この国は俺が守る

著者 :
  • 栄光出版社
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感想 : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784754101275

感想・レビュー・書評

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  • ある方からの紹介で。
    田中角栄100の言葉、みたいな本を数冊読んでいたので、抵抗なく読めた。

    〇「政界でも実業界でも同じだけど、敵の数をできるだけ減らすことが肝要だ。自分に好意をもってくれる広大な中間地帯を作っておく。そのためには人の悪口は絶対に言っちゃいけないよ」
    身近な秘書や運転手などにも常々そう言い聞かせていた。(p50)

    ☆グレーゾーンをどう作るのか。
    敵の数をできるだけ減らす。

    〇総理大臣というのはな、就任した時が一番、力がある。世論の後押しがある。ここで一気呵成に成し遂げなければ、もう出来るチャンスは永久に逃げてしまう」(p60)

    ☆これは、よく言われることだよね。会社だって、部署変わった時が一番なんでもいいやすい、みたいなさ。

    〇(次は外国からの資源確保と北方領土の返還だな)
    それがこれからの最大の課題だ。外交は票にならないというけれど、だからといって、どこから逃げることは自分の誇りが許さない。総理大臣というのは日本国という大局に立つ義務がある。国民への義務だ。自分の票がどうのこうのと、目先のことで国政の基本が左右されてはならない。そう思って日々、総理の職務をつとめている。(p106)

    ☆単純に日本のためのことをすれば、票が増えるわけじゃないんだなあ。じゃあ世論ってなんなんだろう。
    人気がある人が本当に実力もあるかっていうと、そうじゃないこともあるってことか。
    どこを向いているかって大事。

    〇「かまわんよ。どうせ盗聴されているんだろうから」
    それは田中の寸劇であり、深慮遠謀なのだ。これしきのネゴで荒れるほどのヤワではない。どうせ盗聴設備が隠されているのは分かっている。だからそれを利用しようと考えた。面と向かって非難すれば、外交上の大問題にな。だか盗聴を通してなら、相手も公然と非難できないし、十分な意思伝達もできるのだ。それは中国でも経験ずみのことだった。

    ☆当たり前っちゃ当たり前なんだろうけど、外交はその国との問題でありながら、その国だけの問題にはできないんだね。

    〇「分かりました。それならせめて口頭での了解をいただきたい。『未解決の諸問題』のなかには、北方四島の返還問題も含まれていると考えていいですね」
    「ヤ―・ズナーユ(そう理解する)」
    と曖昧に答えた。
    (玉虫色だ・・)
    まだ突っ張れる。田中はなおも強気をくずさない。
    「困りましたな。それでは弱すぎます。含まれるのか、含まれないのか。一体、どちらなのですか。イエスか、ノーか、はっきりお返事願いたい」
    「ダァー(イエス)」
    含まれる、と答えたのだ。ソ連の最高指導者ブレジネフがついに認めたのである。(p136)

    ☆こんな駆け引き。続きがある。

    〇ところがその後、田中の運命は暗転する。正にその一九七四年の秋に心ならずともマスコミから金脈問題を追及され、総理の座を辞任するのである。それと機を一にするように、ソ連は「日ソ間の領土問題は解決済み」と繰り返すようになり、田中の努力は無に帰するのだ。そしていまだ今日に至るまで北方四島は未解決のまま放置されている。(p137)

    ☆まっすぐなだけじゃだめってことか。

    〇産業界は悲鳴をあげている。国民だって、インフレで四苦八苦だ。総理大臣として口には出せないが、このままでは日本は危ない。幸いというのか、産業界や国民のあいだには、アラブ寄りに路線を変更すべきだという意見が強まっている。自分の腹は決めていたが、今、はっきりと主張すべき時が来たと意識した。
    「ご存知のように日本は原油輸入の八割を中東に頼っています。もしこれを切られたら、どうなると思います?日本経済は破滅です」
    「だからといって、今、日本に裏切られたら、我々同盟国は困るのです。もう少しの辛抱。辛抱をしてください」
    「ではお聞きしましょう。もし我々が貴国と同じ姿勢を取り続け、禁輸措置を受けたとします。この場合、アメリカは日本に油を回してくれるのですね。供給してくれるのですね」
    そんなことをするはずがない。政府といえども、日本のために民間企業に行政指導をするほどの権限は与えられていないのだ。それがアメリカという国である。田中には答えは分かっていたが、あえて尋ねてみた。キッシンジャーは顔色一つ変えずに答えた。
    「それは出来ませんな。石油供給については、国務長官
    の権限外のことですから」
    「それでは困ります。私は日本国のかじ取りを任されているのです。このまま傍観して何も手を打たないのでは、国民の理解は得られません」(p142)

