていた。でも、その日を前にブリジットは姿を消した・・・。ひとりの少女の小さくて大きな一歩を描いた物語。

感想・レビュー・書評

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  • 1986年の1月、スペースシャトル「チャレンジャー」の打ち上げまで10日。12歳の少女ノヴァは、5歳上の姉、ブリジットの影響で宇宙と天文に多くの知識と強い関心を持っていた。新しく温かい里親に引き取られたノヴァは、チャトル打ち上げには戻るといって彼女の元を去った姉を待っていた。学校にも新しく学校に通うことになったノヴァだったが、うまくコミュニケーションが取れないため、ここでも「知恵遅れ」と判断される。意思疎通を諦められ、感覚障害も持っている彼女にとって学校は辛いことも多かったが、プラネタリウムでの天文学の授業には感動した。少しずつ友だちもでき、読み書きができることや、きちんとした知識を持っていることも理解され始めたころ、学校の先生を乗せたチャレンジャーの打ち上げが迫る。ノヴァは、ブリジットがちゃんと自分を探し出せるのか、不安になり始める。

    自閉症と感覚障害を持つ少女が、姉とのつながりを模索し、新しい人間関係に気付いていくようすを、宇宙へのあこがれとともに描く物語。





    ******* ここからはネタバレ

    これは著者の処女作ですが、見せ方(読ませ方?)が非常に巧みでうまいです。演出上手だなぁと思っていたら、それもそのはず、プロの劇作家さんだったんですね。
    最近は、ドラマの前提を小出しにする物語が多いですが、これもそのひとつ。なんで?っていう思いでぐんぐん読ませます。引きの強い本ですね。

    主人公のノヴァは、自閉症で感覚障害も持っています。
    お父さんはベトナムで戦死しました。
    5歳年上のブリジットはしっかりもので、お母さんとノヴァの両方の面倒を見ていましたが、7年前のある日ふたりはお母さんから引き離されて施設と里親の元で暮らし始めます。1年間で11回も居場所を転々としながら。
    そして、ブリジットの17歳の誕生日に、ふたりは里親の元を抜け出し、ブリジットは「チャレンジャーの打ち上げには戻ってくる」と言って、ノヴァの元を去ったのです。

    新しい里親はすばらしい人で、ステキな部屋も与えてくれました。里親の娘も、妹ができたと喜び、優しくしてくれます。でも、ノヴァは、里親に馴染むほど別れが辛くなることもわかっていました。

    ノヴァは、話すことや興味のないことに集中するのが苦手なので、「読めず、話せず、知恵遅れ」と思われていましたが、きちんと考えることができたし、宇宙に関しては人並み以上の知識もありました。
    ブリジットと別れ、手が動くようになってから毎日、ブリジット宛に手紙を書いていましたが、周りの皆は読めず、ただ里親家の娘ジョーニーだけが、これは落書きではなく文字だと気付いてくれたのです。

    チャレンジャー打ち上げまでの日が近づいてくるにつれて、ノヴァは、ブリジットと本当に会えるのか心配になってきます。
    そうして、打ち上げのとき、信じられない悲劇とともに、もう一つの悲劇の記憶が呼び起こされたのでした。


    いやぁ、これはちょっとやりすぎではないかと思ったんです。

    最初にチャレンジャーに学校の先生が乗り組むっているところで、当時の記憶がある私は不安になりました。だって、あのスペースシャトルは落ちたんですもん。
    あんなのを楽しみにしている子どもを描くの?史実どおりに事故が起きるの??と。

    チャレンジャーの打ち上げが、切望している姉との再会を意味するのなら、これが失敗するのなら、会えないっていうこと。

    若い読者にはこの悲劇を知らないまま読みすすめる方も多いでしょうね。

    学校の先生という、子どもたちにとってとても身近な人が宇宙に挑戦し、子どもたちの目の前で散っていったさまを再現するだけでも酷ではないかと思うのに、ここに一番恋しい姉の死の記憶の再生まで加えてしまうなんて。
    孤児で生きづらさを意思疎通の難しさを合わせ持つノヴァには、残酷すぎるのではないかと思いました。
    こんなエピソードは、どちらかひとつで十分ですよ。

