- Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
- / ISBN・EAN: 9784756117595
作品紹介・あらすじ
ニューヨーク・タイムズの気鋭ジャーナリストが現代科学の最先端『クローン』の真実に迫る。
感想・レビュー・書評
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世界初のクローンとして誕生した羊のドリーの名前はもちろん知っていたが、まとまった経緯を読んだことはなかったので手にとった一冊。面白かった。
クローンの科学的な側面に深入りしすぎず、スルーしすぎず。その一方で、社会に与えるインパクトという視点からのクローン技術の可能性と問題点の俯瞰図を手際よく描いてくれる。難しすぎて放り出すこともないし、聞いた話ばかりで退屈することもない。科学に興味を持っている普通の人が(ぼくもその一人)、クローン技術について考えるにはほどよいバランス。
読みながらずっと考えていたこと。牛乳をいっぱい出す牛とか、足の早い馬とかの血統はあると聞いている。ウサイン・ボルトに双子の兄弟がいたら、その人もきっとかけっこが早いだろう。ウサイン兄ちゃんと同じように走るのが好きで、同じように努力したら、だが。
素質としての身体能力は、遺伝によるものが大きいことを認めたとして、ではアインシュタインのクローンは再び相対性理論を導き、ヒトラーのクローンはナチスを再建するんだろうか? 経験とか、意思とか、努力とかは人を形成する上でどのくらいの比重を占めているのだろう? ぼくらはどこまでDNAに縛られているんだろう?
技術的に人間のクローンが可能になるのはそう先の話でなさそうだから、論理的にありなのか、という議論を進めておく必要がありそうだ。が、それ以前に、クローンを作りたい、という動機のほうがよくわからない。みんなはスティーブン・ジョブスのクローンにアップル社を経営させたり、ジョン・F・ケネディのクローンに大統領になってもらいたいのかな。ああ、「世襲」に一定の支持があるのはそのせいなんだろうか?
個人的にはそういう考え方ってなんか気持ち悪い。なんでだろう? 個人の資質や考え方が遺伝に由来する、という決めつけが嫌なのかな?
本書はドリー誕生のすぐ後に書かれたので書いてないが、ドリーは長生きしなかった。そのためクローンは寿命が短いのではないかと疑われたそうだが、ネットであたってみたらその後も続々クローン羊が誕生し、普通に長生きしているらしい。その中にはドリーと同じ細胞株を使った、ドリーの双子の姉妹にあたる4頭も含まれており、普通の羊の寿命(10-12歳くらい)に近い9歳までは、特に問題なく健康に暮らしているという。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
配置場所:摂枚普通図書
請求記号:467.2||K
資料ID:59800092