新教養としてのパソコン入門 (アスキー新書 020)

著者 :
  • アスキー
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784756149527

作品紹介・あらすじ

パソコン・オタクの方々は、なぜにマニュアルも読まずにパソコンが使えてしまうのか?マニュアル不要の「パソコン術」はオタクに学べ。

感想・レビュー・書評

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  • 本書の中で著者は、コンピュータに詳しいギークたちは、「コンピュータのきもち」が理解できると述べています。突拍子もない言葉に聞こえるかもしれませんが、著者の考えを自分なりにまとめてみると、コンピュータやネットワークをブラック・ボックスとして捉えるのではなく、特定の役割を担っている複数のサブシステムの集積として捉える感覚が身についているということなのだと思います。そうした感覚がそなわっていれば、今コンピュータやネットワーク上で起こっている出来事を立体的に把握することができるし、トラブルに見舞われても複数のサブシステムのうちのどこに問題が生じているのかを考えることができます。

    そして、それぞれのサブシステムの成り立ちを知るためには、その歴史を知らなければなりません。しかし同時に、そのことがコンピュータを一般の人にとって分かりにくいものにしているとも言えます。本書は、そのギャップを埋めることを目的としたコンピュータ解説書です。

    コンピュータにとっては人もソフトウェアの一種だというくだりには、目からうろこが落ちたように感じました。

  • 書き言葉にクセがあるので、そのあたりは好みが分かれそうな著者。
    だけど内容は親切でコンピュータの気持ちから状況説明してくれているので、コンピュータ苦手な人にも入りやすくなっている。
    これを教科書にしてパソコンいじるというよりは、コンピュータの歴史(といってもタイプライター時代)を知ることで「なぜこんな面倒な事になっているのか?」が納得させられる本。
    個人的には、貧乏性からネットワークが発達した話と、文字化けの話がツボだった。

    >じゃあ 、なぜコンピュ ータでは 、共有化のためのネットワ ークが重要だったかというと 、それはむかしのコンピュ ータがショボかったからだ 。単体では何もできず 、また外付けのいろんなものを自前でそろえるほどのお金をみんな持っていなかったからだ 。みんな貧乏が悪いんや ─ ─ある意味でコンピュ ータネットワ ークの根っこには 、こんな気分がある


    >ハ ードウェア 、オペレ ーティングシステム 、ソフトウェア (アプリケ ーション ) 。これは 、鏡餅状に積み重なっている 。コンピュ ータ単体としてはそのくらいが理解できていればいい 。

    >どの文字にどういう番号を振るか 、というお約束を文字コ ードという 。

    >この流派ごとに 、同じ字でも割り振られている番号はぜんぜんちがう 。 「馬 」という字はシフト J I Sでは 9 4 6 E 、 J I Sでは 4 7 4 F 、ユニコ ードでは 9 9 A C 。だから 、 J I Sの文字をシフト J I Sだと思って開こうとすると 、でたらめが表示される

    >日本語の表示には 1文字 2バイトが必要

    >日本では 、まず余った 8ビット目をつかって 、カナを表現しようとした 。これがいまの 、通称半角カナというやつ 。ところがその頃には 、欧米ソフトの多くはその 8ビット目を別のことに使うようになっていて 、そこへ半角カナのファイルを流すと 、文字化けや誤動作が起きるようになった 。ときどきインタ ーネット関係の本を読むと 「半角カナは使うな 」と書いてあったりする

    >フィルタという言葉はいろいろな使われ方をするが 、コンピュ ータソフトの分野では 、デ ータに何らかの変換を加えるソフトの総称

  • コンピュータの仕組み、あるいは考え方について譬え話を駆使しつつユーモアを交えて論じている。左開き横組で図解や写真を駆使したパソコン指南書とは違い気楽に読むことができるが、お気楽さ漂う文体とは裏腹に内容は高度。とはいえ専門用語ガチガチでいつの間にか論旨から脱落、といったようなことはまずない。各章末の注には初心者向けの基本的概念が取り上げられており、これを読むだけでもちょっとした知識が仕入れられる。

    本書はコンピュータ、とくにパソコン一般についてのものだが、結論に近づくにつれて、機械文明そのものに対する考察も垣間見える。人間は「移動」「製作」「運搬」などの生活するうえで面倒な身体的行為を機械に代行させてきた。コンピュータの登場によって「思考」「創造」などの精神的行為も機械に代行させつつある。さらにはその「機械を使う行為」ですら他人に代行させているのが現状のように思う。使わない能力は劣化する。どんなに便利な文明の利器を使うこととなってもそのことは忘れるべきではない。

