思いはいのり、言葉はつばさ

著者 :
  • アリス館
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本棚登録 : 276
感想 : 23
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784752008965

作品紹介・あらすじ

友達のジュアヌが見せてくれたハンカチに刺繍されていた、女書(ニュウシュ)。女の人だけが読み書きできる、秘密の言葉だという。その美しい文字に、チャオミンは夢中になってしまう。中国・湖南省に実際に伝わる「女書」をテーマにした児童文学。

感想・レビュー・書評

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  • 文字を文字として書いたり、覚えたりすることと、自分の思いを言葉にして文章として綴ることは、また別のこと。
    自分の気持ちを掴まないと言葉にならないし、言葉を知らないと気持ちを表せない。

    女性の生き方、という視点でも読めるけれど、そんなふうなことが、読後にしみじみ、浮かびました。

    装丁がとっても美しい本でもありました。

  • 日本語で書かれた児童書で、中国が舞台で中国人の少女が主人公というのが希で、さらに女書(ニュウシュ)が扱われるのは初めてだと思う。
    それ自体とてもいいし、装画(まめふく)も可愛いし、読みやすい。
    いい条件が揃っている。
    しかし、残念な本だった。
    子ども向けでも、もう少し具体的なことを書いてほしい。時代はいつなのか、場所はどこなのか。どんな家に住んでいたのか。その土地では珍しくなかったとはいえ、異民族なのに父母はどうして結婚しかのか。女書はそもそも女性が教育を受けられないからできたわけだし、主人公が纏足していたりするわけで(そのわりに非常に活発で明るく、今の女の子に近いメンタリティで子どもは感情移入しやすいだろうけど)、教育も受けられず、家事労働を担い、見知らぬ人と結婚し、結婚してしまえば婚家の言いなりになるしかなかった時代の女性の姿が、一応書かれてはいるけれど、軽いというか、浅いというか。
    特に近所に住む主人公の友人、漢民族夫婦の娘のジュアヌは、貧しさから漢民族なのに纏足もしてもらえず(当時の感覚では、ちゃんとした家の娘は纏足してたわけだから)、家庭円満で経済的に余裕のある主人公に嫉妬しているようなシーンがあるので、そこのところをもっと描くのかと思っていたが、それ以上のつっこみはなし。
    知らないところに嫁に行かされるシューインや、一揆を起こして捕まった男の息子シュウチー、高い教養がありながら世捨て人のような生活をしているグンウイなど、登場人物の役者は揃っているのに、とにかくつっこみ不足なんだよ!
    文章の量や難易度(対象年齢)などに制約があったのかもしれないが、せっかくのいい題材を活かしていないのが残念すぎる。
    この題材なら対象年齢を上げて、もっと書き込んだ方が面白いのに。
    ★3つなのは、題材がいいからで、内容は大いにもの足りず、★2つ。

  • まめふくさんの絵が好きで、それをきっかけに読みました。

    女書という字があることを初めて知ったけれど、植物の絵のような美しい字体に惚れ惚れ…ただ、女書の持つ背景は美しく恵まれたものではなく、でもそれを知って見るとより美しく凛として見えるのでした。

  • 朝日小学生新聞「中学入試で取り上げられた本」より。(ちなみに、桜蔭中ほか)

    少し前に読んだ『彼岸花の咲く島』で、女性だけが学べる「女語」という言葉が登場した。
    こちらは「女書」(ニュウシュ)という女性だけに伝わる文字の話。

    理不尽な風習や、古くからのしきたりの中で、自由を奪われてきた女性たち。
    「文字があなたの(纏足をした)足の代わりだよ」「思いをつづることで、心がきっと自由になる」p82

    誰もが文字を学べ、読み書くことができる今、
    指先でつぶやくだけで世界中とつながれる今、
    自らの思いを託せる「文字」の持つ不思議な力を、改めて感じた。
    文字は、人を生かしもすれば殺しもする。

