陰翳礼讃

著者 :
  • パイインターナショナル
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本棚登録 : 930
感想 : 55
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784756250124

作品紹介・あらすじ

暗がりに潜む美を写し撮ったのは「気配を撮る名匠」と評される大川裕弘。『陰翳礼讃』の世界がより深く理解できるビジュアルブックです。

感想・レビュー・書評

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  • 陰にあってこそ美しい、日本の美に気づかせてくれる極上の随筆「陰翳礼讃」ほか五篇。
    谷崎の嗜好がざっくり掴める書。
    谷崎はよく、その流麗な美文で讃えられるけど、筆致や文体より、まずもってその感性が常人のものではないなぁ。皮一枚剥がしたら骸というより、どこまで剥がしても感覚器か。

    作家はよく歩くと聞く。でも谷崎は、彷徨して物思うというより、座して瞑想する作家だと思う。だから自らが腰を落とす場に対してこだわりが強いのでは。「厠」が最たる例。ところでひとつ谷崎さんに直接抗議できるなら、出てくるものを「牡丹餅」と表現するのはやめてもらいたい。私、好物なのに、食べられなくなる

  • 本文より。

    暗い部屋の中に住むことを余儀なくされたわれわれの祖先は、いつしか陰翳のうちに美を発見し、やがては美の目的に添うように陰翳を利用するに至った。事実、日本座敷の美は全く陰翳の濃淡に依って生まれているので、それ以外に何もない。

    総べてのものを詩化してしまう我等の祖先は、住宅の中でも何処よりも不潔であるべき場所を、却って、雅到のある場所に変え、花鳥風月と結び付けて、なつかしい連想の中へ包むようにした。

    われわれは一概に光るものが嫌いと云う訳ではないが、浅く冴えたものよりも、沈んだ翳りのあるものを好む。
    それは天然の石であろうと、人工の器物であろうと、必ず時代のつやを連想させるような、濁りを帯びた光りなのである。

    日本の漆器の美しさは、そう云うぼんやりした薄明かりの中に置いてこそ、始めてほんとうに発揮されると云うことであった。

    漆器というと、野暮くさい、雅味のないものにされてしまっているが、それは一つには、採光や照明の設備がもたらした「明るさ」のせいではないであろうか。

    暗いところでいろいろの部分がときどき少しずつ底光りするのを見るように出来ているのであって、豪華絢爛は模様の大半を闇に隠してしまっているのが、云い知れぬ余情を催すのである。

    あのねっとりしたつやのある汁がいかに陰翳に富み、闇と調和することか。
    また白味噌や、豆腐や、蒲鉾や、とろろ汁や、白身の刺身や、ああ云う白い肌のものも、周囲を明るくしたのでは色が引き立たない。

    われわれの座敷の美の要素は、この間接の鈍い光線に外ならない。
    われわれは、この力のない、わびしい、果敢ない光線が、しんみり落ち着いて座敷の壁に沁み込むように、わざと調子の弱い色の砂壁を塗る。

    絵は覚束ない弱い光りを受け留めるための一つの奥床しい「面」に過ぎないのであって、全く砂壁と同じ作用をしかしていないのである。

    美は物体にあるのではなく、物体と物体との、作り出す陰翳のあや、明暗にあると考える。

  • 日本人にとって 膳に 漆器 蒔絵 金屏風 が必要なのかがよくわかる
    豪華な食事に華を添える

  • 日本人のアイデンティティを思い起こさせる随筆。

    作中には「我々」という表現が多様され、そのまま日本人を指す。この肌の色、体型、花鳥風月の中で育つなかで身につけた陰影に落ち着きを感じるところ、それらを卑下せず受け止めていくことが、一番道理に適っているよ、というお話。

    決して欧米渡来の伝統やタイルを誹ることは無い。良いものとは何か?考えることが大切、説くから素直に従ってみようという気になる。

  • 日本人は、美は物体にあるのではなく、物体と物体との作り出す陰影のあや、明暗にあると考える。

    東洋人は己の置かれた境遇の中に満足をおぼえるだけでなく、暗いということに不平を感じず、光線が乏しいなら乏しいなりに、かえって闇の中に自ずからなる美を発見する。

  • 名著「陰翳礼讃」に写真を組み合わせたもの。もともと大好きな本なので、ビジュアルが加わったらどんなにおもしろいだろうと手に取った。が、意外にも少しがっかり。写真はないほうがよかった。映画化された作品を観て、原作のほうがよかったなーと思うのに近い。もちろん大川氏の写真は素晴らしいのだけど。
    暗がりでの羊羹だとか、砂壁に当たる淡い光だとかは、文章から想像するのがよいのだ。それをあからさまに写真で示されると興ざめしてしまう。
    ただ、写真を加えた意義は理解できる。きっとこれからの日本人は障子や畳、襖を知らずに育つ。5歳と2歳の甥っ子のことを想像すればわかる。そういう人たちに、この文章を読んで想像しろといっても無理だ。わたしだって、この本を読むときはいつも、祖父母の家を想像する。あの暗がり、廊下を隔てて遠くにあった便所。
    本書の出版にはそういった意図もあるのだろう。その意味ではとても意義深いと思う。

