アナーキスト人類学のための断章

  • 以文社
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感想 : 13
  • Amazon.co.jp ・本 (197ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784753102518

作品紹介・あらすじ

― 変革はゆっくりと、だが着実に進んでいる ―

ネグリ=ハート(『〈帝国〉』『マルチチュード』)以降の最重要人物がついにここにベールを脱ぐ。現在、10ヶ国語への翻訳が進行中の当書は、今後、思想の〈語り口〉を一変させるほどの力を持っている。グレーバーの盟友・高祖岩三郎による初邦訳。アナーキズム&人類学の結合から生み出される、どこまでもポジティヴな世界観。

感想・レビュー・書評

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  • 同著者の『ブルシット・ジョブ』を読んでいたこと、最近読んだ『くらしのアナキズム』で紹介されていたことが本書を手に取るきっかけになった。著者によって「思考の断片、可能な理論のための覚え書き、小マニフェスト集」と定義される本書は巻末で訳者も触れるとおり風変りな構成で、タイトルのとおり短い断片の連なりによってなり、具体的な裏付けよりはアイデアを提示することに重点が置かれている。

    著者は自身がマダガスカルに暮らした際に政府機能が完全に停止していながらも半年もの間、そのことにすら気付かなかった経験やその他いくつかの例を示したうえで、国家によって安定した社会が築かれているという現代における一般的な認識に疑問を投げかける。一方で、西欧が"未開"としてきた社会では国家の存在なしで持続的な平等で安定した、ある種の"民主主義"をすでに実現していたとする。そして著者はむしろ西欧由来の「多数決制民主主義」はその起源において本質的に軍事制度であり、むしろ共同体の内的崩壊を確実にするものだと批判する。

    全体を通して西欧主導で世界に展開された国家観や"民主主義"を自明とする考えを否定し、現在の世界のありようを特権主義的だと批判する。そして、「きわめて現実的な意味で、アナーキスト社会だった」"未開"とされる社会から知見を得ることができる人類学は、現代社会の「多くの通念が真実でないことを、否応なく証明する」からこそ、「アナーキズムを伝播する」ものとして、人類学とアナーキズムの親近性と可能性を示唆する。それはやはり資本主義への懐疑にもつながる。

    「もしあなたが人びとを、子供として処するなら、彼らは子どものように振る舞うだろう」
    「この著作に託した望みは、人に指令せず、人を罵らない知的実践の形式の可能性である」
    「アナーキズムに影響されたグループは、誰も他人を自分の考え方に改宗させられないし、またそうすべきでないことを前提に運動する」

    上記のように語る、根本的に権威主義と相反する著者の姿勢、当然のものとして受け入れられている社会観を覆して提示される人間社会の可能性に魅力を感じる。いまとは違う、もっと人間の本性に近い社会のあり方、「実現性のあるオルタナティヴ」は可能なのではないかという希望を抱かされる。

    「根本的に、もしユートピア主義者でないなら、あなたはまぬけでしかない」

  • 今ある認識の枠組みを超えられるような気持ちになる。

  • アイラブ!

  • ふむ

  • 【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/532763

  • アナーキスト人類学のための断章
    (和書)2011年05月21日 20:53
    以文社 デヴィッド グレーバー, David Graeber, 高祖 岩三郎


    柄谷行人さんの書評から読んでみた。柄谷さんもアナーキズムの影響を受けているようにみえる。僕自身にもその根幹に関わる部分がアナーキストだったのだと気付かされる。

    アナーキストって好き。

    これから研究していきたい。

  • 人類学が調査して来たフィールドの中にはアナーキーな状態でちゃんと社会が回っているところもある(例ではマダガスカル)、という視点はなかなか面白かった。
    しかし、本文に挙げられているような”アナーキーな状態”というのは、南太平洋の島嶼国では多く見られるような社会形態であり、政治的な意図でそうなっているというよりも、”資本”や強力な外部勢力の到来がない周辺地域ではおおよそ当てはまる構図に思われる。それをそのまま、サミットホッピングを始めとする先進国内での市民行動に当てはめるのは少し強引な気もしなくはない。
    しかし、それを差し引いてもなかなか挑発的で面白い内容の本文であるとは思う。

  •  アナーキスト人類学の例としてわかりやすいのはマダガスカル島の、土木工事の労働を村の長老と契約して、次の日に行って見たら村の人は誰もいなくなっていたということであろう。
     貧困解消として
     1)国際的な負債を即刻解消すること
     2)テクノロジーに関して一年未満の内に締結された全ての特許とそのほかの知的財産権を即刻解消すること
     3)世界を旅し居住する自由への制限を全て削除すること。

    の3つをあげている。これは、実際にすすみつつある。
    1)はギリシャで行なわれているし、2)は教育場面で実施されつつあるし、3)は日本への外国人労働者の受け入れとして認められつつある。

  • 【目次】

    まだ見ぬ日本の読者へ 自伝風序文

    どうして学問世界(アカデミー)には、アナーキストがかくも少ないのか?
     だがそれはアナーキスト理論がありえないということを意味しない
      小マニフェスト 反政策
      小マニフェスト 半ユートピア主義に反対する

    グレーブズ、ブラウン、モース、ソレル

    すでにほとんど存在しているアナーキスト人類学について
     想像的対抗力の理論に向けて 第一の事例 第二の事例 第三の事例

    壁を爆破すること
     予想される諸批判
      小マニフェスト 革命という概念について
     ひとつの思考実験、あるいは壁を爆破すること ひとつの事例
     これらの壁を倒すには何が必要なのか?

    存在していない科学の諸教義
     (1)国家
     (2)「国家ではない政体」についての理論
     (3)またもや資本主義論
     (4)「権力無知」か「権力馬鹿」か
     (5)自主的連合のエコロジー
     (6)政治的幸福の理論
     (7)階層序列
     (8)苦痛と快楽 欲望の私有化について
     (9)ひとつのあるいはいくつかの疎外論

    いくつかのまとまった考え方
     1. グローバリゼーションと南北不平等性の削除
     2. 仕事に対する闘争 補足的ノート
     3. 民主主義 ひとつの仮定

    人類学 ここで作者は自らを養う手に躊躇いがちに噛みつく
     ひとつの図解

    グレーバー現象について 訳者あとがきにかえて [高祖岩三郎]
     人物 著作 活動

    *****

  • タイトルと本のカバーは超かっこいんだけど。

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著者プロフィール

1961年生まれ。アメリカの文化人類学者、アクティヴィスト。アメリカ国内の大学で教鞭を執ったのち、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス人類学教授に就任。2020年9月、滞在先のイタリア・ヴェネツィアで急逝。著書『負債論』『ブルシット・ジョブ』は刊行後各国で翻訳され世界的なベストセラーとなった。主な著書に『アナーキスト人類学のための断章』(高祖岩三郎訳、以文社、2006年)、『負債論 貨幣と暴力の5000年』(酒井隆史監訳、以文社、2016年)、『官僚制のユートピア テクノロジー、構造的愚かさ、リベラリズムの鉄則』(酒井隆史訳、以文社、2017年)、『民主主義の非西洋起源について 「あいだ」の空間の民主主義』(片岡大右訳、以文社、2020年)、『ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論』(酒井隆史ほか訳、岩波書店、2020年)などがある。

「2020年 『改革か革命か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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