    あとがきに、この2年後のチャレンジャーの打ち上げでは、別の先生が乗り込み、無事宇宙で授業を行ったとありましたが、ぜひこれは、本文中に入れていただきたかった。
    あとがきを読まない子どもたちも多いからです。

    ブリジットとノヴァが母親から引き離された理由や、ブリジットがどうしてノヴァを連れて里親の元を逃げ出したうえて、さらにノヴァからも離れようとしたのか、私の読解力では読み取れませんでした。

    さらに、時代が微妙に昔ですよね。
    自閉症や感覚過敏についても、今では知識やよりよい対応方法を知っている人が増えています。今の若者読者は、この時代のことを今言われてもなぁと思うんじゃないかと思ったのは、私だけ???かな???

    「知恵遅れ」という表記が頻繁に出てきます。今では使われない言葉ですが。当時は珍しくない言葉でした。「不快語・差別語」に該当するのかも知れません。このあたりも、子どもに手渡すときには慎重になりたいところです。
    いやぁ、それにしても、里親家庭が本当にいい人たちですね。こんなに恵まれた家庭に受け入れてもらえるなんて、むっちゃラッキーだと思います。でも、もしそうでなかったらを考えると、怖いですよね。個人の資質と力量頼みではなくって、もっと仕組みで解決できるところがあるといいですよね。




    表紙が児童書のようで、とても残念です。
    原書の表紙には、もっと大きな女の子が描かれています。どうしてこんな絵になったのかなぁ?これではきっとこの作品を理解できる年長者は手に取りにくいですよ。残念でなりません。

    原題は、「PLANET EARTH IS BLUE」。
    う~ん、これではわかりにくいですか?「スーパー・ノヴァ」も、天文学に興味がないと知らないのではないかと思うし、ノヴァも最後には、自分はノヴァだと言っているから、わたし的にはちょっと遺憾に思います。

    事実が小出しにされていて、物語の展開が読みにくいのと、けっこう残酷なので、しっかりした高学年以上からの読書をオススメします。
    児童書ということになっていますが、でもきっとこの本は、大人向けではないかと私は感じています。

  • ナサベアを抱きしめた少女、ノヴァ。
    彼女は姉のブリジットを待っている。
    ブリジットだけは、ノヴァの言いたいことをわかってくれた。
    他の人みたいに「重い知恵遅れ」なんて言わなかった。
    約束したんだから、チャレンジャーが打ち上がるのを一緒に見ようって。

    ノヴァは言葉がうまく出ない。ノヴァは文字が書けない。ノヴァは感覚過敏。
    だから、特別支援学級で過ごす。
    本当は宇宙のことならなんでも知っているけれど、周りからは「キーッ」という声にしか聞こえない。
    私答えられる!と思ってアピールしても、「興奮しているのね。でも静かに」だなんて!

    この物語はチャレンジャーの物語。
    自閉症は治らない。
    グラデーションのようにできること、できないことがある。
    周りは健常者と比べるから、この子は何にもできないね、となる。
    でも、心の中では彼女たちは伝えたいことがたくさんたくさんあるはずだ。
    私たちには、わからないことばで。

    読み進むほどに胸がチクチクいたむ。私は、あの子達を理解できているだろうか?

    結末はとてつもない悲しみと、それを補おうとする愛の存在を示唆して終わる。
    障害児との暮らしは楽ではない。
    綺麗事を言われると腹が立つことだってある。
    それでも、私たちはわからないから分かろうと努力する。
    もしその思いが今は届いてはいないとしても、いつかは、きっと。
    私たちはチャレンジャーであって「チャレンジャー号」じゃない。
    ともに歩もう、この青い惑星の大地を。
    ともに目指そう、果てしない夢を。