    ---
    P70
    西洋人は垢を根こそぎ発き立てて取り除こうとするのに反し、東洋人はそれを大切に保存して、そのまま美化する、と、まあ負け惜しみを云えば云うところだが、因果なことに、われわれは人間の垢や油煙や風雨のよごれが附いたもの、乃至はそれを想い出させるような色あいや光沢を愛し、そういう建物や器物の中に住んでいると、奇妙に心が和やいで来、神経が休まる。

    …これを読み、谷崎さんはイギリス人やフランス人の古いものを愛するアンティーク趣味をご存知なかったのかしら? と思った。
    P220に「亜米利加はとにかく、欧洲に比べると日本の方が電燈を惜しげもなく使っていることは事実であるらしい」とあるので、電気についてもあまりご存知でなかったよう。
    西洋はピカピカと明るいものが好きで日本は暗がりを好むという主張一辺倒、単純な比較で書かれているので、少し違和感を感じる箇所もあった(20年ほど前に読んだときはThat's rightとしか思わなかったので、そう感じるのは自分が少々知見を得たせいなのかもしれない)。

  • 文豪・谷崎潤一郎が、1933~34年に雑誌「経済往来」に発表し、1939年に書籍化された、代表的評論作品『陰翳礼讃』に、美しい写真を添えたビジュアルブック。
    『陰翳礼讃』は、まだ電灯が無かった時代に、薄暗さの中に美しさを求めた日本の美の感覚、生活と自然が一体化した中に真の風雅を求めた日本人の感性について論じており、日本の美意識・美学の真髄を捉えた作品として、今日まで読み継がれているものである。外国語にも翻訳され、外国人の日本観にも深い影響を与えたとも言われている。
    写真は、「婦人画報」、「美しいキモノ」等の雑誌で活躍し、今や「空気を撮る名匠」、「気配を捉まえる達人」などとも評される写真家・大川裕弘氏(1944年~)が、40年以上に亘って撮影してきた写真の中から、百点を超す作品が厳選されている。撮影地は、日本美を象徴する、京都市の「俵屋旅館」、石川県輪島市の「塗師の家」などである。
    私は、『陰翳礼讃』は既に読んでいたが、書店でたまたま本書を目にし、あまりの美しさに即座に購入してしまったのだが、「はじめに」で俳人・谷村鯛夢氏が書いているように、本書における「谷崎美学」と「大川美学」のハーモニーは絶妙で、谷崎が『陰翳礼讃』で表現しようとしていた日本の美について、視覚的に認識を深めることができた。
    日本の美意識・美学を視覚的に再認識できる、素晴らしい作品である。
    (2018年5月3日了)

  • 日本の美意識には、闇とか暗さが密接に存在していて、そこで使われてきた道具や風習なども、それがあることを前提に作られている。欧米化して、闇や暗さが排斥されていくなかで、日本の美しさが損なわれていく事を嘆きつつ、昔の日本の美しさをひたすら懐かしむ話。戦後の生まれだけと、すっと腹落ちした。うちの床の間は、色々と設計段階から間違えてるな、、、

  • ポリコレなにそれ美味しいの?って感じでガンガンにとばしていて、別に全部に同意する訳でもないのに楽しくなる。

  • 凄い分かりやすくて、面白かった。
    現代の西洋化しつつある日本の文化、風景について具体的な話を用いて問題点を上げている。ほとんどの事にうんうん、と頷けるような内容で読んでいて楽しかったです

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著者プロフィール

谷崎潤一郎

明治十九年(一八八六)、東京日本橋に生まれる。旧制府立一中、第一高等学校を経て東京帝国大学国文科に入学するも、のち中退。明治四十三年、小山内薫らと第二次「新思潮」を創刊、「刺青」「麒麟」などを発表。「三田文学」誌上で永井荷風に激賞され、文壇的地位を確立した。『痴人の愛』『卍(まんじ)』『春琴抄』『細雪』『少将滋幹の母』『鍵』など、豊麗な官能美と陰翳ある古典美の世界を展開して常に文壇の最高峰を歩みつづけ、昭和四十年(一九六五)七月没。この間、『細雪』により毎日出版文化賞及び朝日文化賞を、『瘋癲老人日記』で毎日芸術大賞を、また昭和二十四年には、第八回文化勲章を受けた。昭和三十九年、日本人としてはじめて全米芸術院・米国文学芸術アカデミー名誉会員に選ばれた。

「2021年 『盲目物語 他三篇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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