増補 刑事司法とジェンダー

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  • インパクト出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784755403071

感想・レビュー・書評

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  • 性暴力を巡る諸問題について、本書で初めて触れた。
    厳格な要件を求める暴行脅迫、裁判でのセカンドレイプ、警察のキャンペーンが産んだ"被害者の責任"、決められた筋書きに沿って裁かれる加害者。ページを捲るたび、現制度に怒りを感じた。
    性暴力は加害者の性欲によって起こるもので、生物として避けられないこと。だから被害者は防御に努めなければならない。こうした時代遅れの歪んだ認識により加害者は追及されず、被害者の責任に終始する。
    そして、本書にある強姦加害者と著者のやりとりは、その歪んだ認識の裏に隠れた加害者に光を当てるものだった。裁判の筋書きとはまったく異なる心の内。自らの犯罪に対して言い訳を重ね、正当化し、果てには被害者を非難する様にとても驚いた。

    性暴力は決して、自然発生した性欲の延長ではない。被害者のスティグマを利用して口封じをし、暴力を振るい、支配する。どう見ても明確な悪意から生まれるものである。

  • 大変良書。とても勉強になった。
    以下、頭の整理のために印象に残っている問題点を挙げる。

    ・捜査機関による立件=定められた構成要件を満たして裁判官に納得してもらえるストーリー(既定路線)を作る
    という作業に終始してしまっている。

    ・動機は「性欲によるもの」とあらかじめ決められているかのように調書がとられる(これは「全ての男性は性欲があり、それが抑えられないときに性犯罪が起こる」ということを意味してしまうため、加害の矮小化やそれをさせてしまった被害者への非難などにつながる)。

    ・構成要件に該当しない事実は動機に関わる重要な部分であっても問題の俎上にすらあげられない。
    そしてそもそも構成要件自体が男性目線で作られている(「恥ずかしさを感じさせた」など)。

    ・加害者の罪の重さが被害者目線で示される=捜査側は、加害行為そのものを断罪するよりかは、被害者に与えた影響で加害者の落ち度を示す。
    そうすると「被害者は妻や母になる未来があったのにそれを奪われた」などと、被害者を下げることで加害者を糾弾するという立て付けになってしまう。

  • 刑事司法に関わる全ての人に読んでほしい。

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著者プロフィール

1967年、富山県生まれ。龍谷大学犯罪学研究センター博士研究員。警察官として勤めたのち、 京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程研究指導認定退学。博士(人間・環境学)。 専門は、社会学、ジェンダー研究。 著書に、『刑事司法とジェンダー』(インパクト出版会)、 『生と死のケアを考える』(共著、法蔵館)がある。

「2019年 『痴漢とはなにか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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