  • 新しい里親の元で、必ず迎えに来ると約束した姉を待ち続ける、自閉症のノヴァ。
    三人称の物語に差し挟まれる、ノヴァから姉への手紙が胸を締め付ける。
    姉への愛情、姉がいないことへの戸惑いや怒り、周囲に理解されないもどかしさや苦しさ。
    とても丁寧に描かれており、里親や、特別学級の同級生たちと少しずつ心が通っていく様も地に足がついて感じた。
    ノヴァが生きる現実は過酷だが、ノヴァと姉を繋ぐ宇宙への憧れが全編をきらきらと包んでおり、温かい作品だった。
    特に中高生にお勧めしたい。

  • ノヴァは宇宙が好きな13歳の女の子。

    幼いころに母親と別れ、たくさんの里親の元を転々と過ごしてきた。

    ノヴァの中には物事を心で見て表現する力と
    天文学の知識がいっぱい詰まっていたが
    自閉症を抱え、言葉(書いたり、話したり)で表すことが難しかった。

    そのため、ソーシャルワーカーには
    「読めず、話せず、重い知恵おくれ」と認識され、
    里親にも理解されてこなかった。

    そんな中、
    4つ上の姉ブリジットだけはノヴァの気持ちをわかってくれていた。

    そんなブリジットがある日忽然と姿を消してしまうことから物語は始まる。

    「チャレンジャーの打ち上げには必ず戻ってくる」
    姉の言葉を信じてノヴァは待ち続ける。
    そして、打ち上げ当日、ノヴァに起こったこととは…。

    ブリジットの不在という謎から始まり、
    ノヴァの心の言葉を頼りに進む物語。
    真実が明かされながら、スペースシャトル・チャレンジャーの打ち上げまでの10日間のカウントダウンが物語を盛り上げる。

    校長先生がノヴァにゆっくり話しかけ、ノヴァは普通に話してほしいと思っているズレ。

    ソーシャルワーカーがノヴァの笑い声を奇声だと理解しているズレ。

    ノヴァの思いが理解されず、他人には奇妙に感じられてしまうたくさんのことが、俯瞰とノヴァの視点と交互に描かれていくので、視点が変わり気持ちがどんどんノヴァに寄り添っていった。

    新しい里親のフランシーンとビリーが本当に温かい。こんな大人でありたい。

    次々に悲しいことがあるが、ノヴァはゆっくりでも、着実に前へ、強く、進んでいく。

    そしてラスト、一気に物語は展開し、胸がギュッとなったが、最後の最後にタイトルの意味とノヴァの言葉に強く胸を打たれ、この本を読んでよかったという満足感に浸った。

    可愛い表紙だが、読み応えのある一冊。

  • ノヴァは自閉症をかかえる12歳の女の子。聡明だが、発話障害があるので、ヘルパーや学校の教師から「知恵遅れ」だと誤解されてきた。ノヴァと姉のブリジットは、何人もの里親の家やグループホームを転々としてきた。ノヴァは、最近あたらしい家にひきとられ、その家の夫妻はとてもよくしてくれるけれど、今までずっと一番の理解者だった姉のブリジットがすがたを消してしまったから、不安がつのる毎日だ。

    舞台は1986年のアメリカ。ノヴァとブリジットは宇宙が大好きで、以前からスペースシャトルチャレンジャーの打ちあげを心待ちにしていた。打ちあげの日にはきっとブリジットが帰ってきて、いっしょに中継を見てくれるはず。だってそう約束したから……。

     ====================

    悲劇に終わることのわかっているチャレンジャーの打ちあげが迫るにつれ、読んでいてもハラハラしてしまう。しかもそれに追い打ちをかけるような衝撃の事実が。
    全編をとおして、うまく発話できないノヴァのもどかしさが伝わってくる。周囲の人たちの理解力と注意深いまなざしが、どれほど大切なものかもよくわかる。
    姉のブリジットは「ヤングケアラー」だったんだなあ。切ない。新しい里親になるフランシーンとビリーの愛情もあいまって、最後は涙でした。

  • スーパーノヴァ(超新星)とスーパーなノヴァのダブルミーニングのタイトル。主人公のノヴァは自閉症。スペースシャトル・チャレンジャーの打ち上げ失敗は実話なのですね。私の生まれる前の出来事のようです。

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