    ☆こんな風に、今の政治家は言えるのだろうか。アメリカに対して、拒否の姿勢を、はっきりととれるのだろうか。

    〇日本を潰す気はないが、田中個人を潰したい。アメリカの許可もなしに、独自に外交資源を進める田中を失脚させたい。その絶好の機会が田中のインドネシア訪問だった。そのためにCIAは周到な事前準備を進めてきた。(p165)

    〇前回の田中・ブレジネフ会談後、日ソの経済協力はあまり進んでいなかった。中ソ関係が冷え切ったなか、航空協定交渉など、日中間の協力が順調に進展し、それを見て、ソ連側は日本への警戒心を強めていた。
    そしてもう一つ、大きい根本的な理由が控えている。それは相変わらずソ連が領土問題を切り離して、政経分離方式を望んでいることだ。(p168)

    ☆今と同じでは・・

    〇そこで得たことがある。通常、会談内容のほとんどは官僚あ事前に作ったシナリオで進める。けれどもシナリオ、つまりトーキング・ペーパーにないアドリブこそが成功不成功のカギを握るということだ。適度のアドリブが、固い雰囲気に寛ぎと生気をかもし出し、当事者同士が無意識のうちに警戒の鎧を脱ぐのを助けている。(p174)

    ☆何を話すかだけでなく、誰と話すかが大事。

    〇そして実際、田中はこの生き方を後に脳溢血で倒れるその日まで保ち続けたのだった。血の滲むような日常の努力がの積み重ねなのである。彼の日常生活を見ると、それがよく分かる。
    外国からの賓客があれば別だが、夜の料亭にはほとんど毎夜、顔を出す。が、大体八時半には目白の自宅に帰っている。玄関を上がると、先ず入浴だ。それから、宴会での食事にはあまり手をつけないことにしているので、夫人特製の塩と醤油で濃く味付けしたチャーハンを山盛り一杯たいらげる。あとは寝室へ移り、バタンキューで仮眠をとる。仮眠というのは、夜中の十二時ごろになると、ごそごそとベットから抜け出し、脇にある机に向かうからである。
    一時間ほどかけて役所から持ち帰った未読の書類や資料
    手紙などに目を通す。斜め読みもあれば、丹念に読み込む時もある。そして数字などの大事な箇所は暗記に努める。後に田中が総理大臣になったとき、マスコミや役人から記憶力のよさを指してコンピュータ付きブルドーザと呼ばれたが、これは当たらない。たった一度や二度、数字を見たからと言って、記憶できるものではない。田中はこのように一生懸命、夜中に暗記に励んでいたのだ。
    そして次の一時間は「国会便覧」から始まる。丹念にページをめくり、これまた暗記作業が続く。(p186)

    ☆このエピソードが大好き。
    こうありたいと思う。
    知は力なのだ。

    話はロッキード事件へ
    〇「仮にコーチャンが、贈賄の罪が明らかな証言をしても、彼を罰しないという刑事免責を保証してほしい。それも日本国の最高裁判所の保証でなければならない」(p245)

    ☆なんじゃそりゃ。なんでもいえるやん。

    〇何故ならその後、田中のロッキード裁判が最高裁まで行き、田中が死亡した一九九三年、最高裁は何と刑事免責をした「不起訴宣明書」を、違法だったと認定したのである。(p247)

    ☆田中側からの本なので、中立性が、といわれればそうなのかもしれないが、一読の価値あり。

  • 【由来】
    ・城下さんから面白いとススメられた。

    【期待したもの】
    ・狭量かも知れないが石原慎太郎の妄想フィクションを読む気にはなれない。でも、こちらなら、という感じで。

    【要約】


    【ノート】


    【目次】

  • 田中角栄が通産大臣として日米繊維摩擦交渉に臨む第一章から、失意の中この世を去る第九章まで、田中角栄の軌跡を追ったノンフィクション。
    ノンフィクションよりも評伝と言ったほうが近いかもしれない。