    「言葉を大事にするんだよ」p153
    「辛いときは、書きましょう
    苦しいときは、歌いましょう」p205

    「人は初めて書く文字では、思いやりや優しい気持ちを言葉にする」p251あとがきより



    「女書」と検索してみた。
    装丁に描かれた刺繍のような美しい右上がりの文字。この文字が、女性たちの悲しみや喜びに寄り添ってきたんだな。

  • 表紙がとってもかわいくて手にとる
    よかったーーー
    チャオミンの素直な一生懸命な心が伝わってきて
    心があったかくなる
    ニュウシュとは??
    挿絵とかにもなかったので結局どんな文字なんだろうと思っていたら裏表紙のとこに何か細長い模様が
    え?これが文字なの?が正直な感想
    縦に読むのか横にして読むのか?ぜんっぜんわからんーー
    でも逆にわからない方が良かったのかも
    知らない人には文字と思われない方が危険がない
    心を自由にするために書く
    その文字を必要とした人々がいたということ
    民族間のこととか貧富の差とか男尊女卑とか
    諸々多分描こうとすればもっと重い話にもなるんだろうけど
    児童書ってことでその辺はマイルドになってるし
    メインはチャオミンの成長物語なのでさらっと読めば辛くない
    多分深読みしようとすると辛いとこわんさかありそう
    願わくばシューインが嫁ぎ先で幸せに生きてくれることを
    生きるのに必要以上の財は人の命を救うために
    うわーーーお父さんいいこと言うねー
    ここはおばあちゃんちょいとイヤミだけど
    お父さんとお母さんがちゃんと娘を大事にしてるのですき

  • チャオミンは、友達のジュアヌに見せてもらったハンカチの美しい刺繍に一瞬にして心を奪われた。それは、女性だけが読み書きできる「女書(ニュウシュ)」という文字だった。チャオミンの村では、男たちが野山で仕事をする間、女たちは誰かの家に集まって一緒に織物や刺繍などの手仕事をする。そこで、「女書」も秘密に教わることができるのだ。待ちに待った10歳の誕生日。心弾ませ、初めて女たちの集まりに足を踏み入れたチャオミンだが・・、中国・湖南省に実際に古くから伝承されてきた「女書」を題材に、まだ男性優位の時代、手仕事と共同体に支えられてきた女性のたくましさ、文字をもつこと、そして気持ちを言葉にして伝えることの尊さに改めて気付かされ、心打たれる物語。小学校高学年から。
    (第八小学校図書館だよりにて紹介)

  • 女性だけが読み書きできる秘密の文字ニュウシュについてかかれた物語。舞台は中国。装丁が綺麗。城所潤さんによるもの。装画はまめふくさん。

  • 分類としては児童書にあたると思われますが、大人が読んでもハッとさせられる描写があり、とても興味深く読みました。
    昔、中国の女性達の間で使われてたニュウシュという文字を習っている女の子が主人公という、やや特殊な設定を上手に使い、現代にも通じる女性の生涯について考えさせられる文章でした。
    未成年か成人後か、既婚か未婚か、男性か女性か、など、読み手の立場や属性で大きく感想の変わる、大変面白い物語だと思います。

  • 様々な民族や、考え方が違う女の人たちが、刺繍や女書を通して理解しあっていて心が温まりました。
    また、チャオミンの姉であった人が結婚するときに、チャオミンの気持ちをチャオミンが習っていた女書で表していて、僕も言葉を大切にするとともに、祈って自分の想いを伝えたいなぁと思った

  • 読後、タイトルがじんわりと沁みてくる作品でした。また読み返したい本です。

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著者プロフィール

福岡県生まれ。講談社児童文学新人賞佳作『カラフルな闇』でデビュー。作品に、『青(ハル)がやってきた』、『鉄のしぶきがはねる』(坪田譲治文学賞、JBBY賞)、『たまごを持つように』 、『伝説のエンドーくん』、『思いはいのり、言葉はつばさ』『日向丘中学校カウンセラー室1・2』『零から0へ』『かがやき子ども病院トレジャーハンター』など。

「2023年 『つる子さんからの奨学金』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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