    著者に対してのアンチも結構な数がいらっしゃるようで、彼らに対する皮肉もチラホラ。そこには評論家としての逞しさを感じる。「たかがパソコンされどパソコン」を教えてくれる一冊。

  • はっきりゆってターゲットとしている読者は不明。超初心者向けの内容があるかと思えば、そんな人たちには必要なさそうな詳細に立ち寄ったりする。ただ、何らかの知識を得る本としてではなく、エッセイとして読めばかなり面白い。

  • [ 内容 ]
    パソコン・オタクの方々は、なぜにマニュアルも読まずにパソコンが使えてしまうのか?
    マニュアル不要の「パソコン術」はオタクに学べ。

    [ 目次 ]
    なぜパソコンはこんなにめんどうでわかりにくいのか、またはおたくの罪―コンピュータを理解する方法
    キーボードとディスプレイの間には深くて暗い川がある―実存としてのコンピュータ
    コンピュータだって、やっぱりさびしい―コンピュータと人との関係
    コンピュータだっていそがしいのだ―コンピュータは計算機
    コンピュータだって、痛いかもしれない―コンピュータに入力するということ
    縁の下の力持ちと、マッキントッシュの衝撃―オペレーティングシステム(OS)の役割
    ユニックス系の人はなぜいばってるのか―メインフレーム、ミニコン、ワークステーション、パソコン
    コンピュータのネットワークは貧乏くさいのである―コンピュータは「共有する」
    コンピュータとネットワークは折り重なっている―ネットワークの考え方を理解する
    コンピュータは電子ファイルの夢を見るか?―ファイル、フォルダはどこにある
    コンピュータにとってはあなたも一介のソフトウェアでしかないのだ―ソフトウェアとは何か?
    ちがう字?同じ字?文字化けと文字コードのあれこれ―コンピュータと文字コード
    コンピュータは、あなたをもっと自由にしてあげたいと思っている、はずなのだ

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • これを読んでCPUやメモリの意味が分かるようになった。
    クアッドコアとかデュアルコアの概念や、プロトコルが意味するもの、そしてコンピュータは万能でも何でもないことまで、いろんなことが腑に落ちた。

    誰もがPCを使う時代になったけど、PCやコンピュータができることは今も昔もたいして変わっていない。
    機能の追加やバージョンアップ、速度の変化などはあれど、人間はPCが持つ可能性を使いこなせていない。

    梅田望夫氏が「ウェブ時代を行く」の中で示した、これから必要となる人材像という項目で、「自分の好きなようにプログラミングをしてITを活用できる人」みたいなのがあった。
    PCを意のままに活用して、自分の望むものを作り出せる力が必要になってくるという。

    仕事柄ニュースを追いかけなければならないのだが、それをしていると根本的な事象の理解がどうしてもおざなりになる。
    一歩踏み込んだ記事が書けなくなっている。

    IT業界に属している以上、ITのことを誰よりも知っておいて、その上で「知らないふり」をして誰にでも分かるように記事を書かなければならない。
    少しずつでいいから、ITの基礎を勉強していかないとだめだな。

    題名どおりの、PCを教養として知るためのよき入門書であります。

  • 山形さんたらほんとにパソコンが好きなのね。以上。
    多分パソコンの超右肩上がりの進化の只中にいた人は、そうだよなぁと共感できるのだと思う。

  • 「パソコンの気持ち」を考える本。

    自分は中学生くらいから普通にパソコンを使っている世代なので、「ふむふむ」くらいの感覚で読めるけど、
    大人になってからパソコンと触れ合った世代(not理工系)には衝撃的な内容だと思われる。

    山形さんの語り口が明快で好きです。

  • パソコンを自分である程度使いこなせる人と、簡単な機能しか使えなくてトラブルでも発生しようものなら完全にお手上げな人および全くのパソコン素人との間には、“感覚”や“パソコンというもののイメージ”において隔絶の感がある。この隔たりを埋めようと、コンピュータ(=パソコン)が分からない人向けに、“分かってる人”的なコンピュータのメカニズムの理解を与えようと書かれている。けど、それが成功しているようには見えない。

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著者プロフィール

評論家、翻訳家。東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻修士課程およびMIT不動産センター修士課程修了。開発援助関連調査のかたわら、小説、経済、建築からネット文化まで、広範な分野での翻訳と執筆活動を行う。
著書に『新教養主義宣言』『要するに』(共に河出文庫)、『訳者解説』(バジリコ)、『断言』『断言2』(共にPヴァイン)など。訳書にピケティ『21世紀の資本』(みすず書房)、クルーグマン『クルーグマン教授の経済入門』(ちくま学芸文庫)、ケインズ『雇用、利子、お金の一般理論』(講談社学術文庫)ほか多数。

「2021年 『経済のトリセツ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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