    小学生のときに田中角栄が総理に就任したんだが、その時の両親の興奮ぶりは覚えている。毎日、夕食のときには田中角栄の話題を両親が話していたな。中学に上がる頃にロッキード事件が起き、その時のテレビの加熱報道なんかもよく覚えてる。やがて逮捕、保釈、裁判と続くのだが、社会人になった後も最高裁で争われていたし、その係争中に亡くなるんだが、考えてみると、物心がついてから、ずっと田中角栄という人物を見てきたんだな、と思う。

    田中角栄ほど賛否両論ある日本の政治家も少ないだろうけど、本書は、田中側からの視点に立って書かれている。
    決断と実行、この言葉をまさに地で行く政治家との認識は、おおいに同意できる部分である。アメリカの先手をとって、総理就任後三ヶ月で「日中国交正常化」を成し遂げ、未来を見据えての資源外交。大国アメリカの顔色を窺いながらも、国民のためにという信念によって実行する。コンピューター付きブルドーザーと言われるゆえんである。

    本書での読みどころは、各国首脳との会談の部分だ。
    特に、日中国交正常化のために訪中した田中と周恩来との会談場面は、緊張感がある。当時の熱狂を子ども心に憶えてる自分は、「あ~、こういう駆け引きの末に国交が成立したのか」と、裏話を知ったような感覚で読めた。とにかくすごい熱狂だったからなぁ。国交成立の記念にパンダが2頭贈られてきたのだが、上野動物園なんかは連日、超過密の混雑だったし・・・。今では考えられないけど、当時のデパートのぬいぐるみ売り場、パンダだらけだったな。

    高い支持率で歓迎された宰相・田中角栄も就任後、わずか2年余りで退陣に追い込まれる。金脈問題である。あれほど熱狂して庶民宰相を迎えたマスコミや大衆も、180度方向転換。それに続くロッキード事件、元総理の逮捕と前代未聞の事態が進むのだが、このあたりも本書には描かれていて、「そういう見方もできるよね」と納得した。政治家の評価なんて、50年、100年経たないと出来ないと思う。あの加熱報道ぶりを知ってる身としては、当時、冷静な評価ができた人は何人も居なかったんじゃないかとも思うし。

    本書では、ロッキード事件についても詳しく語られているんだが、海の向こうの一民間人の証言が、何故、大疑獄事件に発展したのかについて、アメリカの意思・キッシンジャーの思惑なども絡めて描かれていて興味深い。
    また、後世になって問題が指摘される嘱託尋問調書についても、裁判で争う上での問題点について書かれている。扇動するマスコミ、付和雷同する大衆、数十年を経て、冷静に振り返ることが出来る。

    田中=金というイメージが先行しがちだが、本書は田中角栄の功罪の功を改めて認識させる一冊だった。
    今の時代、田中角栄のような政治家が、再び現れてもいいと思う。
    本書にも書かれているが、東日本大震災のときに、もし田中角栄が居たら・・・。歴史にifはないけど、たしかに今のリーダーには実行力が求められると思う。

    「BOOK」データベース~

    総理就任3カ月で日中国交正常化を実現、独自の資源外交を展開する田中角栄に、大国アメリカの巧妙で執拗な罠。不世出の男の政治生命を奪い去った権力に肉薄する野心作。

    田中角栄を知らない若い世代も、現代の日本の政治史を知る意味でも読んで損はないと思う。

  • 日本独自のエネルギー外交、キッシンジャーの暗躍、アメリカ支配の実態。最近、キャンペーンなのかな、孫崎さんといい、でも、政治の世界は昔のままだけど。

  • 田中角栄さんの現役政治家時代は知らないので読んでみた。基本的に田中角栄ヨイショ本。でも、今の日本には必要な人物だと思います。

  • その現役時代を知らないので、田中角栄と聞くとあまり良いイメージが無かったが、尊敬に値する人物であった様だ。筆者のバイアスがかかっているかもしれないが、その功績は素晴らしいし、今こんなスケールの政治家はいないし、今この人がいたらと思えた。

    この本では、田中角栄の功績と共にロッキード事件に至る経緯が記されている。ロ事件の内容など、本当にそうだったならば、色々と恐ろしさを覚える。

    読み物として面白いし、田中角栄の時代を知るのに良い一冊だと思う。

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