グスタフ・クリムトの世界-女たちの黄金迷宮-

著者 :
  • パイインターナショナル
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本棚登録 : 101
レビュー : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (388ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784756250414

感想・レビュー・書評

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  • 「妖艶」とか「官能的」と表現すれば聞こえがいいけれど、あけすけに言ってしまえば、毒々しくて、エログロ要素も強くて、挑発的で、退廃的で、派手で、なのに不思議と高い精神性を感じさせる静謐な美しさを秘めていて、極端な中毒性を持つ。
    ウィーン19世紀末前後に名を馳せた画家グスタフ・クリムト(1862-1918)の作風といえば、私の中ではそんなイメージでした。

    この画集は、主に「黄金時代」と呼ばれたそんなクリムトの代表作もきちんと紹介しているけれど、それだけに留まっていません。
    むしろ、とても体系的。
    クリムトの生涯、他の画家との関係や後進の画家に与えた影響、彼らの作品や個性、世紀末ウィーンの事情、クリムトがその中で果たした役割、パトロンである婦人たちの肖像画をたくさん描いていたこと、ユダヤ系パトロンが大半だったために第二次世界大戦中に多くの作品がナチスに奪われたり火災で焼失したこと、女性像が有名だけど疲弊する心を慰めるというか現実逃避をするように実はかなりたくさんの風景画を描いていたことなど、それまであまり知られてこなかったクリムトの一面を、海野さんはとても簡潔なのに丁寧で取りこぼしのない解説で、紹介してくれています。

    しかも、画集機能メインなのは忘れておらず完全フルカラーで、説明メインなページはクリムトの世間的なイメージを尊重した黄金色の装丁。
    もう、ため息が出そうなつくり。
    しかも、彼を取り巻いていた芸術家たちの紹介部分については、メイン軸から外れることを読者に印象付けながらも美しさとバランスを守るためか、銀色装丁なのがまた粋。

    愛知県豊田市で開催していた「クリムト展」(2019.7.23〜同10.14)の予習として手に取った本書でしたが、予習だけでなく、復習も出来たし、心も満たされたしで、満足の作品でした。

  • 借りたもの。
    クリムトの画業、彼が関わった舞台装飾からウィーン分離派での活動、印象派のような風景画や、蠱惑的なデッサン、グラフィックまで網羅した一冊。
    クリムトの特徴的な文様、イコノロジー(図像)、モダンなファッションなど、様々な切り口からその魅力を分析する。
    後半にはクリムトの後輩にあたるシーレらの作品、ウィーン工房の総合芸術への軌跡も紹介。

    世紀末の〈全体芸術〉を求める時代精神に合わせて、クリムトは積極的に画風を変え、試み、実現していったことを伺わせる。
    代名詞のような金装飾が施された幻想美術に留まらず、印象派のような描き方、風景画を描き、シーレなど若者に刺激を受けた作風のものなど、クリムトが時代の空気を敏感に感じ取り、己がものにしていったかを垣間見る。その中にジャポニズムもある。同時に、ジャポニズムが全てではない。

    解説文の内容も充実しているし、本の装丁もクリムトに合わせたデザインで、眺めているだけでも飽きない。素晴らしき一冊。
    著者の文章も興味深い。感性が鋭く、表面的な解説だけでなく絵から受けた印象も併せて書かれている。

  • ☆ウィーンは西洋の果てであり、ウィーンからアジアがはじまる
    ☆世紀末ウィーンは幻想の中

  • クリムトの画集を探し、一番好みな感じだったので購入。
    海野弘さんの著書で、出版社がパイインターナショナルの本はこれで3冊目。ウィリアムモリスに関する著書と、ヨーロッパの装飾についての著書と。どれもデザインが良くて眼福。その割にお値段はお手頃。すっかり海野さんとパイインターナショナルの虜になりました。
    中身はというと、沢山の絵があり、解説もくどくなくて、すっと入ってくる感じです。クリムトの大作は、ページが折り込んであって、壮大な大きさがイメージできます。

    サイドテーブルにこの本を何気なく置いていますが、絵になっています。
    中身もいいし、デザインもいいので、本棚になおすと、目立ちます。
    また、海野さんとパイインターナショナルの本の購入を考えています。

  • 読了。解説つきの画集。クリムトを扱った本らしく金色を多用した豪華な装丁で400ページ弱もあるのに3200円というのはかなりのコストパフォーマンス。掲載されている作品の点数も多く、解説は多過ぎずとにかく絵を見せてくれる構成もうれしい。
    クリムトの作品はウィーンでそれなりの点数を見てるが、こんなに風景画を描いていたとは知らなかったし、どれも素晴らしかった。実物を見てみたいものだが、個人蔵とかが多く、ウィーンに行ったから見られるものでもなさそうだ。
    この本に掲載されている作品の中では、「エミーリエ・フレーゲの肖像」が気にいった。モデルのエミーリエは気に入らずに売ってしまったらしいが…。ネットの画像検索でも作品は見られるが、この本の方が発色もよく、手もとに置いておきたい本である。

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著者プロフィール

1939年東京生まれ。評論家、作家。早稲田大学ロシア文学科卒業。平凡社に勤務。『太陽』編集長を経て、独立。

「2021年 『ロンドンの誘惑 1970's ロンドン・カルチャーの世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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